パキスタン製品が支えるFIFAワールドカップ、サッカーボール製造のフォワード・スポーツに聞く
この発表の要点
- パキスタンは世界のサッカーボール市場の70%超を占め、フォワード・スポーツは年間約2,050万個を製造する業界最大手である。
- フォワード・スポーツは1994年以来アディダスと戦略的パートナーシップを維持し、FIFAワールドカップ公式試合球にも供給している。
- 同社は研究開発投資、リーン生産方式への移行、AI活用による品質検査、環境・人権・労働基準の順守を通じて競争力を強化している。
企業・自治体への影響
本記事は、製造業、特にスポーツ用品製造や国際貿易に関わる企業にとって参考となる。グローバルサプライチェーンにおける品質管理、研究開発の重要性、および環境・人権・労働基準といったESG要素の順守が、国際競争力維持とブランド価値向上に不可欠であることを示唆する。
対応すべきこと
- 自社のサプライチェーンにおける国際的な品質基準や倫理基準の順守状況を確認する。
- 国際市場での競争力強化のため、研究開発投資や生産効率化の事例を参考に自社の戦略を検討する。
- 主要な取引先との長期的なパートナーシップ構築の重要性を再認識し、関係強化に努める。
- ESG(環境・社会・ガバナンス)要素が国際的なビジネスにおいて不可欠であることを認識し、自社の取り組みを評価・改善する。
対象部門: 経営者 広報 経理 総務
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
|---|---|
| 業界 | 製造 |
| 発表日 | 2026-07-14 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月14日
国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップが北中米で開催され世界中のサッカーファンの注目が集まる中、その舞台を支えるサッカーボールの多くはパキスタン製だ。パンジャブ州シアルコートに本拠を置くサッカーボール大手メーカー、フォワード・スポーツのビジネス・デベロップメント&マーケティング部シーラズ・ムナワール氏から、同社の事業展開について話を聞いた(ヒアリング日:2026年7月7日)。
フォワード・スポーツのシーラズ・ムナワール氏(ジェトロ撮影)
同社によると、パキスタンは世界のサッカーボール市場の70%超のシェアを持ち、世界最大級のサッカーボール生産地のシアルコートには1,000社以上の関連企業が産業クラスターを形成している。パキスタンとサッカーボール産業の歴史は古く、1900年代初頭に英国駐留軍(注1)が地元工房にボール修繕を依頼したことにさかのぼり、その後100年以上にわたり発展を続けてきた。
1990年設立のフォワード・スポーツは、年間約2,050万個を製造する業界最大手だ。1994年以来、世界的サッカーブランドのアディダスと戦略的パートナーシップを維持し、同ブランド需要の最大60%を供給している。現在開催中のFIFAワールドカップ公式試合球の詳細は非公表ながら、同社製ボールも供給されている。FIFA向けボールを製造できる国は世界でも限られており、パキスタンはその中核を担っている。
ムナワール氏によれば、アディダス向け製品は100項目以上の品質試験を通過する必要があり、吸水率、摩耗耐久性、反発性能、飛行時の回転特性、プレイアビリティ(蹴りやすさ)など、競技性能に直結する検査を含む。また、日本向けにはモルテンやミズノなどへ供給しており、品質は国際的に高く評価されている。
品質管理を徹底する検品(フォワード・スポーツ提供)
研究開発が製造技術と生産性を向上し、競争力を強化
競争力の源泉は研究開発投資と生産工程の高度化にある。同社のカワジャ・マスード・アクタールCEOは、「イノベーションは当社のDNAに刻まれている」と述べ、同社は独自の研究開発施設を有する。熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリウレタン(PU)を主要素材とし、用途や価格帯に応じ6種類の製造技術を使い分ける。2000年代初頭には手縫いから完全機械化のリーン生産方式(注2)へ移行し、大量生産と安定品質を実現したほか、新素材開発、スマート機械導入、人工知能(AI)活用による品質検査も進めている。
カワジャ・マスード・アクタールCEO(同社提供)
また同社は環境対策、人権尊重、労働環境の改善に関する国際基準を順守している。工場にはブランド担当者が常駐し、監査や改善提案を実施する。従業員約1万人のうち35%が女性で、女性の経済的自立にも貢献する。新型コロナ禍では需要急減に直面したが、生産効率化とコスト削減で乗り越えた。今後はフットウエア製造体制の強化と、自社ブランド展開の拡大を目指しており、世界最高峰のスポーツイベントを支える企業として、パキスタン製造業の国際競争力を象徴する存在となっている。
同社独自の研究開発施設(同社提供)
(注1)現在のパキスタンに相当する地域は、1858年から1947年まで英領インドの一部として英国統治下にあった。
(注2)リーン生産方式とは、生産ラインの無駄を徹底排除し、生産の効率化、製品の品質向上を図る生産方法。
(糸長真知)
(パキスタン)
ビジネス短信 07601655c62cc05c
関連情報
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パキスタン製品が支えるFIFAワールドカップ、サッカーボール製造のフォワード・スポーツに聞く
ジェトロ公式SNSアカウント
出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/07601655c62cc05c.html
時系列
- 1900年代初頭 英国駐留軍が地元工房にボール修繕を依頼し、パキスタンのサッカーボール産業の歴史が始まる
- 1990-XX-XX フォワード・スポーツ設立
- 1994-XX-XX フォワード・スポーツがアディダスと戦略的パートナーシップを開始
- 2000年代初頭 フォワード・スポーツが手縫いから完全機械化のリーン生産方式へ移行
- 2026-07-07 フォワード・スポーツのシーラズ・ムナワール氏へのヒアリング実施
- 2026-07-14 本記事が公開される
主な数値
| パキスタンの世界のサッカーボール市場シェア | 70%超 |
|---|---|
| シアルコートの関連企業数 | 1000社以上 |
| フォワード・スポーツの年間製造数 | 2050万個 |
| フォワード・スポーツのアディダス需要への供給割合 | 60% |
| フォワード・スポーツの従業員数 | 1万人 |
| フォワード・スポーツの女性従業員の割合 | 35% |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、特定の製品分野における国際的な競争力構築の模範となる。フォワード・スポーツの成功は、長期的な戦略的パートナーシップ(アディダスとの25年以上の関係)、継続的な研究開発投資、生産技術の高度化(リーン生産方式、AI活用)、そして環境・人権・労働基準といった国際的なESG要素の順守が不可欠であることを示唆する。特に、グローバルブランドのサプライヤーとして、100項目以上の品質試験をクリアする徹底した品質管理体制は、国際市場で信頼を得る上で極めて重要である。企業は、自社のサプライチェーンにおける品質保証体制と、国際的な倫理基準への対応状況を定期的に見直し、競争力強化のためのイノベーション投資を戦略的に行うべきである。また、新型コロナ禍のような予期せぬ事態への対応力も、事業継続の鍵となる。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-14
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