経済・産業トレンド

米企業、中国市場を依然重視も、国外移転を計画する割合が増加、米中ビジネス評議会調査

米中ビジネス評議会(USCBC)の2026年調査によると、米国企業の95%が中国事業をグローバル競争力維持に重要と認識しています。一方で、米中対立による関税措置の影響は72%の企業に及び、中国からの事業移転または計画の割合は29%と過去最高を記録しました。輸出管理の影響も半導体業界を超えて広がり、重要鉱物・希土類の調達先多様化が課題となっています。

この発表の要点

企業・自治体への影響

製造業、商社、物流、ITなど、中国とビジネスを行う多岐にわたる企業は、サプライチェーンの再編、貿易政策への対応、および地政学的リスク管理の強化が求められます。特に、中国への依存度が高い企業は、事業戦略の見直しやリスク分散策の検討が急務となるでしょう。

対応すべきこと

対応優先度:  企業の事業戦略、サプライチェーン、財務に中長期的な影響を与える可能性があり、継続的な監視と対応策の検討が必要なため。

対象部門: 経営者 法務 経理 広報 総務

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 米中ビジネス評議会(USCBC)
発表日 2026-06-15
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年06月15日

米中ビジネス評議会(USCBC)は6月10日、対中ビジネスに関する2026年の会員企業向け調査結果を発表した。調査結果からは、米国企業に中国市場の重要性が依然として高く認識される一方、米中対立に伴う対中ビジネスリスクへの懸念が高まる実態が読み取れる。

調査結果(注1)によると、自社のグローバルな競争力維持の観点から、中国事業が重要だと回答した割合が95%に達した(注2)。報告書ではこの結果について、中国市場の市場規模のみならず、「中国のエコシステムが持つスピードや効率性を、自社の専門知識や技術と組み合わせることが、企業の競争力の維持につながっているため」と分析している。

米国企業が中国を重視する一方で、米中対立に起因するリスクもあらわになった。両国による関税措置の影響を受けていると回答した企業は72%で、2025年調査結果より4ポイント増加した。関税への対策では、「自社で吸収した」と回答した割合が53%(前年比27ポイント増)、「川下の顧客に価格転嫁した」が42%(同11ポイント増)、「サプライヤーと価格転嫁を交渉した」が42%(同8ポイント増)だった。こうした結果を踏まえ、報告書では、「対中貿易赤字は縮小したかもしれないが、米国の製造業を活性化させるには至っていない」と指摘した。また、「中国から少なくとも一部の事業を移転した、あるいは移転を計画している」と回答した割合は29%となり、過去最高を記録した。第1次トランプ政権が発足した2017年以降、中国外への移転を検討している割合は上昇傾向にある。

米国の輸出管理や制裁による影響を受けたと回答した割合は46%だった。影響を受けている割合は年々増加していることから、報告書では「輸出規制の影響が半導体業界を超えて広がっていることがうかがえる」と分析した。中国による輸出管理の影響を受けている割合は36%だった。業種別では、自動車・物流企業が最大だった。「中国外から重要鉱物や希土類(レアアース)を調達する取り組みを行っているか」との問いに対しては、「積極的に行っている」と回答した割合が29%、「行っているが代替先が見つかっていない」が47%だった。米国の先端半導体に対する輸出管理、中国のレアアースに対する輸出管理は、両国の経済関係の争点の1つになっている(2025年12月9日付地域・分析レポート参照)。

報告書ではこれらの結果に基づき、米国企業にとって当面の最優先課題として、「実質的かつ持続的な関税引き下げの実現」だとし、その次に「米・中双方による輸出管理の緩和」だと提言している。なお、5月に行われた米中首脳会談を経て(2026年5月19日記事参照)、両国は、経済安全保障上、機微でない分野において、双方の追加関税率の引き下げ対象となる品目を特定するため、「米中貿易委員会」の設置で合意している(2026年6月4日記事参照)。

(注1)調査は2026年2~3月に実施、回答企業数は175社。USCBCの会員は、中国とビジネスを行う約270社の米国企業。
(注2)「とても重要」「重要」「いくぶん重要」と回答した割合の合計。

(赤平大寿)

(米国、中国)

ビジネス短信 c51a461e03e7537c

関連情報

dummy

もっと見る

ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

米企業、中国市場を依然重視も、国外移転を計画する割合が増加、米中ビジネス評議会調査

ジェトロ公式SNSアカウント

出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/c51a461e03e7537c.html

時系列

主な数値

中国事業が重要と回答した割合 95%
米中両国による関税措置の影響を受けていると回答した企業割合 72%
関税への対策として「自社で吸収した」と回答した割合 53%
関税への対策として「川下の顧客に価格転嫁した」と回答した割合 42%
関税への対策として「サプライヤーと価格転嫁を交渉した」と回答した割合 42%
中国から少なくとも一部の事業を移転した、あるいは移転を計画していると回答した割合 29%
米国の輸出管理や制裁による影響を受けたと回答した割合 46%
中国による輸出管理の影響を受けている割合 36%
中国外から重要鉱物や希土類を調達する取り組みを「積極的に行っている」と回答した割合 29%
中国外から重要鉱物や希土類を調達する取り組みを「行っているが代替先が見つかっていない」と回答した割合 47%
調査回答企業数 175社
USCBC会員企業数 270社

この事例から確認すべきポイント

米中ビジネス評議会の調査結果は、米国企業が中国市場の重要性を認識しつつも、米中対立に起因するビジネスリスクへの懸念が顕著に高まっている現状を示しています。関税措置の影響は広範に及び、多くの企業がコスト吸収や価格転嫁で対応していますが、事業の一部または全部を中国外へ移転する動きが過去最高水準に達していることは、サプライチェーン再編の加速を示唆します。また、両国の輸出管理が半導体業界を超えて広がり、重要鉱物・希土類の調達におけるリスク分散の必要性が浮き彫りになっています。この状況は、米国企業が中国市場の魅力と地政学的リスクの間で複雑なバランスを模索していることを示しており、今後の米中経済関係の動向が企業の事業戦略に与える影響は大きいでしょう。企業は、政策動向の注視とサプライチェーンのレジリエンス強化が喫緊の課題となります。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-06-15

関連事例

自社のプレスリリースをPRazeに掲載しませんか?

PRazeを見る