カナダ、米国との貿易交渉決裂、9月8日から報復措置
この発表の要点
- カナダ首相が米国との貿易交渉の停止と交渉団の帰国を命令
- 米国が約280億カナダ・ドル(約3兆2,000億円)相当の製品に50%の追加関税を発動
- カナダが9月8日から同額規模の報復措置を導入する方針を示し、同日までに国内支援策を発表予定
企業・自治体への影響
北米市場で貿易・製造を行う企業において、輸出入コストの急増およびサプライチェーンの混乱が生じる可能性がある。経営企画、法務、経理部門などは米国およびカナダの関税措置や報復措置の影響範囲を精査する必要がある。
対応すべきこと
- 公式出典や関連情報を確認し、自社の取り扱う製品が米国の追加関税またはカナダの報復措置の対象に含まれるか確認する
- 関係部門(経営・法務・経理・総務)へ情報を共有し、影響額を試算する
- 9月8日に予定されるカナダの報復措置および国内支援策の発表を注視する
対象部門: 経営者 総務 法務 経理
対応期限:2026-09-08
基本データ
| 企業・団体 | カナダ政府 |
|---|---|
| 業界 | 製造・貿易 |
| 発表日 | 2026-08-24 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年08月24日
カナダのマーク・カーニー首相は8月21日、米国との貿易交渉を停止し、交渉団に帰国を命じたと発表した。実質的な交渉決裂とみられる。米国のドナルド・トランプ大統領が7月20日、1930年関税法338条に基づき一部のカナダ産品に追加関税を課す措置を発表したこと(2026年7月21日記事参照)を受け、両国は交渉を続けていた。カーニー首相は、交渉終盤に米国側が修正して提示した合意条件が「不公平で経済的合理性を欠き、いかなる合意の信頼性を損なう」ものだったことを、交渉停止の理由に挙げた。
これに伴い、米国は約280億カナダ・ドル(約3兆2,000億円、Cドル、1Cドル=115円)相当の一部のカナダ製品に対し、338条に基づく50%の追加関税を発動した(2026年8月24日記事参照)。一方、カナダは9月8日から、同額規模の報復措置を導入する方針を示した。
カーニー首相は声明で、米国との貿易交渉の目的として、(1)カナダ企業の大半について米国市場への無関税アクセスを維持すること、(2)2国間の貿易関係に一層の安定をもたらすこと、(3)カナダの主要産業に対する米国の関税を大幅に引き下げること、(4)新たな関税導入の差し迫った脅威を取り除き、中小企業を保護すること、(5)カナダの柔軟性・独立性・主権を維持すること、を掲げていた。その上で、米・カナダ関係がかつての関係には戻らないと認識しつつ、カナダにとって米国市場への最良のアクセスを確保するため、公正な合意を目指したが、交渉で得られた進展はカナダ側の目標達成には不十分だったと述べた。カナダ政府は、9月8日までに、米国の関税措置で影響を受ける国内の労働者や企業に対する追加支援策を発表する。
カーニー首相は8月22日の記者会見で、一連の経緯を説明した。交渉団の帰還を命じた理由について「米国は多くのことを要求し、わずかな妥協にとどまった」と述べ、「米国の提示内容は受け入れられず、米国の要求にも応じられない」とした。
米国が土壇場で修正した合意条件の具体例として、カーニー首相は、(1)自動車分野の関税措置について、関税引き下げの対象を乗用車・小型トラックに限定し、中・大型トラックを含めないこと、(2)第三国・地域との貿易協定を制限する措置を設けようとしたこと、(3)英語とフランス語を公用語とする原則や多文化主義、カナダの主権を守る姿勢に反する要求が含まれたこと、を挙げた。また、米国との重要鉱物分野での協力について、今回の関税措置により両国の協力機会が失われたとし、「米国に独占的なアクセスを認めることは決してない」と述べた。
貿易交渉は、ドミニク・ルブラン・カナダ-米国貿易・州政府間関係・国内貿易・ワンカナダ経済担当相と米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表らの間で行われた(2026年8月14日記事参照、注1)。両国は8月13日の4回目の閣僚級協議後も複数回にわたって交渉し、8月18日に3日間の交渉期限延長を発表していた(2026年8月19日記事参照)。8月20日には、アニータ・アナンド外相とマルコ・ルビオ国務長官が米国首都ワシントンで会談し、貿易を巡る建設的な対話継続と両国の経済関係の強化を確認した。さらに同日、カーニー首相はメキシコのクラウディア・シェインバウム大統領と電話会談を行い、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA、注2)の見直しについて協議した。米・カナダ間や北米全体の貿易交渉の妥結に向けた機運が高まっていた中、土壇場で交渉が決裂したかたちだ。
(注1)貿易交渉ではほかにも、米国が7月24日に課した1974年通商法301条の追加関税措置(2026年7月24日記事参照)や、7月1日に行われたCUSMAの見直しに向けた3カ国協議で合意に至らなかった点(2026年7月3日記事参照)なども議題になったとみられる。
(注2)米国ではUSMCA、メキシコではT-mecと呼ばれる。
(木村勇翔)
(カナダ、米国)
ビジネス短信 05924142bba2dcf1
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カナダ、米国との貿易交渉決裂、9月8日から報復措置
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/05924142bba2dcf1.html
時系列
- 2026-07-20 米国のドナルド・トランプ大統領が1930年関税法338条に基づき一部のカナダ産品に追加関税を課す措置を発表した。
- 2026-08-13 ドミニク・ルブラン担当相とUSTRジェミソン・グリア代表らの間で4回目の閣僚級協議を実施した。
- 2026-08-18 両国が3日間の交渉期限延長を発表した。
- 2026-08-20 アニータ・アナンド外相とマルコ・ルビオ国務長官がワシントンで会談し、カーニー首相はメキシコのクラウディア・シェインバウム大統領と電話会談を行った。
- 2026-08-21 マーク・カーニー首相が米国との貿易交渉の停止と交渉団の帰国命令を発表した。
- 2026-08-24 米国が約280億カナダ・ドル相当の一部カナダ製品に対し338条に基づく50%の追加関税を発動した。
主な数値
| 米国の追加関税対象製品の規模 | 280億カナダ・ドル(約3兆2,000億円) |
|---|---|
| 米国の追加関税率 | 50% |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、米国とカナダの間における貿易交渉が土壇場で決裂し、双方が大規模な追加関税および報復措置の発動へ移行する重大な国際経済トラブルである。自動車分野や重要鉱物分野を巡る米国の要求がカナダ側の主権や経済的利益と対立したことが背景にある。北米市場を跨ぐサプライチェーンを持つ企業にとっては、関税コストの急増だけでなく、9月8日に予定されるカナダ側の報復措置や国内支援策の動向など、今後の貿易環境の急変に対するリスク管理と調達先の見直しが急務となる。広報・実務担当者は、自社の輸出入品目が追加関税や報復措置の対象に含まれるかを早急に精査し、関係部門と連携して対応方針を策定することが求められる。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-08-24
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