経済・産業トレンド 発動済

トランプ米政権が対カナダ追加関税発動、338条に基づく初の措置、USMCAの見通しにも暗雲

米税関・国境警備局は1930年関税法338条に基づき、カナダからの特定製品輸入に対し50%の追加関税を発動した。トランプ大統領による同条に基づく初の措置となる。両国間の交渉は直前まで行われたが決裂し、カナダ側は同規模の報復措置を表明、USMCAの先行きにも不確実性が増している。

この発表の要点

企業・自治体への影響

カナダから米国への輸出入、および北米サプライチェーンに依存する製造業・貿易業の企業に対して、調達コストの急上昇や報復措置による二国間貿易への影響が懸念されます。経営企画、法務、調達部門において影響範囲の精査が必要です。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 総務 法務 経理

対応期限:施行日まで

基本データ

企業・団体 米国税関・国境警備局(CBP)
業界 製造・貿易
発表日 2026-08-24
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年08月24日

米国税関・国境警備局(CBP)は8月21日、1930年関税法338条に基づく対カナダ追加関税に関するガイダンスを発表した。米国東部時間8月22日午前0時1分以降に通関されるカナダからの特定製品の輸入に、50%の追加関税を課す。ドナルド・トランプ大統領は、338条に基づいて追加関税を課した初の大統領となった。

ガイダンスでは、338条関税の対象となる米国関税分類番号(HTSUS)を記した。併せて、鉄鋼・アルミニウムや自動車など1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象品目、無人航空機を除くWTOの「民間航空機貿易に関する協定」の対象品目などを対象外品目として記載した。なお、アンチダンピング関税(AD)や補助金相殺関税(CVD)は、338条関税の対象の有無にかかわらず課す。

トランプ氏は7月20日、カナダによる米国製自動車への追加関税などが米国に対する差別的措置に当たるとして、338条に基づき、カナダからの特定品目の輸入に50%の追加関税を課すと発表した。以降、両国は338条関税の発動を回避するための交渉を行っていた。交渉の進展を受け、トランプ氏は当初の発動予定日の前日に当たる8月18日、3日間の発動延期を決定した(2026年8月19日記事参照)。その後、政治専門紙「ポリティコ」は8月20日、米国はカナダに対して、232条に基づく鉄鋼・アルミニウム関税を50%から25%へ、自動車関税を25%から15%へそれぞれ引き下げる一方、カナダは米国に対する報復関税を撤廃することなどを記した合意文章が回覧されている、と報じていた。

しかし、米国通商代表部(USTR)の8月22日のX(旧Twitter)への投稿によれば、「米国市場への主要輸出国の中で最も優遇された待遇を受けられるよう提案したにもかかわらず、カナダによる新たな要求やこれまでの約束の撤回により、ここ数日で築き上げられた慎重なバランスが崩れ」、交渉はまとまらなかった。USTRはさらに、交渉がまとまっていれば、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の正式な交渉開始の発表につながったはずだ」と説明した。

USMCAは7月に「発効6年後の共同見直し」を迎えた。米国はUSMCA見直しに関して、メキシコとは正式に2国間交渉を行っているが(2026年7月28日記事参照)、カナダとは非公式な協議にとどまり正式には行っていない(注1)。これまでの多くの追加関税措置と異なり、338条関税はUSMCAの原産地規則を満たした場合でも課されることから(注2)、同措置は米国側にとってUSMCAの交渉を有利に進める目的があったと指摘されている(2026年7月28日記事参照)。今回の交渉決裂により、あらためて両国関係に大きな溝があいたと同時に、USMCAの先行きに不確実性が増したことになる(注3)。

なお、カナダ側は交渉決裂の要因を「米国側の意見の不一致」と主張しており(「ポリティコ」8月22日)、マーク・カーニー首相は8月21日夜に、338条関税の対象となる輸入額と同規模の報復措置を取ると表明している(2026年8月24日記事参照)。

(注1)2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、失効期限は合意時点から16年後に延長される。USMCAに参加する3カ国は、2026年7月1日に、初めての見直し会合を実施したが、米国は延長に合意しなかった。これにより、3カ国は条文に従い、今後も見直しを継続する。合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
(注2)相互関税や1974年通商法122条に基づく追加関税は、USMCAの原産地規則を満たすことで対象外となる規定が設けられていた(2026年2月24日記事参照)。また、強制労働を使用して生産された産品の輸入禁止措置に関する、同通商法301条に基づく追加関税もUSMCAの原産地規則を満たすことで対象外としている(2026年7月24日記事参照)。そのほか、1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品への追加関税においては、USMCAの原産地規則を満たす場合、完成車に対しては非米国産部品の価額に対してのみ追加関税を課し、部品については追加関税を課していない(2025年4月3日記事参照)。
(注3)USMCAの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポートおよびジェトロのウェビナー参照。

(赤平大寿)

(米国、カナダ)

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トランプ米政権が対カナダ追加関税発動、338条に基づく初の措置、USMCAの見通しにも暗雲

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/b82f0e7a2b1dc160.html

時系列

主な数値

追加関税率 50%

この事例から確認すべきポイント

本件は、1930年関税法338条に基づく米国初の発動事例であり、北米間の貿易秩序やUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の先行きに直接的な影響を及ぼす重大な動きである。カナダ側も報復措置を表明しており、両国間でサプライチェーンを持つ製造業や貿易関連企業にとっては、調達コストの急上昇や通関手続き上のリスクへの対応が急務となる。今後の両国関係の推移やUSMCAの見直し協議の行方を継続して注視する必要がある。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-08-24

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