米税関、セルビアとヨルダン拠点企業の銅製品・衣類の輸入差し止め命令3件を発令、強制労働理由に
この発表の要点
- 米国CBPは、セルビアとヨルダンの計3事業者に対し、強制労働を理由とする違反商品保留命令(WRO)を発令した。
- 対象は銅製品と衣類で、各社がILO強制労働指標に該当すると判断・認定された。
- 輸入者は、差し止められた貨物について強制労働不使用を立証するか、廃棄・再輸出する必要がある。
企業・自治体への影響
米国へ製品を輸出する企業、特に製造業やサプライチェーンに海外企業を含む企業は、強制労働リスクに対するデューデリジェンスの強化が求められます。関連する部門は、法務、経理、総務、調達、広報など多岐にわたります。
対応すべきこと
- 自社のサプライチェーンに強制労働リスクがないか、サプライヤー監査を強化する。
- 米国CBPが公表している強制労働に関する輸入者向けガイダンスを確認し、最新の規制動向を把握する。
- 関係部門(法務、調達、広報など)へ本発表を共有し、対応方針を検討する。
- 万一WROの対象となった場合の、強制労働不使用の立証準備や対応計画を策定する。
対象部門: 経営者 総務 法務 広報 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | ジェトロ |
|---|---|
| 業界 | 製造業 |
| 発表日 | 2026-06-30 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月30日
添付資料(150 KB)
米国税関・国境警備局(CBP)は2026年6月、セルビアおよびヨルダンの計3事業者に対し、強制労働を理由とする違反商品保留命令(WRO)を発令した。対象は、セルビアに所在する中国系大手鉱山会社のジジン・カッパーが製造する銅・銅製品(6月16日発表)と、ヨルダンの縫製会社ニードル・クラフトおよびカジュアル・ウエア・アパレルが生産する衣類だ(6月23日発表)。
米国の1930年関税法307条は、強制労働、児童労働、囚人労働などの労働搾取を通じて生産された物品の輸入を原則禁止しており、CBPは強制労働の関与が推定される場合にWROを発令し、対象物品の輸入を差し止める。強制労働の関与が正式に認定(Finding)された場合には、輸入差し止めに加え、押収・没収措置が講じられる。
ジジン・カッパーに対しては、労働者の陳述、NGO報告書、学術研究など複数の情報源をCBPが調査した結果、ILOの強制労働指標6項目に該当すると判断した(注1)。ニードル・クラフトおよびカジュアル・ウエア・アパレルに対しては、メディア報道、政府文書、企業声明、被害者供述、NGO報告書などを総合した結果、ILOの強制労働指標7項目に該当すると認定した(注2)。
今回のWROに関し、CBP貿易局のエグゼクティブ・アシスタント・コミッショナーのスーザン・トーマス氏は、「外国企業が強制労働を利用してコストを抑制することで、米国の製造業者は不公平な競争に直面する」と述べた上で、CBPの強制労働の取り締まりは「米国商取引の健全性を損なうサプライチェーンを摘発する取り組み」で、「人権と米国の経済安全保障の双方を守るための措置」だと強調した。
CBPのダッシュボードによると、6月23日時点で、有効なWROは今回の3件を合わせ計58件(認定8件)となる。差し止められた貨物の輸入者は、輸入品を廃棄・再輸出するか、強制労働を使用していないことを立証しなければならない。
なお、CBPは2025年6月に強制労働の関与が疑われる外国製品を申し立てるポータルサイトを設置した(2025年7月2日記事参照)。2026年6月12日には強制労働に関する輸入者向けガイダンスも公表し(2026年6月16日記事参照)、強制労働の関与が疑われる製品の輸入規制を強化している(添付資料表参照)。
(注1)英国のNGOであるビジネスと人権リソースセンターは、ジジン・カッパーのセルビアでの事業について、2024年2月に不透明な土地収集、環境汚染、行政監督の不備が指摘されて以降、関係者への調査を実施してきた。今回のWROでは強制労働指標のうち、脆弱(ぜいじゃく)性の悪用、賃金の未払い、威嚇および脅迫、移動の制限、身分証明書の没収、および過度の残業に該当すると認定された。
(注2)ビジネスと人権リソースセンターによると、ニードル・クラフトが所有する工場での労働権侵害に関する報告は2023年以降拡大している。同社に対して今回認定された強制労働指標は、身分証明書の没収、過度の残業、威嚇および脅迫、身体的・性的暴力、賃金の未払い、移動の制限、および劣悪な生活・労働条件。
(久峨喜美子)
(米国、セルビア、ヨルダン)
ビジネス短信 b06f957abe76064f
関連情報
dummy
もっと見る
ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
米税関、セルビアとヨルダン拠点企業の銅製品・衣類の輸入差し止め命令3件を発令、強制労働理由に
ジェトロ公式SNSアカウント
出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/b06f957abe76064f.html
時系列
- 2023年 ニードル・クラフトが所有する工場での労働権侵害に関する報告が拡大
- 2024年02月 ジジン・カッパーのセルビアでの事業について、不透明な土地収集、環境汚染、行政監督の不備が指摘
- 2025年06月 CBPが強制労働の関与が疑われる外国製品を申し立てるポータルサイトを設置
- 2026年06月12日 CBPが強制労働に関する輸入者向けガイダンスを公表
- 2026年06月16日 セルビアのジジン・カッパーが製造する銅・銅製品に対しWROが発表
- 2026年06月23日 ヨルダンの縫製会社ニードル・クラフトおよびカジュアル・ウエア・アパレルが生産する衣類に対しWROが発表。この時点で有効なWROは今回の3件を合わせ計58件(認定8件)となる
- 2026年06月30日 本発表(ジェトロのビジネス短信)
主な数値
| WRO発令件数 | 3件 |
|---|---|
| 有効なWRO総数 | 58件 |
| 認定済WRO件数 | 8件 |
| ジジン・カッパーのILO指標該当数 | 6項目 |
| ニードル・クラフト等のILO指標該当数 | 7項目 |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、米国税関・国境警備局(CBP)が強制労働に関与する製品の輸入規制を強化している現状を示すものです。特に、1930年関税法307条に基づき、強制労働が推定される製品に対して違反商品保留命令(WRO)を発令し、輸入差し止め措置を講じている点が重要です。企業は、自社のサプライチェーンにおいて強制労働のリスクがないかを徹底的に調査し、デューデリジェンスを強化する必要があります。CBPはポータルサイトの設置や輸入者向けガイダンスの公表を通じて情報提供と取り締まりを強化しており、輸入企業はこれらの最新情報を常に確認し、自社のサプライチェーンが規制対象とならないよう、サプライヤーとの契約内容や監査体制を見直すことが求められます。また、WROが発令された場合、輸入者は強制労働不使用の立証責任を負うため、そのための準備も不可欠です。現時点で取得できた本文からは、添付資料の詳細を確認できませんでした。詳細は公式出典をご確認ください。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-30
関連事例
- 日英政策の具現化に向け、英国主要大学との協業・技術連携推進のイベントをロンドンで開催
- パリ司法裁判所、トタルに温室効果ガス排出の「スコープ3」考慮命令、注意義務法の解釈拡大
- フィンランド、国籍取得条件の厳格化で、市民権試験を2027年から導入
- 米シンクタンク、USMCAの見直しがもたらす不確実性を指摘
- ASEANとロシア、エネルギー協力を強化、カザンで首脳会議
自社のプレスリリースをPRazeに掲載しませんか?
無料でプレスリリースを掲載する