米シンクタンク、USMCAの見直しがもたらす不確実性を指摘
この発表の要点
- USMCAの共同見直しが実施されたが、米国が延長に合意せず、3カ国は協議を継続している。
- シンクタンクは、延長合意の不透明性が企業の対北米投資に負担を与え、北米の競争力への脅威となると指摘している。
- USMCA内容変更時の議会承認の必要性については専門家の間で意見が分かれており、TPA失効中のため議会での修正や審議長期化のリスクがある。
企業・自治体への影響
北米地域で事業を展開する製造業、貿易業、および関連するサービス業の企業は、USMCAの見直し動向がサプライチェーンや投資計画に与える不確実性を注視する必要があります。特に、長期的な事業計画を策定する経営層や、国際貿易実務を担う部門に影響が及びます。
対応すべきこと
- USMCAの見直しに関する公式発表や関連シンクタンクの分析を継続的に情報収集する。
- 自社の北米事業におけるサプライチェーンや投資計画への潜在的な影響を評価する。
- 貿易法改正や関税変更の可能性に備え、複数のシナリオを想定した事業計画の柔軟性を検討する。
- 関係部門(経営者、法務、経理など)と情報共有し、今後の対応方針を協議する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | ジェトロ |
|---|---|
| 発表日 | 2026-07-03 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | 東京都 |
発表された内容
2026年07月03日
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しが7月1日に行われ、米国が延長に合意しなかったため、3カ国は協議を継続することとなった(2026年7月2日記事参照、注1)。首都ワシントンのシンクタンクは、7月1日に合わせて論考を相次いで発表した。
戦略国際問題研究所(CSIS)のアメリカ・プログラムでフェローを務めるディエゴ・ビタール氏は6月30日に発表した論考で、3カ国によるUSMCA延長合意までの期間が不透明であることが企業の対北米投資の負担となり、北米の競争力にとって「最大の脅威」だと主張した。リバタリアン系のシンクタンクであるケイトー研究所でバイスプレジデントを務めるスコット・リンスコム氏も、6月30日に発表したブルームバーグ向けの論考で、見直しが数十年単位で事業計画を立てるグローバル企業に不確実性をもたらすと指摘した。
仮に見直しによってUSMCAの内容が変更される場合、議会承認が必要になるのか、という点が注目されている。この点について、CSISの経済プログラムでシニアアドバイザーを務めるウィリアム・ラインシュ氏は7月1日に発表した論考で、政権と議会との間でまた十分に議論されていないと指摘した(注2)。議会での協議の対象となり得る内容として、貿易法改正や関税の変更を挙げ、それらが見直し後の条文に含まれるかどうかが、議会承認の必要性を左右すると解説した。また、大統領貿易促進権限(TPA、注3)が失効している中、そのまま見直し交渉の結果を議会に提出した場合、議会で内容の修正や審議の長期化などが起こり得ると指摘した。一方でリンスコム氏は、USMCAの大幅な変更には議会承認が必要となることから、見直しは承認を必要としない小幅な変更にとどまると予想した(注4)。
(注1)米国のUSMCA見直しに関する方針は、USTRのジェミソン・グリア代表が2025年12月に実施した議会報告の中で示されている(2026年2月20日付地域・分析レポート参照)。
(注2)米国憲法上、通商に関する権限は議会が有する。
(注3)議会が行政府(政権)に対し一時的に付与できる、通商に関する権限。政権がTPAを付与された状態で通商協定の交渉・合意を進めた場合、議会はその内容を修正せず、実施法案の賛否のみを審議する。米国がこれまで締結したFTA(自由貿易協定)の大半は、USMCAを含め、TPAが政権に付与された状態で発効している。ただし、TPAは2021年7月に失効している(2021年7月2日記事参照)。
(注4)見直しスケジュールにかかわらず、締約国は、他の締約国に対して書面による通知を提出することで、6カ月後に脱退できる。この点についてリンスコム氏は、上院財政委員会が2020年に発表した報告書の中で、「米国は、議会の同意なしに、議会が承認した貿易協定から離脱することはできない」と結論付けていることや、北米3カ国の経済統合の規模などを理由に、実現は困難だという見解を示している。
(滝本慎一郎)
(米国、メキシコ、カナダ)
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米シンクタンク、USMCAの見直しがもたらす不確実性を指摘
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/9f298d75a2c3d1b0.html
時系列
- 2021-07 大統領貿易促進権限(TPA)が失効
- 2025-12 USTR代表が議会報告の中で米国のUSMCA見直しに関する方針を示す
- 2026-06-30 戦略国際問題研究所(CSIS)のディエゴ・ビタール氏が論考を発表
- 2026-06-30 ケイトー研究所のスコット・リンスコム氏が論考を発表
- 2026-07-01 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しが行われ、米国が延長に合意せず3カ国が協議を継続
- 2026-07-01 CSISのウィリアム・ラインシュ氏が論考を発表
主な数値
| USMCA共同見直し実施日 | 1日 |
|---|---|
| TPA失効時期 | 2021年7月 |
| 脱退通知期間 | 6カ月 |
この事例から確認すべきポイント
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しは、北米地域で事業を展開するグローバル企業にとって、長期的な事業計画に不確実性をもたらす重要な要素です。特に、延長合意までの期間が不透明であることは、企業の対北米投資判断に影響を与える可能性が指摘されています。また、見直しによって協定内容が変更される場合の議会承認の必要性については、専門家の間でも見解が分かれており、今後の米政権と議会の議論の行方が注目されます。大統領貿易促進権限(TPA)が失効している現状では、議会での修正や審議長期化のリスクも考慮する必要があるため、企業はUSMCAの動向を継続的に監視し、サプライチェーンや投資戦略への潜在的な影響を評価することが求められます。特に、貿易法改正や関税変更の可能性に備え、複数のシナリオを想定した事業計画の柔軟性確保が重要となるでしょう。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-03
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