経済・産業トレンド

米USTR、USMCAの自動車貿易報告書を発表、見直しを通じて原産地規則を強化する方針示す

米国通商代表部(USTR)は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の自動車物品貿易に関する報告書を連邦議会に提出しました。報告書では、自動車の原産地規則の緩和措置が2025年に失効し、原産地規則の完全履行への移行が進んだと指摘。一方で、メキシコに対する貿易赤字の拡大や、メキシコ・カナダからの輸入における米国産部品の減少と中国産部品の増加を課題視しています。USTRは、USMCAの見直しを通じて自動車の原産地規則を強化し、北米産部品の利用促進、非市場経済国がもたらすリスク軽減、規則の合理化・簡素化を目指す方針を示しました。また、USMCAの延長には合意せず、自動車の域内原産割合(RVC)の引き上げなどを提案しているとされます。

この発表の要点

企業・自治体への影響

自動車産業、特に北米(米国・メキシコ・カナダ)で事業を展開する自動車メーカーや部品サプライヤーは、USMCAの原産地規則の変更により、サプライチェーンの見直しや調達戦略の再構築を迫られる可能性があります。中国からの部品調達に依存している企業は、新たな制限措置に備える必要があります。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 法務 経理 広報 総務

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 米国通商代表部(USTR)
業界 自動車製造
発表日 2026-07-09
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年07月09日

米国通商代表部(USTR)は7月1日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の自動車物品貿易に関する報告書を連邦議会に提出した。米国の「USMCA実施法」はUSTRに対して2年ごとに、USMCAの自動車物品貿易の運用状況の議会への報告を義務付けている。今回は2024年に続いて(2024年7月3日記事参照)、3回目の報告となる(注1)。

冒頭で、自動車の原産地規則の緩和措置である代替経過措置(ASR、注2)のほとんどが2025年に失効したことに触れ、自動車メーカーは「原産地規則の完全履行に移行した」と記した。報告書によれば、カナダおよびメキシコから米国に輸入された自動車のうち、USMCAの原産地規則を満たした割合は、2020年のUSMCA発効以降で最低だった2023年の91.8%から2025年に94.7%に上昇した。自動車部品においても、62.0%から70.9%に上昇した。

一方で、メキシコに対する自動車・トラック・部品の貿易赤字額は、2019年の919億ドルから2025年の1,316億ドルに拡大したと課題視した(注3)。さらに、メキシコおよびカナダからの輸入に含まれる、米国産部品の減少と中国産部品の増加も課題視した。USTRの分析によると、メキシコから輸入する輸送機器に占める米国の付加価値の割合は、2017年の23.1%から2024年(注4)に18.3%へ低下した半面、中国による付加価値は4.5%から7.1%に、メキシコによる付加価値は50.9%から57.2%に上昇した。カナダからの輸送機器輸入においても、米国の付加価値の割合は26.3%から23.9%に低下した一方、中国は3.3%から4.2%に、カナダは49.5%から52.7%に上昇したと指摘した。

USMCAの見直しについては(注5)、その目的として、(1)自動車の原産地規則を強化し米国および北米産部品のさらなる利用促進、(2)非市場経済国がもたらす北米自動車サプライチェーンに対するリスク軽減、(3)自動車原産地規則の合理化・簡素化による、中小規模サプライヤーのUSMCA利用促進、を挙げた。USMCAの紛争解決パネルで争っていた主要部品(コアまたはスーパーコア)の域内原産割合(RVC)の解釈に関する最終報告については(2023年1月13日記事参照)、これまで同様「まだ合意に至っていない」と記した上で、USMCA見直しを通じて自動車の原産地規則の改正を目指す方針を示した。なお、報告書発表と同日の7月1日にUSMCAの見直し会合が行われたが、USTRは、USMCAが抱える欠点やメキシコとカナダとの貿易赤字に対処する必要があるとして、USMCAの延長に合意しなかった(2026年7月2日記事参照)。USTRは、自動車のRVCを75%から82%へ引き上げ、そのうち米国原産割合を50%とするよう提案しているとされる(注6)。
報告書では最後に、「USMCAは、米国および北米の自動車産業に引き続き大きなプラスの経済効果をもたらしている」と一定の評価をしつつも、レガシー半導体、重要鉱物、永久磁石のサプライチェーンにおける混乱といった外部要因により、「主要な中間財の第三国への依存が依然として続いている」「中国の過剰生産能力と相まって、米国および北米の自動車産業が直面するリスクが浮き彫りになった」とし、USMCAの自動車の原産地規則を強化し、第三国への過度な依存を軽減する姿勢をあらためて示した。

(注1)USTRは報告書作成に向け、2025年12月からパブリックコメントを募集していた。
(注2)USMCAには、発効から原則5年間、自動車生産者が輸入国からの承認を得ることで、一部の車種に対して域内原産割合が62.5%に緩和されるといった経過措置がある。
(注3)2024年の赤字額は、1,382億ドルと2025年よりも大きい。報告書では、2025年に減少した理由として、トランプ政権が自動車などに課した1962年通商拡大法232条による追加関税の効果を挙げている。自動車などに対する232条関税の詳細は、ジェトロのウェブサイト参照(661KB)。
(注4)2024年が入手可能な最新の値。
(注5)2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、失効期限は合意時点から16年後に延長される。延長に合意できなければ、3カ国は、毎年、見直しを継続する。合意できない状態が続けば、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
(注6)そのほか、原産地規則に中国で生産された製品の使用を制限する規則を含める提案をするのではないかともいわれている。USTRのUSMCA見直しに関する方針は、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。

(赤平大寿)

(米国、メキシコ、カナダ)

ビジネス短信 449facfd685ce5e1

関連情報

dummy

もっと見る

ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

米USTR、USMCAの自動車貿易報告書を発表、見直しを通じて原産地規則を強化する方針示す

ジェトロ公式SNSアカウント

出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/449facfd685ce5e1.html

時系列

主な数値

USMCAの原産地規則を満たした自動車の割合(2023年) 91.8%
USMCAの原産地規則を満たした自動車の割合(2025年) 94.7%
USMCAの原産地規則を満たした自動車部品の割合(2023年) 62.0%
USMCAの原産地規則を満たした自動車部品の割合(2025年) 70.9%
メキシコに対する自動車・トラック・部品の貿易赤字額(2019年) 919億ドル
メキシコに対する自動車・トラック・部品の貿易赤字額(2025年) 1316億ドル
メキシコから輸入する輸送機器に占める米国の付加価値の割合(2017年) 23.1%
メキシコから輸入する輸送機器に占める米国の付加価値の割合(2024年) 18.3%
メキシコから輸入する輸送機器に占める中国の付加価値の割合(2017年) 4.5%
メキシコから輸入する輸送機器に占める中国の付加価値の割合(2024年) 7.1%
メキシコから輸入する輸送機器に占めるメキシコの付加価値の割合(2017年) 50.9%
メキシコから輸入する輸送機器に占めるメキシコの付加価値の割合(2024年) 57.2%
カナダからの輸送機器輸入に占める米国の付加価値の割合(過去) 26.3%
カナダからの輸送機器輸入に占める米国の付加価値の割合(最新) 23.9%
カナダからの輸送機器輸入に占める中国の付加価値の割合(過去) 3.3%
カナダからの輸送機器輸入に占める中国の付加価値の割合(最新) 4.2%
カナダからの輸送機器輸入に占めるカナダの付加価値の割合(過去) 49.5%
カナダからの輸送機器輸入に占めるカナダの付加価値の割合(最新) 52.7%
USTRが提案しているとされる自動車のRVC引き上げ目標 82%
USTRが提案しているとされる自動車の米国原産割合目標 50%

この事例から確認すべきポイント

米国通商代表部(USTR)が発表したUSMCAの自動車貿易報告書は、北米の自動車産業における貿易協定の運用状況と今後の方向性を示す重要な文書です。代替経過措置の失効により、原産地規則の完全履行への移行が進む一方で、メキシコに対する貿易赤字の拡大や、米国産部品の減少、中国産部品の増加といった課題が明確に指摘されています。これは、米国がUSMCAの現状に満足しておらず、自国の利益をさらに追求する姿勢を示していると解釈できます。
USTRがUSMCAの延長に合意せず、原産地規則の強化、特に自動車の域内原産割合(RVC)の引き上げや米国原産割合の導入を提案しているとされる点は、今後の北米自動車サプライチェーンに大きな影響を与える可能性があります。企業は、これらの規則変更が自社の調達戦略、生産拠点、コスト構造に与える影響を詳細に分析し、サプライチェーンの再編や新たな調達先の検討を進める必要があるでしょう。特に、中国からの部品調達に依存している企業は、将来的な制限措置に備え、代替供給源の確保や生産体制の見直しを検討することが求められます。紛争解決パネルでの解釈合意に至っていない点も、今後の見直しプロセスで解決が図られる可能性があり、その動向にも注視が必要です。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-07-09

関連事例

自社のプレスリリースをPRazeに掲載しませんか?

無料でプレスリリースを掲載する