トランプ米大統領、発がん性懸念のある有害大気汚染物質の排出規制厳格化を2年延期
この発表の要点
- トランプ米大統領が有害大気汚染物質(HAP)の排出防止基準の履行開始日を2年延期する大統領令を発表した。
- 延期対象は、有機化学品やポリマー・樹脂の製造施設におけるHAP排出規制厳格化および敷地境界での継続監視義務。
- 規制緩和の理由は、基準が「国益に不可欠な産業に対してコストがかかり、場合によっては達成不可能」であるためと説明されている。
企業・自治体への影響
米国で有機化学品、ポリマー・樹脂、エネルギー関連の製造業を営む企業は、HAP排出規制の厳格化が2年間延期されるため、当面は改正前の基準が適用されます。これにより、新たな設備投資や運用変更にかかる時間的・経済的負担が一時的に軽減される可能性があります。しかし、将来的な政権交代による規制再強化のリスクも考慮し、長期的な環境戦略を見直す必要があります。
対応すべきこと
- 米国におけるHAP排出規制の最新動向を継続的に監視する。
- 自社の事業が付属書Iに定められた企業に該当するか確認する。
- 関係部門(製造、環境管理、法務など)へ本発表の内容を共有し、影響を評価する。
- 将来的な規制再強化の可能性も視野に入れ、中長期的な環境コンプライアンス戦略を検討する。
対象部門: 経営者 法務 経理
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 米国政府 |
|---|---|
| 業界 | 製造 |
| 発表日 | 2026-07-13 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月16日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月13日、2024年5月に環境保護庁(EPA)が定めた有害大気汚染物質(HAP、注)の排出防止基準について、履行開始日を2年延期する大統領令を発表した。付属書Iに定められた企業が規制緩和の対象となる。
今回規制緩和の対象となったのは、バイデン前政権下にEPAが定めた最終規則のうち、大気浄化法(CAA)第112条に基づく部分だ。112条はHAPを排出する工場やプラントなどの施設を対象に、排出削減基準の策定・見直しをEPAに義務付けている。最終規則は、特に有機化学品やポリマー・樹脂の製造施設の排出規制を厳格化するもので、発がん性が懸念されるエチレンオキシド(EtO)やクロロプレンなどのHAPの排出基準を厳格化するとともに、施設の敷地の境界(フェイスライン)における大気中のHAP濃度の継続的な監視を新たに義務付けていた。
最終規則で定められた新規基準には段階的な履行開始日が定められていたため、今回の大統領令によりそれぞれの開始日が2年後ろ倒しとなり、それまでは最終規則による改正前の基準が適用される。
同日に発表したファクトシートでは、最終規則で定められた基準が「国益に不可欠な産業に対してコストがかかり、場合によっては達成不可能」とし、過度に制限的な規制が「米国のエネルギー供給の信頼性や経済活力、国家安全保障を損なうもの」との認識を示した。
トランプ政権はHAPの排出規制の緩和を進めている。EPAのリー・ゼルディン長官は2025年3月、環境規制の緩和に向け、31件の措置を講じると発表した。そのうちの1つに、米国のエネルギーおよび製造業セクターを対象とした、複数の「HAPに関する国家排出基準(NESHAP)」見直しが含まれていた。2025年4月には、石炭火力発電所における水銀の排出規制の履行開始日を2年間延期する大統領令を発表しており、今回の措置はこれらに続くものと位置付けられる。
(注)がんなどの深刻な健康被害や環境への悪影響を引き起こすことが判明している、あるいはその疑いがあるとEPAが定める物質。現在は188種がHAPに定められている。
(滝本慎一郎)
(米国)
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トランプ米大統領、発がん性懸念のある有害大気汚染物質の排出規制厳格化を2年延期
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/47d668184d8c0e43.html
時系列
- 2024-05 環境保護庁(EPA)が有害大気汚染物質(HAP)の排出防止基準を定める
- 2025-03 EPAのリー・ゼルディン長官が環境規制緩和に向け31件の措置を講じると発表
- 2025-04 石炭火力発電所における水銀の排出規制の履行開始日を2年間延期する大統領令を発表
- 2026-07-13 ドナルド・トランプ大統領が有害大気汚染物質(HAP)の排出防止基準の履行開始日を2年延期する大統領令を発表
主な数値
| 延期期間 | 2年 |
|---|---|
| HAPの種類数 | 188種 |
| EPA長官発表の措置数 | 31件 |
この事例から確認すべきポイント
トランプ米大統領による有害大気汚染物質(HAP)排出規制の履行開始日2年延期は、前政権下で厳格化された環境規制を緩和し、産業界の負担軽減と経済活性化を優先する政権の姿勢を明確に示すものです。特に有機化学品やポリマー・樹脂製造施設、エネルギーセクターに影響が大きく、これらの産業は新たな設備投資や運用変更にかかる時間的・経済的猶予を得ることになります。しかし、この措置は環境保護団体からの批判を招く可能性があり、また将来的な政権交代によって再び規制が強化されるリスクも内包しています。企業は、短期的な規制緩和の恩恵と、中長期的な環境コンプライアンス戦略の見直し、そして国際的な環境基準との整合性について慎重に検討する必要があります。規制の変更が頻繁に行われる可能性を考慮し、柔軟な対応計画が求められます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-16
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