EU、鉄鋼セーフガード後継措置が7月1日から適用開始、関税割当量の配分を発表
この発表の要点
- EUは2026年7月1日から新たな鉄鋼輸入制限措置を適用開始し、26品目に関税割当量を設定した。
- 年間約1,830万トンの割当量のうち、50%はFTA締結国向け、残りは共通枠とし、主要輸入国には国別割当を設定する。
- 本措置は域内鉄鋼産業の保護と脱炭素化投資の維持を目的とするが、一部の国とは割当量に関する合意に至っていない。
企業・自治体への影響
EUへ鉄鋼製品を輸出する製造業、特に鉄鋼メーカーや、鉄鋼を原材料とする製品を製造する企業は、新たな関税割当量制度の影響を直接受けます。貿易部門や国際法務部門は、自社の輸出戦略やサプライチェーンへの影響を評価し、対応を検討する必要があります。
対応すべきこと
- 自社の製品がEUの26品目の対象に含まれるか確認する。
- EUへの輸出量と関税割当量(国別枠または共通枠)を照らし合わせ、輸出計画を見直す。
- 欧州委員会の今後の実施規則案の動向や、GATT第28条交渉の進捗を継続的に監視する。
- 関係部門(貿易、法務、生産、営業など)へ本情報を共有し、対応方針を協議する。
対象部門: 経営者 法務 広報 経理
対応期限:適用期間あり
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
|---|---|
| 業界 | 製造業(鉄鋼) |
| 発表日 | 2026-07-13 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | 東京都 |
発表された内容
2026年07月13日
EUの新たな鉄鋼輸入制限措置に係る規則〔(EU)2026/1384〕が7月1日、適用開始となった(2026年4月17日記事参照)。実施にあたり、欧州委員会は6月30日、26品目の関税割当量の配分に係る実施規則〔(EU)2026/1457〕を発表した(プレスリリース)。同実施規則は緊急立法手続きにより採択され、7月1日から12月31日までの最長6カ月間適用される。欧州委は2026年末までに再度、実施規則案を加盟国に送付し、通常のコミトロジー手続き(注)を経て採択する予定。
関税割当量は年間約1,830万トンとし、このうち50%(915万トン)をEUと自由貿易協定(FTA)を締結している国(締結予定国も含む)向けに確保する。残る50%は、FTA締結国を含む全ての国が利用できる共通枠とする。いずれにおいても、2022~2024年のEU輸入市場におけるシェアが5%以上の国に対しては、品目別の国別割当量を設定する。国別枠の対象とならない残余分(residual quota)は申請順に配分される。
欧州委はEUが輸入する鉄鋼製品の8割を占めるFTA締結国を優遇することで、新措置の効果を維持しつつ、締結国への影響を最小限に抑えたとした。また、GATT第28条交渉を通じ、多数の国と割当量に関し暫定合意したとし、引き続き交渉を継続する方針を示した。現地報道では、トルコやインド、ブラジルなどと合意したと報じられた。しかし、ブラジル外務省は7月1日付の声明で合意を否定。過剰生産の原因ではない国を対象に輸入制限を課すことは、根本的な解決にはならないと、EUを批判した。なお、日本やベトナムとも合意に至っていない。
新措置導入を受け、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)のカール・タシェレ副事務局長は7月1日付の論評で、域内の鉄鋼需要が急激に減少する中、WTOルールにのっとり無関税枠が自動的に拡大する従来のセーフガード措置は有効性を失っていたと指摘。新措置は、域内生産や脱炭素化投資を維持可能な水準に輸入量を抑制し、域内産業を効果的に保護する仕組みだと強調した。措置の実効性確保に向け、輸入動向の監視や適切な関税割当の管理、迂回輸出の抑止の必要性を挙げた。また、輸入が鉄鋼を多用する川下製品へ転換することを防ぐため、将来的には川下製品を措置の適用範囲に含めることを検討すべきとした。さらに、国際的な連携強化が過剰生産問題の長期的な解決策となると訴えた。
(注)実施規則の採択にあたり、加盟国の代表者によって構成される委員会が草案について採決する手続き。
(滝澤祥子)
(EU、ブラジル、日本)
ビジネス短信 caaae064a7e8abf0
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EU、鉄鋼セーフガード後継措置が7月1日から適用開始、関税割当量の配分を発表
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/caaae064a7e8abf0.html
時系列
- 2026-04-17 EUの新たな鉄鋼輸入制限措置に係る規則〔(EU)2026/1384〕に関する記事が参照された(適用開始の背景)
- 2026-06-30 欧州委員会が26品目の関税割当量の配分に係る実施規則〔(EU)2026/1457〕を発表
- 2026-07-01 EUの新たな鉄鋼輸入制限措置に係る規則〔(EU)2026/1384〕および実施規則〔(EU)2026/1457〕が適用開始
- 2026-07-01 ブラジル外務省がEUとの合意を否定する声明を発表
- 2026-07-01 欧州鉄鋼連盟(EUROFER)のカール・タシェレ副事務局長が新措置に関する論評を発表
- 2026-12-31 実施規則〔(EU)2026/1457〕の適用期間が終了(最長6カ月間)
- 2026-12-31 欧州委員会が再度、実施規則案を加盟国に送付し、通常のコミトロジー手続きを経て採択予定
主な数値
| 対象品目数 | 26品目 |
|---|---|
| 年間関税割当量 | 1830万トン |
| FTA締結国向け割当量比率 | 50% |
| FTA締結国向け割当量 | 915万トン |
| 共通枠割当量比率 | 50% |
| 国別割当量設定基準(EU輸入市場シェア) | 5%以上 |
| 実施規則の適用期間 | 6カ月間 |
| EUが輸入する鉄鋼製品のFTA締結国からの割合 | 8割 |
この事例から確認すべきポイント
EUによる新たな鉄鋼輸入制限措置は、従来のセーフガード措置からより戦略的な貿易政策への転換を示しています。この措置は、域内鉄鋼産業の保護と脱炭素化投資の維持を目的とし、輸入量を抑制しつつ、FTA締結国への影響を最小限に抑えることを意図しています。FTA締結国向けの優遇枠と共通枠の二段階構造、および主要輸入国に対する国別割当の設定は、保護主義と既存の貿易関係のバランスを取るための工夫です。しかし、ブラジルが合意を否定し、日本やベトナムとも合意に至っていない現状は、国際的な貿易摩擦の可能性と交渉の複雑さを示唆しています。鉄鋼製品をEUに輸出する企業や、鉄鋼を原材料とする企業は、これらの規制の動向、特に一時的な実施規則の後のコミトロジー手続きによる最終決定を注視し、輸出戦略やサプライチェーンへの影響を評価する必要があります。将来的には川下製品への適用拡大も検討されており、広範な影響が予想されます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-13
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