フランス、ヒートポンプ向け付加価値税を軽減、脱炭素化と国内産業育成を後押し
この発表の要点
- フランス政府は空気熱源ヒートポンプの付加価値税を20%から5.5%に軽減した。
- この措置は、建築物部門の脱炭素化、国内産業育成、ヒートポンプ導入促進を目的としている。
- 対象となるヒートポンプには、性能基準、環境要件、デジタル接続機能などの条件が定められている。
企業・自治体への影響
フランス国内でヒートポンプ関連製品を製造・販売する企業、および建築・建設業は、軽減税率の適用により需要増加の恩恵を受ける可能性があります。特に、高性能・低環境負荷の製品を提供する企業は市場競争において優位に立つ機会があります。
対応すべきこと
- フランス市場でヒートポンプ関連事業を展開する企業は、軽減税率の適用条件を詳細に確認する。
- 自社製品が軽減税率の対象となるか評価し、必要に応じて製品戦略やマーケティング戦略を見直す。
- フランスの脱炭素化・電化促進計画の動向を継続的に監視し、事業機会やリスクを特定する。
- 関連する法務・経理部門と連携し、税制変更への対応を検討する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | フランス政府 |
|---|---|
| 業界 | HVAC・空調機器製造業 / 建設業 / エネルギー産業 |
| 発表日 | 2026-08-04 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | フランス |
発表された内容
2026年08月04日
フランス政府は7月18日、一定の条件を満たす空気熱源ヒートポンプ(PAC air/air)に対する付加価値税(TVA)を従来の20%から5.5%へ引き下げた。税率引き下げは2026年財政法第92条に基づく措置で、対象設備の性能基準や環境要件などを定めた7月13日付アレテ(省令)が17日に公布され、翌18日に施行された。家庭や企業によるヒートポンプ導入を促進し、建築物部門の脱炭素化を進め、国内産業育成を後押しする狙いがある。
軽減税率の対象となるのは、建物に恒久的に設置される固定式の冷暖房兼用(リバーシブル)空気熱源ヒートポンプ。定格出力12キロワット(kW)以下の機種については、モノスプリット型でエネルギークラスA++以上、マルチスプリット型でA+以上の性能が求められる。12kW超の機種は、暖房・冷房に関する一定の季節エネルギー効率基準を満たす必要がある。また、EUのフッ素化ガス(Fガス)規則(2023年10月11日記事参照)に適合した低環境負荷の冷媒を使用し、遠隔操作や遠隔管理が可能なデジタル接続機能を備えることも条件となっている。
フランスではヒートポンプ市場が過去数年で急速に拡大した。政府統計(フランス語)によると、国内販売台数は2016年から2023年の間に2.3倍になった。一方で、住宅建設市場の減速などの影響から、2024年には販売台数が前年を下回り、市場成長が一時的に鈍化していた。こうした状況の下、政府は税制優遇を通じてヒートポンプ需要を下支えする考えだ。
また、政府が2026年4月に発表した電化促進計画(2026年4月20日記事参照)では、ヒートポンプは住宅部門の脱炭素化とエネルギー自立の中核技術と位置付けられている。2030年までに国産ヒートポンプの年間設置台数100万台を目指し、新築住宅へのガスボイラー設置禁止と併せて、年間85テラワット時(TWh)分のガス消費を電力へ転換する方針だ。
こうした中、欧州HVAC(暖房・換気・空調)・給湯分野の大手企業であるフランスのグループ・アトランティック(Groupe Atlantic)は2026年5月、日本のパロマを中核とするパロマ・リームホールディングス(PRH)が、フランス政府の承認を経て同社の過半数株式取得手続きを完了したと発表した。PRHも2025年12月、グループ・アトランティックとの間で同社の過半数株式を取得することで合意したと発表していた。
グループ・アトランティックは「フランス政府の承認に際し、PRHは経済・財務省の要請を受け、フランス国内における戦略的事業の保護に関する具体的な確約を行った。これには、研究開発(R&D)機能や知的財産権の維持に加え、フランス国内でのヒートポンプおよびヒートポンプ給湯器の生産拡大、さらにはグループ・アトランティックの雇用と研修拠点の維持が含まれる」ことを明らかにした。
(山崎あき)
(フランス、EU、日本)
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フランス、ヒートポンプ向け付加価値税を軽減、脱炭素化と国内産業育成を後押し
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/97550084aecc7a14.html
時系列
- 2025-12 パロマ・リームホールディングスがグループ・アトランティックとの間で同社の過半数株式を取得することで合意したと発表
- 2026-04 フランス政府が電化促進計画を発表
- 2026-05 グループ・アトランティックがパロマ・リームホールディングスによる過半数株式取得手続き完了を発表
- 2026-07-13 対象設備の性能基準や環境要件などを定めたアレテ(省令)が定められる
- 2026-07-17 アレテ(省令)が公布される
- 2026-07-18 空気熱源ヒートポンプに対する付加価値税(TVA)の軽減税率が施行される
主な数値
| 付加価値税率(旧) | 20% |
|---|---|
| 付加価値税率(新) | 5.5% |
| ヒートポンプ国内販売台数増加率(2016-2023年) | 2.3倍 |
| 2030年までの国産ヒートポンプ年間設置台数目標 | 100万台 |
| ガス消費から電力への転換目標 | 85TWh |
| 対象機種の定格出力上限 | 12kW |
この事例から確認すべきポイント
フランス政府によるヒートポンプ向け付加価値税の軽減は、脱炭素化目標達成と国内産業育成を両立させるための戦略的な政策措置です。市場の一時的な成長鈍化に対応し、税制優遇を通じて需要を喚起することで、電化促進計画の中核技術であるヒートポンプの普及を加速させる狙いがあります。また、外国企業による国内大手企業の買収に際し、研究開発機能や知的財産権の維持、国内生産拡大、雇用・研修拠点の維持といった具体的な確約を求めることで、戦略的産業の保護と国内経済への貢献を確保しようとする政府の強い姿勢がうかがえます。企業は、このような政策動向を注視し、自社の事業戦略やサプライチェーンに与える影響を評価するとともに、フランス市場における事業機会を最大限に活用するための戦略的な投資やパートナーシップを検討する必要があります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-08-04
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