経済・産業トレンド

トランス・サハラ・ガスパイプライン計画、アルジェリア区間が正式着工

アルジェリア、ナイジェリア、ニジェールが共同推進するトランス・サハラ・ガスパイプライン(TSGP)計画のアルジェリア区間工事が、2026年6月4日に正式着工しました。前日の閣僚運営委員会で実現可能性調査報告書が承認されたことを受けたものです。本計画は全長約4,000キロメートルで、ナイジェリア産ガスをニジェール経由でアルジェリアに輸送し、年間200億~300億立方メートルを欧州市場へ供給することを目指します。建設費や資金調達、欧州側の関与など、実現に向けた課題も残されています。

この発表の要点

企業・自治体への影響

エネルギー関連企業、特にガス開発・輸送、インフラ建設、商社、および欧州市場と取引のある企業は、アフリカからのエネルギー供給ルートの多様化と地政学的リスクの変化に注目する必要があります。国際的なエネルギー政策やサプライチェーンに影響を与える可能性があります。

対応すべきこと

対応優先度:  大規模な国際エネルギーインフラプロジェクトの進捗であり、今後のエネルギー市場や地政学に中長期的な影響を与える可能性があるため。

対象部門: 経営者 広報 経理 法務

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 JETRO
業界 エネルギー, インフラ, 石油・ガス
発表日 2026-06-16
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年06月16日

添付資料(252 KB)

アルジェリアのモハメド・アルカブ炭化水素相は6月4日、ナイジェリア、ニジェールの石油・ガス担当閣僚とともに、トランス・サハラ・ガスパイプライン(TSGP)計画のアルジェリア区間工事の開始式を行った。アルジェリア南部アドラル県アウレフ地域での式典には、同計画を共同で推進するアルジェリア国営炭化水素公社ソナトラック、ナイジェリア国営石油会社NNPC、ニジェール国営石油会社ソニデップの代表者も出席した。

今回の着工は、前日にアルジェで開催された第5回TSGP閣僚運営委員会で、英国のコンサルティング会社ペンスペンが取りまとめた実現可能性調査(FS)報告書が共同承認されたことを受けたものだ。本計画は、全長約4,000キロメートルのパイプラインで、ナイジェリア産ガスをニジェール経由でアルジェリアに輸送し(添付資料図参照)、年間200億~300億立方メートルを欧州市場へ供給することを目指す。

TSGPのアルジェリア区間は、ニジェール国境からアルジェリア中部ハッシルメルの国立ガス配分センター(CNDG)までを結ぶ。同区間は既存インフラに沿って整備され、既存の物流・技術インフラを活用しやすいかたちとなる。ハッシルメルでは、CNDGを通じて国内ガス輸送網や既存の輸出インフラに接続する。

アルジェリアでは、ベトナム、イタリア、韓国などから新規需要が相次ぐ一方(2026年3月24日記事、2026年3月27日記事、2026年4月23日記事参照)、国内需要増により炭化水素の輸出余力が縮小している(2026年1月21日付地域・分析レポート参照)。一方、ナイジェリアは世界8位の天然ガス埋蔵量を有し、欧州向けに液化天然ガス(LNG)を輸出している。TSGPは、ナイジェリア産ガスをアルジェリア経由で欧州市場につなぐパイプラインとして、両国にとって戦略的プロジェクトと位置付けられる。

ただし、実現に向けた課題も残る。報道によると、約200億ドル規模とみられる建設費の最終規模やFS報告書の詳細、資金調達の枠組み、欧州側の関与は明らかになっていない。また、ニジェール区間の2027年着工以降の進め方や、ナイジェリア側のアジャオクタ・カドゥナ・カノ(AKK)ガスパイプライン(注1)との具体的な接続方針についても、公式発表では確認できない。

一方、モロッコ政府も、欧州市場向けにナイジェリア・モロッコ・ガスパイプライン(NMGP)計画(注2)を推進している。報道によると、政府間協定(IGA)は2026年中に署名される見通しだ。

(注1)全長約600キロメートルの同パイプラインは、2020年に建設を開始し、2026年中の完工を目指している。報道によると、建設費は28億ドルで、資金面および技術面の課題により工事が遅延していたが、現時点の進捗率は約90%。将来的にTSGPへ接続する構想もあるとされる。
(注2)別名、アフリカ大西洋ガスパイプライン。全長6,000キロメートル超、総額250億ドル規模の同パイプラインは、大西洋岸13カ国を経由し、最終的にマグレブ・ヨーロッパ・ガスパイプライン(MEG)に接続する構想だ。欧州に加え、西アフリカ諸国への供給も想定。報道によると、海底・陸上併用ルートで、最大輸送能力は300億立方メートル。このうち150億立方メートルがモロッコおよび欧州向けとされる。FSおよび基本設計(FEED)は完了しているが、TSGPに比べて高コストで、技術的にも複雑とされる。

(ピエリック・グルニエ)

(アルジェリア、ナイジェリア、ニジェール、モロッコ、欧州)

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ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

トランス・サハラ・ガスパイプライン計画、アルジェリア区間が正式着工

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出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/169c8b2f7d562fc1.html

時系列

主な数値

TSGP計画全長 4000キロメートル
TSGP計画年間供給目標 200億~300億立方メートル
TSGP計画建設費(推定) 200億ドル
AKKガスパイプライン全長 600キロメートル
AKKガスパイプライン建設費 28億ドル
AKKガスパイプライン進捗率 90パーセント
NMGP計画全長 6000キロメートル超
NMGP計画総額 250億ドル
NMGP計画最大輸送能力 300億立方メートル
NMGP計画モロッコ・欧州向け輸送能力 150億立方メートル

この事例から確認すべきポイント

本発表は、アフリカと欧州を結ぶ大規模なエネルギーインフラプロジェクトの進捗を伝えるものです。トランス・サハラ・ガスパイプライン(TSGP)計画のアルジェリア区間着工は、エネルギー供給の多角化と安定化を目指す国際的な動きの一環として注目されます。特に、欧州市場へのガス供給能力を年間200億~300億立方メートルと見込むこの計画は、地政学的リスクやエネルギー安全保障の観点から重要性が高いと言えます。一方で、約200億ドル規模とみられる建設費の最終規模、資金調達の枠組み、欧州側の具体的な関与、ニジェール区間以降の進め方など、多くの詳細が未確定である点も指摘されています。また、モロッコが推進するナイジェリア・モロッコ・ガスパイプライン(NMGP)計画との競合も示唆されており、今後の動向を注視する必要があります。現時点で取得できた本文からは、これらの未確定事項に関する詳細を確認できませんでした。詳細は公式出典をご確認ください。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-06-15

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