経済・産業トレンド 承認

フェロクロム製錬所に対する優遇電力料金を承認

南アフリカの国家エネルギー規制当局(NERSA)は5月29日、サマンコール・クロムやグレンコア・メラフェ・クロム・ベンチャーのフェロクロム製錬所に対し、1キロワット時(kWh)当たり62セントの割引電力料金を承認しました。この決定は、電力公社エスコムの申請と公聴会を経て行われ、契約期間は企業によって異なります。高騰する電気代と国際競争に直面する南アのフェロクロム産業の持続可能性と競争力強化、および約12万人の雇用維持を目的としています。

この発表の要点

企業・自治体への影響

南アフリカでフェロクロム製錬事業を展開する企業や、同国からクロム鉱を輸入しフェロクロムを生産する企業は、電力コストの変動が事業収益に与える影響を再評価する必要があります。特に、製造部門や経理部門は、今回の優遇措置が生産コストに与える具体的な影響を分析し、今後の事業計画に反映させることが求められます。

対応すべきこと

対応優先度:  特定の産業に対する優遇措置であり、直接的な法令期限や行政処分ではないが、関連企業にとっては事業戦略に影響を与える可能性があるため。

対象部門: 経営者 経理

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 南アフリカ共和国 国家エネルギー規制当局(NERSA)
業界 製造業
発表日 2026-06-15
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年06月15日

南アフリカ共和国の国家エネルギー規制当局(NERSA)は5月29日、サマンコール・クロム(Samancor Chrome、注)やグレンコア・メラフェ・クロム・ベンチャー(Glencore–Merafe Chrome Venture)のフェロクロム製錬所に対して1キロワット時(kWh)当たり62セント(約6.0円、1セント=0.01ランド、約0.097円)の割引電力料金を承認した。この承認は、電力公社エスコム(Eskom)が4月10日に提出した申請と、5月25日にNERSAが開催した公聴会および協議を経て決定された。

NERSAの声明によると、契約期間はサマンコール・クロムが5年、グレンコア・メラフェ・クロム・ベンチャーが3年となった。期間の違いの理由は声明で明かされていないが、エスコムは契約の基本条件、価格メカニズム、リスク分担条件などによるものだと説明している。もともとエスコムの工業用顧客向け標準料金である180セント/kWhだったものが、既存の価格協定のハードシップ条項を活用して135.82セント/kWhが適用され、さらに2026年1月には12月までの暫定料金として87.74セント/kWhへの料金引き下げ(35%の減額)が承認されていた。今回の措置により、さらなる割引電気料金が適用されることとなる。

南アのフェロクロム産業は、同国の産業、輸出、鉱業バリューチェーン、雇用などにとって戦略的に重要な存在だ。しかし、国内製錬所は高い電気代などにより、中国の製錬所と競争ができず、業界は困難に直面している。南アには66のフェロクロム製錬所があるが、電気代の高騰や外国製品との競争により、2026年3月時点で稼働しているのは11のみだ。フェロアロイ生産者協会(FAPA)によると、南アは世界のクロム埋蔵量の80%を保有していると推定されている。2001年以降、世界のフェロクロム製錬生産量における南アのシェアは46%減少し、中国のシェアは50%以上拡大している。中国が南アからクロム鉱を輸入し、フェロクロム生産を拡大している構図だ。FAPAの報告書によれば、南アのフェロクロム生産コストの約35~65%が電力で占められている。コシエント・ラモホパ電力エネルギー相は、「今回の優遇電力料金は南アのフェロクロム製錬所の持続可能性と競争力を支援し、雇用維持に貢献する」と述べた。また、同氏によれば、この取り組みは約1万1,500人の直接雇用と、バリューチェーン全体に関わる間接雇用を含む約12万人の雇用を支えることを目指している。

(注)エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)および阪和興業が同社の株式20%を所有している。

(トラスト・ムブトゥンガイ、多崎央)

(南アフリカ共和国)

ビジネス短信 c5ad5bdf1d91a624

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フェロクロム製錬所に対する優遇電力料金を承認

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出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/c5ad5bdf1d91a624.html

時系列

主な数値

割引電力料金 62セント/kWh
サマンコール・クロムの契約期間 5年
グレンコア・メラフェ・クロム・ベンチャーの契約期間 3年
エスコムの工業用顧客向け標準料金 180セント/kWh
既存価格協定適用後の料金 135.82セント/kWh
2026年1月承認の暫定料金 87.74セント/kWh
南アのフェロクロム製錬所総数 66箇所
2026年3月時点の稼働製錬所数 11箇所
南アが保有する世界のクロム埋蔵量 80%
2001年以降の南アのフェロクロム製錬生産量シェア減少率 46%
2001年以降の中国のフェロクロム製錬生産量シェア拡大率 50%以上
フェロクロム生産コストに占める電力の割合 35~65%
支援対象の直接雇用数 11500人
支援対象の総雇用数(直接・間接含む) 120000人

この事例から確認すべきポイント

南アフリカのフェロクロム産業は、世界のクロム埋蔵量の80%を保有する戦略的に重要な基幹産業であるにもかかわらず、高騰する電気代と国際競争の激化により、多くの製錬所が稼働停止に追い込まれている現状が示されています。今回の優遇電力料金の承認は、電力コストが生産コストの35~65%を占めるという事実を踏まえ、産業の競争力維持と約12万人の雇用確保に向けた政府の強い意思表示と評価できます。過去にも段階的な料金引き下げが行われてきた経緯から、この問題が長期にわたる課題であったことが伺えます。本事例は、他国における同様の基幹産業が直面する課題や、政府による産業支援策のあり方を検討する上で重要な示唆を与えます。また、特定の産業に対する優遇措置が、国際貿易や競争環境に与える影響についても注視する必要があるでしょう。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-06-15

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