米議会で移民関連予算が成立、国土安全保障省へ700億ドル割り当て
この発表の要点
- 米国で「セキュア・アメリカ法」が成立し、国土安全保障省(DHS)の移民対策に約700億ドルが割り当てられた。
- 同法は、移民・関税執行局(ICE)と米国税関・国境警備局(CBP)にそれぞれ385億ドルと260億ドルを配分し、聖域都市でのICE活動にも3億5,000万ドルを充てる。
- 法案は財政調整措置により単純過半数で可決され、移民政策を巡る政治的対立と経済的影響が浮き彫りになった。
企業・自治体への影響
米国で事業を展開する企業、特に国際物流、旅行、航空業界は、移民政策の変更が国境管理や税関業務に与える影響を注視する必要がある。また、聖域都市に拠点を置く企業や自治体は、連邦政府との連携強化や、CBP職員撤退による経済的損失のリスクを考慮する必要がある。
対応すべきこと
- 米国における移民政策の動向を継続的に情報収集し、自社の事業への影響を評価する。
- 国際物流や旅行関連事業を展開する企業は、国境管理や税関業務の変更に備え、関連部門と連携して対応計画を検討する。
- 聖域都市に拠点を置く企業は、連邦政府と地方自治体間の連携状況を把握し、潜在的な事業リスクを評価する。
- 関係部門(法務、総務、国際事業部門など)へ本発表の内容を共有し、必要に応じて専門家への相談を検討する。
対応優先度: 中 米国の移民政策に関する大規模な予算措置であり、国際的なビジネス活動や特定の地域経済に中長期的な影響を与える可能性があるため。
対象部門: 経営者 総務 法務 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(JETRO) |
|---|---|
| 発表日 | 2026-06-15 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月15日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月10日、国土安全保障省(DHS)の2029会計年度(2028年10月~2029年9月)までの移民対策関連予算を賄う「セキュア・アメリカ法」案に署名し、同法は成立した。同法は、移民取り締まりや関連活動に総額約700億ドルを割り当てる。具体的には、DHS傘下の移民・関税執行局(ICE)に385億ドル、米国税関・国境警備局(CBP)に260億ドルを割り当てるとともに、マークウェイン・マリンDHS長官の裁量で50億ドルを配分できる。
法案の採決は下院(6月9日)で賛成214、反対212、上院(6月5日)で賛成52、反対47だった。上院では、共和党主導で財政調整措置(注1)を経て審議を進め、通常必要な60票ではなく単純過半数で可決した。投票はおおむね党派に沿ったものとなり、共和党が賛成、民主党が反対した。ただし、共和党のリサ・マコウスキー上院議員(アラスカ州)は、1年ではなく3年間の予算を財政調整措置で可決することは、移民政策に対する議会の監視機能を弱めるとして反対した。
民主党は、1月にミネソタ州ミネアポリスで起きたICEとCBPの捜査官らによる米国市民2人の射殺事件に反発するなど、DHSを巡る予算審議はこれまで難航していた。DHSは4月末に運輸保安局(TSA)などの予算が成立するまで76日間にわたり閉鎖状態となった。ただ、ICEなどは予算から除外されていた。
同法は、地元警察がICEと連携して移民法を執行する移民国籍法(INA)第287(g)条に基づく協定(注2)に参加していない管轄区域を対象としたICEの活動に3億5,000万ドルを割り当てた。多くの場合、この協定を拒否する管轄区域は、「聖域都市(サンクチュアリ・シティー、注3)」だ。トランプ政権は、聖域都市に対して厳しい姿勢を見せており(2025年7月2日記事参照)、マリン長官は、聖域都市の空港における税関業務の有効性を疑問視していた(「フォックス・ニュース」4月6日)。司法省が2025年8月に公表した聖域都市のリストに含まれる地域には18の空港がある。同長官は、これら聖域都市の空港からCBPの職員を撤退させることを示唆しており、これが実行されれば旅行や貿易などで数百億規模ドルの損失が生じると懸念されている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月31日)。一方、ショーン・ダフィー運輸長官は5月の議会公聴会で、この案に反対し、「われわれの政治方針に同意しない州で航空便を停止すべきではない」と述べた。
なお、今回成立した予算案には当初、トランプ氏によるホワイトハウス宴会場建設計画に関わる10億ドルの資金および、政治的迫害の被害者であると主張するトランプ氏の支持者への補償金として18億ドルの資金が盛り込まれていたが、これらの項目は審議の過程で最終的に削除された。
(注1)債務上限や歳出などの予算関連法案について、フィリバスター(議事妨害)を回避し、単純過半数の賛成で可決できる立法手続き。
(注2)ICEは、287(g)条プログラムに基づいて、1,900以上の管轄区域当局と協力協定(MOA)を結んでいる(6月12日時点)。
(注3)連邦移民当局との協力を制限している自治体。ニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市が多い。
(大垣ジャスミン)
(米国)
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米議会で移民関連予算が成立、国土安全保障省へ700億ドル割り当て
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出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/77e0ddc5f4f20311.html
時系列
- 2026-06-05 上院で「セキュア・アメリカ法」案が賛成52、反対47で可決。
- 2026-06-09 下院で「セキュア・アメリカ法」案が賛成214、反対212で可決。
- 2026-06-10 ドナルド・トランプ大統領が「セキュア・アメリカ法」案に署名し、同法が成立。
- 2028-10-01 国土安全保障省(DHS)の2029会計年度が開始(同法が対象とする予算期間の開始)。
主な数値
| 総予算額 | 700億ドル |
|---|---|
| ICEへの割り当て額 | 385億ドル |
| CBPへの割り当て額 | 260億ドル |
| DHS長官裁量配分額 | 50億ドル |
| 下院採決結果 | 賛成214、反対212票 |
| 上院採決結果 | 賛成52、反対47票 |
| 聖域都市関連ICE活動予算 | 3.5億ドル |
| DHS閉鎖期間 | 76日間 |
| 聖域都市リスト内の空港数 | 18箇所 |
| ICE協力協定数 | 1900以上 |
この事例から確認すべきポイント
米国の「セキュア・アメリカ法」の成立は、移民対策への政府の強いコミットメントと、国土安全保障省(DHS)傘下機関への大規模な予算配分を示している。財政調整措置を用いた単純過半数での可決は、移民政策における政治的対立の深さと、迅速な法案成立への強い意図を浮き彫りにする。特に「聖域都市」におけるICE活動への予算割り当ては、連邦政府と地方自治体間の移民法執行における連携のあり方に影響を与え、今後の関係性に注目が集まる。CBP職員の空港からの撤退示唆が旅行や貿易に数百億ドル規模の損失をもたらす可能性が指摘されており、移民政策が経済活動に与える影響の大きさを再認識させる事例である。企業は、米国における移民政策の動向が、サプライチェーン、労働力、国際的なビジネス活動に与える潜在的な影響を注視する必要がある。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-15
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