インド、FTAの活用状況を公表、活用重視へ転換
この発表の要点
- インド政府はFTAの締結数重視から「活用重視」への政策転換を図っている。
- UAEやオーストラリア向けなどで輸出品目数が増加し、原産地証明の簡素化などの利便性向上が進んでいる。
- 英国とのCETAや二重拠出防止協定(DCC)により、サービス分野の連携や約680億円規模のコスト削減が見込まれている。
企業・自治体への影響
インドとの間で物品輸出入やサービス展開、現地拠点を有する企業の経営企画・貿易実務・総務部門に対し、関税優遇措置の適用可能性やコスト削減の機会に影響を与える。
対応すべきこと
- 自社の輸出品目が対象となるFTA(CEPA、ECTA、TEPA、CETA等)の要件を確認する
- 原産地証明の自己申告制度や単一証明書の利用可能性を貿易実務部門で検証する
- インドとの専門人材の往来や二重拠出防止協定(DCC)に関連する社会保険負担の状況を人事・経理部門で確認する
対象部門: 経営者 総務 法務 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | インド政府広報局(PIB) |
|---|---|
| 業界 | 貿易・通商 |
| 発表日 | 2026-09-08 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年09月08日
インド政府広報局(PIB)は8月18日、自由貿易協定(FTA)の活用状況に関する報告を公表した。報告では、FTA締結国・地域向けの輸出実績に加え、輸出品目の拡大、手続き簡素化、サービス・人材移動分野での取り組みなどが紹介された。
これによると、2025年度(2025年4月~2026年3月)のASEAN向け輸出額が384億1,633万ドル、南アジア自由貿易地域(SAFTA)向けが257億7,468万ドルを記録した。国別ではアラブ首長国連邦(UAE)が373億5,911万ドルで最大となり、英国が134億4,419万ドルで続いた(PIBプレスリリース)。世界全体向けの物品・サービス輸出額(FTA以外も含む)は、2025年度は前年度比4.2%増(8,600億9,000万ドル)と堅調に推移する中、インドの通商政策は従来の締結数の拡大から、その活用を重視する段階へとかじを切っている状況だ。
こうした背景の下、FTA締結相手国向けの輸出品目数(タリフライン)も着実に増加している。2022年2月に包括的経済連携協定(CEPA)を締結したUAE向けでは、輸出品目が2025年度に8,053品目となり、2021年度比で6.7%増加した。同様に、2022年4月に経済協力・貿易協定(ECTA)に署名したオーストラリア向けでも、輸出品目は5,668品目と2020年度比で5.0%増となった。品目では、繊維製品、農水産物・加工食品、皮革・履物、ジュエリーなど多岐にわたりその恩恵を受けている。
また、近年締結された協定では、手続き面の大幅な簡素化が進む。欧州自由貿易連合(EFTA)との貿易経済連携協定(TEPA)や英国との包括的経済貿易協定(CETA)では、輸出者による原産地証明の自己申告制度が導入され、オーストラリアとのECTA協定では原産地証明で複数品目の単一証明書利用が認められた。これらの施策を背景に、FTAの利用状況を示す原産地証明書(COO)の発給も拡大している。PIBによると、オーストラリアとのECTAではCOOの発給が進み、関税優遇措置が積極的に活用されているという。また、EFTAとのTEPAでは7,885件のCOOが発給された。こうした利便性の向上が、今後は中小企業の新たな輸出挑戦を後押しすると期待される。
さらに、モノの貿易だけでなく、専門人材の往来やサービス分野の連携も存在感を増している。インド国内の雇用に占めるサービス分野のシェアは約30%に達し、2025年度のサービス輸出は4,213億ドル規模に拡大した。例えば、英国とのCETAでは、IT、金融、医療などの専門人材の移動が円滑化されている。英国との間では、二重の社会保険料負担を防ぐ二重拠出防止協定(Double Contributions Convention Agreement:DCC、注)」が導入され、400億ルピー(約680億円、1ルピー=約1.7円)を超えるコスト削減効果が見込まれる。
現在、インド政府は約10件の協定交渉を並行して進めており、韓国やスリランカとの既存協定のアップグレードも予定しているという。
(注)社会保障拠出金の支払いを調整するための社会保障協定(SSA)の一種。
(外山夏帆)
(インド)
ビジネス短信 9e55dd07e8f53164
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インド、FTAの活用状況を公表、活用重視へ転換
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/09/9e55dd07e8f53164.html
時系列
- 2025-04-01 2025年度(2025年4月~2026年3月)の期間開始
- 2026-08-18 インド政府広報局(PIB)が自由貿易協定(FTA)の活用状況に関する報告を公表
- 2026-09-08 ジェトロビジネス短信にて記事掲載
主な数値
| 2025年度ASEAN向け輸出額 | 384億1,633万ドル |
|---|---|
| 2025年度南アジア自由貿易地域(SAFTA)向け輸出額 | 257億7,468万ドル |
| 2025年度UAE向け輸出額 | 373億5,911万ドル |
| 2025年度英国向け輸出額 | 134億4,419万ドル |
| 2025年度世界全体向けの物品・サービス輸出額の前年度比増加率 | 4.2%増 |
| 2025年度世界全体向けの物品・サービス輸出額 | 8,600億9,000万ドル |
| UAE向け輸出品目数(2025年度) | 8,053品目 |
| UAE向け輸出品目数の2021年度比増加率 | 6.7%増 |
| オーストラリア向け輸出品目数 | 5,668品目 |
| オーストラリア向け輸出品目数の2020年度比増加率 | 5.0%増 |
| EFTAとのTEPAにおけるCOO発給件数 | 7,885件 |
| インド国内の雇用に占めるサービス分野のシェア | 約30% |
| 2025年度のサービス輸出規模 | 4,213億ドル |
| 二重拠出防止協定(DCC)によるコスト削減効果 | 400億ルピー |
| 二重拠出防止協定(DCC)によるコスト削減効果(円換算) | 約680億円 |
| 対ルピーの円レート目安 | 約1.7円 |
| 現在進行中の協定交渉件数 | 約10件 |
この事例から確認すべきポイント
本発表は、インド政府が従来のFTA締結数重視から、実際の活用促進へと通商政策の軸足を転換していることを示している。UAEやオーストラリアとの協定における品目増加や、欧州自由貿易連合(EFTA)との協定における原産地証明の自己申告制度導入、複数品目の単一証明書利用といった手続きの簡素化が進んでいる点が実務上の重要ポイントである。また、サービス分野や専門人材の往来円滑化、二重拠出防止協定(DCC)によるコスト削減など、モノの貿易に留まらない連携強化も図られている。インド市場へ進出あるいは輸出入を行う企業にとっては、各種協定の優遇措置や手続きの変更点をキャッチアップし、サプライチェーンの見直しやコスト削減の機会を検討することが求められる。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-09-08
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