経済・産業トレンド 係争中(保全命令発出中)

イースト・アフリカン・ブリューワリーズ、最高裁に司法の対応迅速化を要求

東アフリカ酒造大手イースト・アフリカン・ブリューワリーズ(EABL)は、アサヒグループによる同社株式取得を巡る訴訟について、ケニア最高裁判所長官に書簡を送付し、司法対応の整理と迅速化を求めました。複数の裁判所で同様の訴えが繰り返される「フォーラムショッピング」が取引を妨げていると懸念を表明。アサヒグループによるEABL株式65%取得計画は4件の法的異議申し立てに直面し、一部は棄却されたものの、新たな訴訟で保全命令が出され、取引完了に向けた行動が禁じられています。

この発表の要点

企業・自治体への影響

国際的なM&Aを検討する企業、特に新興国市場への進出を目指す企業は、対象国の司法制度や訴訟リスクを詳細に評価する必要がある。法務部門や経営層は、予期せぬ法的異議申し立てや「フォーラムショッピング」による取引遅延のリスクを認識し、対応策を講じるべきである。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 法務 広報

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 日本貿易振興機構(ジェトロ)
業界 酒類製造業
発表日 2026-07-03
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年07月03日

現地報道によると、東アフリカ酒造大手イースト・アフリカン・ブリューワリーズ(EABL)は6月23日、ケニア最高裁判所マーサ・クーム長官に書簡を送付し、英酒造大手ディアジオからアサヒグループへの株式売却を巡る一連の訴訟について、司法対応の整理と迅速化を求めた〔「ケニアン・ウォール・ストリート」(6月24日付)などの複数メディア〕。複数の裁判所で同様の申し立てが相次ぐ「フォーラムショッピング(forum shopping、注)」が横行し、取引の進行が妨げられていると強い懸念を表明したという。6月29日時点で、クーム最高裁判所長官が本件について何らかの回答を行ったとの報道は見当たらない。

2025年12月に発表されたアサヒグループによるEABL株式65%の取得計画は、その後4件の法的異議申し立てに直面してきた。流通業者ビア・トシャや建設会社JILK、少数株主・投資家らによる差し止めの申し立てはそれぞれ4月9日、6月18日、22日にナイロビ高等裁判所で退けられたものの、同様の主張を別の裁判所で繰り返す動きが続いている。

また、ナイロビ高裁がJILKの申し立てを棄却した同日に、別の申立人によってマチャコス高等裁判所に新たな訴えが提起された。ケニアの競争当局、ディアジオ・ケニアなど6者を被告とするこの訴訟において、マチャコス高裁は保全命令を出し、当事者全員に対し、取引完了に向けたいかなる行動もとることを禁じた。

アサヒグループによるEABL株式取得は総額約30億ドルにのぼる大型M&Aで、同社にとって初の本格的なアフリカ進出となる。EABLは1922年創業で、ケニア、ウガンダ、タンザニアに展開する東アフリカ最大の酒類企業だ。ケニアでは「タスカー」などでビール市場において圧倒的な地位を占め、ウガンダでも「ベル」、タンザニアでは「セレンゲティ」が主力ブランドとして高いシェアを確保している。

(注)フォーラムショッピング(forum shopping)とは、ある紛争案件について複数の国や地域に裁判管轄が認められる見込みがある場合に、原告が自分に有利な判決が出される可能性がある国の裁判所に訴訟提起する訴訟戦術のことを指す。

(佐藤丈治)

(ケニア、タンザニア、ウガンダ)

ビジネス短信 61acbb658e64fe47

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イースト・アフリカン・ブリューワリーズ、最高裁に司法の対応迅速化を要求

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/61acbb658e64fe47.html

時系列

主な数値

取得株式比率 65%
法的異議申し立て件数 4件
M&A総額 30億ドル
EABL創業年 1922年

この事例から確認すべきポイント

本事例は、国際的なM&Aにおいて、対象国の法制度や司法手続きの複雑性が取引完了に与える影響を示すものです。特に、複数の裁判所で同様の訴訟が提起される「フォーラムショッピング」は、買収側企業にとって予期せぬ遅延やコスト増大のリスクとなります。アサヒグループによるEABL株式取得は大型案件であり、アフリカ市場への本格進出という戦略的意義を持つものの、現地の司法手続きの遅延により、その実現が阻害されている状況がうかがえます。企業は海外M&Aを計画する際、対象国の司法制度に関する詳細なデューデリジェンスを実施し、訴訟リスクやその対応策を事前に検討する必要があるでしょう。また、係争中の状況において、関係当局や司法機関への適切な働きかけが、取引の円滑な進行に寄与する可能性も示唆されます。現時点では保全命令が発出されており、取引完了に向けた行動が禁じられているため、今後の司法判断が注目されます。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-07-03

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