イースト・アフリカン・ブリューワリーズ、最高裁に司法の対応迅速化を要求
この発表の要点
- EABLはアサヒグループによる株式取得を巡る訴訟の迅速化をケニア最高裁に要求した。
- 複数の裁判所で同様の訴訟が繰り返される「フォーラムショッピング」が取引を妨げている。
- マチャコス高裁は取引完了に向けた行動を禁じる保全命令を発出している。
企業・自治体への影響
国際的なM&Aを検討する企業、特に新興国市場への進出を目指す企業は、対象国の司法制度や訴訟リスクを詳細に評価する必要がある。法務部門や経営層は、予期せぬ法的異議申し立てや「フォーラムショッピング」による取引遅延のリスクを認識し、対応策を講じるべきである。
対応すべきこと
- 海外M&Aにおける対象国の司法制度に関するデューデリジェンスを強化する。
- 国際訴訟リスク管理体制を再確認し、フォーラムショッピング等の戦術への対応策を検討する。
- 関係部門(法務、経営企画、広報)へ本事例を共有し、国際取引における法的リスクへの意識を高める。
- 類似の国際取引を検討している場合、現地の法務専門家と連携し、最新の司法動向を注視する。
対象部門: 経営者 法務 広報
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
|---|---|
| 業界 | 酒類製造業 |
| 発表日 | 2026-07-03 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月03日
現地報道によると、東アフリカ酒造大手イースト・アフリカン・ブリューワリーズ(EABL)は6月23日、ケニア最高裁判所マーサ・クーム長官に書簡を送付し、英酒造大手ディアジオからアサヒグループへの株式売却を巡る一連の訴訟について、司法対応の整理と迅速化を求めた〔「ケニアン・ウォール・ストリート」(6月24日付)などの複数メディア〕。複数の裁判所で同様の申し立てが相次ぐ「フォーラムショッピング(forum shopping、注)」が横行し、取引の進行が妨げられていると強い懸念を表明したという。6月29日時点で、クーム最高裁判所長官が本件について何らかの回答を行ったとの報道は見当たらない。
2025年12月に発表されたアサヒグループによるEABL株式65%の取得計画は、その後4件の法的異議申し立てに直面してきた。流通業者ビア・トシャや建設会社JILK、少数株主・投資家らによる差し止めの申し立てはそれぞれ4月9日、6月18日、22日にナイロビ高等裁判所で退けられたものの、同様の主張を別の裁判所で繰り返す動きが続いている。
また、ナイロビ高裁がJILKの申し立てを棄却した同日に、別の申立人によってマチャコス高等裁判所に新たな訴えが提起された。ケニアの競争当局、ディアジオ・ケニアなど6者を被告とするこの訴訟において、マチャコス高裁は保全命令を出し、当事者全員に対し、取引完了に向けたいかなる行動もとることを禁じた。
アサヒグループによるEABL株式取得は総額約30億ドルにのぼる大型M&Aで、同社にとって初の本格的なアフリカ進出となる。EABLは1922年創業で、ケニア、ウガンダ、タンザニアに展開する東アフリカ最大の酒類企業だ。ケニアでは「タスカー」などでビール市場において圧倒的な地位を占め、ウガンダでも「ベル」、タンザニアでは「セレンゲティ」が主力ブランドとして高いシェアを確保している。
(注)フォーラムショッピング(forum shopping)とは、ある紛争案件について複数の国や地域に裁判管轄が認められる見込みがある場合に、原告が自分に有利な判決が出される可能性がある国の裁判所に訴訟提起する訴訟戦術のことを指す。
(佐藤丈治)
(ケニア、タンザニア、ウガンダ)
ビジネス短信 61acbb658e64fe47
関連情報
dummy
もっと見る
ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース
イースト・アフリカン・ブリューワリーズ、最高裁に司法の対応迅速化を要求
ジェトロ公式SNSアカウント
出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/61acbb658e64fe47.html
時系列
- 2025-12 アサヒグループによるEABL株式65%の取得計画が発表された
- 2026-04-09 ナイロビ高等裁判所で流通業者ビア・トシャによる差し止めの申し立てが退けられた
- 2026-06-18 ナイロビ高等裁判所で建設会社JILKによる差し止めの申し立てが退けられた
- 2026-06-18 マチャコス高等裁判所に別の申立人によって新たな訴えが提起され、保全命令が出された
- 2026-06-22 ナイロビ高等裁判所で少数株主・投資家らによる差し止めの申し立てが退けられた
- 2026-06-23 EABLがケニア最高裁判所マーサ・クーム長官に書簡を送付し、司法対応の整理と迅速化を求めた
- 2026-06-29 クーム最高裁判所長官が本件について何らかの回答を行ったとの報道は見当たらない
主な数値
| 取得株式比率 | 65% |
|---|---|
| 法的異議申し立て件数 | 4件 |
| M&A総額 | 30億ドル |
| EABL創業年 | 1922年 |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、国際的なM&Aにおいて、対象国の法制度や司法手続きの複雑性が取引完了に与える影響を示すものです。特に、複数の裁判所で同様の訴訟が提起される「フォーラムショッピング」は、買収側企業にとって予期せぬ遅延やコスト増大のリスクとなります。アサヒグループによるEABL株式取得は大型案件であり、アフリカ市場への本格進出という戦略的意義を持つものの、現地の司法手続きの遅延により、その実現が阻害されている状況がうかがえます。企業は海外M&Aを計画する際、対象国の司法制度に関する詳細なデューデリジェンスを実施し、訴訟リスクやその対応策を事前に検討する必要があるでしょう。また、係争中の状況において、関係当局や司法機関への適切な働きかけが、取引の円滑な進行に寄与する可能性も示唆されます。現時点では保全命令が発出されており、取引完了に向けた行動が禁じられているため、今後の司法判断が注目されます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-03
関連事例
- チリのカスト大統領、コロンビア新大統領と会談、治安協力や地域連携強化を協議
- 米主要港、6月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比0.7%減、関税発効や地政学リスクでピーク到来
- 7月の米雇用統計、新規雇用者数は2万3,000人減少
- 米ゼネラルモーターズ、EVバッテリー事業を韓国サムスンに売却
- 湖南省、対アフリカ経済貿易協力3年アクションプランを発表
自社のプレスリリースをPRazeに掲載しませんか?
無料でプレスリリースを掲載する