AI需要と地政学が迫るエネルギー再編、「グローバル・エネルギー・フォーラム2026」が開催
この発表の要点
- AIデータセンターの電力需要急増と地政学リスクが、世界のエネルギー情勢を大きく再編している。
- 電力供給の強靱化と多様化(再エネ・SMRなど)が喫緊の課題であり、変動性の高い再エネと安定電源の確保が重要視されている。
- 日本企業は海外事業展開において、電力確保、送電網接続、多様な電源選択肢の検討が重要な論点となる。
企業・自治体への影響
エネルギー関連企業(電力、ガス、再生可能エネルギー、原子力、送電網インフラ)、IT企業(データセンター事業者、AI開発企業)、および関連サプライチェーン(変圧器、蓄電池メーカー)は、グローバルなエネルギー政策と市場変動を注視し、事業戦略に反映させる必要があります。特に海外展開を行う日本企業は、電力確保と電源多様化の検討が不可欠です。
対応すべきこと
- 自社の事業におけるAIデータセンター関連の電力需要増加予測を再評価し、電力確保戦略を策定する。
- 地政学リスクがエネルギー調達やサプライチェーンに与える影響を分析し、リスクヘッジ策を検討する。
- 再生可能エネルギー、SMR、大型原子炉、天然ガスなど、多様な電源選択肢のメリット・デメリットを評価し、自社に最適なポートフォリオを検討する。
- 関係部門(経営企画、事業開発、調達、海外事業部門など)と連携し、グローバルなエネルギー情勢変化への対応方針を共有・策定する。
対象部門: 経営者 情シス 経理 広報
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | ジェトロ |
|---|---|
| 業界 | エネルギー / IT・データセンター |
| 発表日 | 2026-06-30 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月30日
ロイター通信主催のグローバル・エネルギー・フォーラムが、6月23~24日にかけてニューヨーク市内で開催され、世界のエネルギー情勢を巡る最新動向が議論された。特に、地政学リスクの高まり、人工知能(AI)向けデータセンター(DC)による電力需要の急増、電化の進展に加え、再生可能エネルギー(再エネ)や小型モジュール炉(SMR)を含むエネルギーの多様化、電力の強靱(きょうじん)化が主要テーマとして挙げられた。DCサプライチェーンや電気など公益事業に関わる企業のみならず、米国、欧州、カナダ政府機関など、多岐にわたる関係者が参加した。
ライトDOE長官へのインタビューの様子(ジェトロ撮影、6月24日)
フォーラムではまず、2026年初頭の米国によるベネズエラへの石油制裁緩和、イラン情勢の急変やホルムズ海峡の供給混乱など、地政学的要因がエネルギー市場に与える影響について議論された(2026年6月19日付地域・分析レポート参照)。ロイターの編集者リズ・ハンプトン氏は「従来以上に外交政策がエネルギー市場を左右する主要因となっている」と指摘し、情報源は、これまでの米国エネルギー省(DOE)や内務省から、ホワイトハウスや国務省へと変化したと指摘した。
地政学的要因に加え、DC電力需要の急拡大は、送電網の接続待機列の増大、変圧器・蓄電池などのサプライチェーンの逼迫を誘引している。米国では2027年までに25年比で2倍のDC電力需要増が見込まれている(注1)。
こうした状況を踏まえ、フォーラムでは電力強靱化の重要性が繰り返し強調された。既存送電網の利用率の向上、デジタルツインやAIを活用した需給予測、電力安定化装置の導入、ブラウンフィールド活用による許認可の迅速化など、各国や企業が取り得る対策が提示された。また、極端気象や地政学リスクに備え、電力供給の「機敏性」そのものが価値を持つとの認識が共有された。
DCのような大規模・常時稼働型負荷に対し、特にSMRは安定供給・立地柔軟性・建設期間の短縮といった利点があり、再エネと組み合わせることで強靱化向上に寄与するとの意見が多く示された(注2)。
再エネについては、コスト上昇やサプライチェーン制約が課題として指摘された一方、AIによる需給予測や系統最適化の進展により、既存インフラから付加価値を引き出せるとの見方が示された。一方で、ゲストとして登壇したDOEのクリス・ライト長官に対し、現政権の再エネ軽視の方向性に関する質問が会場から多く寄せられた。これに対しライト長官は再エネの重要性を認めつつも、「地政学的リスクを含めた危機対応の局面では、変動性の高い再エネだけではなく、安定電源の確保を優先せざるを得ない」との立場を示した。
日本企業にとっても、電力確保、送電網接続、再エネや原子力を含む多様な電源選択肢の検討が、海外事業展開における重要な論点となりつつある。
(注1)DC電力需要拡大については2026年5月22日記事、2026年4月15日記事、2026年3月30日付地域・分析レポート参照。
(注2)一方でSMRの商業化には一定の期間を要するため、短期的には大型原子炉や天然ガスが安定電源となる(2026年6月29日記事参照)。
(久峨喜美子)
(米国)
ビジネス短信 0772547ec97136d9
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AI需要と地政学が迫るエネルギー再編、「グローバル・エネルギー・フォーラム2026」が開催
ジェトロ公式SNSアカウント
出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/0772547ec97136d9.html
時系列
- 2026-06-23 グローバル・エネルギー・フォーラム2026がニューヨーク市内で開催開始
- 2026-06-24 グローバル・エネルギー・フォーラム2026がニューヨーク市内で開催終了
- 2026-06-30 本記事が発表
主な数値
| DC電力需要増(米国) | 2倍 |
|---|
この事例から確認すべきポイント
本発表は、AI需要と地政学リスクがエネルギー市場に与える複合的な影響を明確に示しており、企業はこれらを単一の課題としてではなく、相互に関連する戦略的リスクとして捉える必要があります。特に、データセンターを運用するIT企業や、電力供給に関わる公益事業、エネルギー関連のサプライチェーン企業は、電力確保と送電網の強靱化に向けた投資や技術開発の動向を注視すべきです。また、外交政策がエネルギー市場を左右する主要因となっているとの指摘は、企業がエネルギー戦略を策定する上で、従来のエネルギー省庁だけでなく、ホワイトハウスや国務省といったより広範な政府機関の動向を情報源として考慮する必要があることを示唆しています。極端気象や地政学リスクに備えた電力供給の「機敏性」の価値、そしてSMRや再エネを組み合わせた多様な電源選択肢の検討は、事業継続計画(BCP)やリスクマネジメントの観点からも重要です。日本企業が海外事業を展開する上では、現地の電力事情や政策動向を深く理解し、安定した電力供給を確保するための戦略的なアプローチが不可欠となります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-30
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