トランプ米大統領、国家量子戦略の更新などを定めた大統領令を発表
この発表の要点
- 米国は量子情報科学技術(QIST)における技術的優位性維持とエコシステム主導を目指す大統領令を発表した。
- 大統領令は、国家量子戦略の更新、量子コンピューティングの活用、サプライチェーン強化、人材拡充、国際連携を指示している。
- 量子技術の進展に伴うサイバーセキュリティリスクへの対応も同時に指示され、関連企業への巨額助成も継続している。
企業・自治体への影響
量子技術関連の研究開発、製造、サービス提供を行う企業は、米国の政策動向や助成制度、国際連携の機会を注視し、事業戦略に反映させる必要があります。特に、サプライチェーンに関わる企業や、サイバーセキュリティ対策を担う企業は、新たな技術標準や規制動向への対応が求められます。
対応すべきこと
- 米国の量子技術関連政策の最新動向を継続的に情報収集する。
- 自社の事業が量子技術のサプライチェーンや応用分野に該当するか確認する。
- 関連する研究開発部門や国際事業部門へ本発表内容を共有し、戦略策定に役立てる。
- サイバーセキュリティ部門は、量子コンピュータの進展がもたらす新たな脅威と対策について情報収集を開始する。
対象部門: 経営者 法務 情シス 経理
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 米国政府 |
|---|---|
| 業界 | 科学技術 |
| 発表日 | 2026-06-22 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月24日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月22日、量子技術における米国のイノベーションを促進するとともに、国家安全保障を強化するための大統領令を発表した。同日発表したファクトシートでは、「量子技術を利用して米国の経済および国家安全保障を損なおうとする敵対国」がいるなどと危機感を示した。
大統領令では、「量子情報科学技術(QIST)は、米国のイノベーションを推進し、経済成長を牽引するとともに、高賃金の雇用を創出し、国家安全保障を強化する変革的な能力をもたらす」とした上で、米国がQISTにおいて技術的優位性を維持し、研究、製造、商用化、応用において量子エコシステムを主導するための措置をとるよう関係閣僚に指示した。主な内容は次のとおり。
国家量子戦略の更新:本大統領令の発令から180日以内に、科学技術担当大統領補佐官(APST)は、国家量子戦略に、QISTの商用化の促進、量子基盤技術エコシステムの支援、米国産業界とのパートナーシップの促進といった内容を含むよう更新する(注1)。
科学応用に向けた量子コンピューティングの活用:APST主導の下、科学的発見を目的とした量子コンピュータの開発を追求する「応用開発および発見科学のための量子コンピュータ(QC-ADDS)」イニシアチブを設立する。同イニシアチブの下、少なくとも当該規格を満たすコンピュータ1台をエネルギー省の施設に設置する。
量子サプライチェーンの米国内エコシステムの強化:商務長官は、民間部門によるQIST関連規格の採用促進、QIST関連製品の製造上の課題解消につながる研究開発の支援などにより、エコシステムを強化するための計画を策定する。
量子分野の人材拡充および確保:本大統領令から90日以内に、人事管理局(OPM)局長は、政府全体にわたるQIST人材の採用・定着戦略を策定する。
国際パートナーとの連携:国務長官および商務長官は、同盟国などと協力して、米国の量子関連企業による海外市場へのアクセス確保、投資規制の調和を通じた国際エコシステムの維持、輸出管理政策の調和を通じた懸念国による関連技術の取得防止などを行う。また商務長官は、米国のQIST企業の競争力を制限する外国の貿易障壁、差別的待遇などへの対処方法を提言する。国務長官は、本大統領令から120日以内に、「パックス・シリカ」(注2)を含む各国との協力枠組みと、本大統領令の方針をどう整合させるかについて提言する。
なおトランプ氏は同日、量子コンピュータが稼働すればサイバーセキュリティーのリスクも高まるとして、国家の機密データ、重要インフラ、デジタル経済に対する暗号保護を強化するための措置を指示した大統領令も発表した。ファクトシートも併せて発表している。
トランプ政権は量子分野の政策を強化しており、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づき、5月には量子コンピューティングに関係する米国内企業9社に対し総額20億1,300万ドルを、6月には人工知能(AI)や量子暗号技術によるソリューションを扱うスタートアップのサンドボックスAQに5億ドルを助成すると発表している(2026年6月19日記事参照)。
(注1)米国ではトランプ政権1期目の2018年に、量子分野における初めての国家戦略が策定されるとともに、「国家量子イニシアチブ法」が成立した(2026年3月13日付地域・分析レポート参照)。
(注2)パックス・シリカは2025年12月に米国が立ち上げた、同盟・パートナー国の経済安全保障上の連携のための枠組み。AIの進化によって重要鉱物や関連インフラなどの需要が増加し、サプライチェーン再編が進むとの認識の下、敵対国への依存軽減や新技術の確保、機密度の高い技術の保護といった領域での連携を目標としている。国務省は、パックスシリカサミットを6月25~26日に開催すると発表している。
(赤平大寿)
(米国)
ビジネス短信 2263b0d4f1d97951
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トランプ米大統領、国家量子戦略の更新などを定めた大統領令を発表
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/2263b0d4f1d97951.html
時系列
- 2018-XX-XX トランプ政権1期目に量子分野初の国家戦略が策定され、「国家量子イニシアチブ法」が成立
- 2025-12-XX 米国が同盟・パートナー国の経済安全保障上の連携のための枠組み「パックス・シリカ」を立ち上げ
- 2026-05-XX CHIPSおよび科学法に基づき、量子コンピューティングに関係する米国内企業9社に対し総額20億1,300万ドルの助成を発表
- 2026-06-XX CHIPSおよび科学法に基づき、AIや量子暗号技術によるソリューションを扱うスタートアップのサンドボックスAQに5億ドルの助成を発表
- 2026-06-22 ドナルド・トランプ大統領が量子技術における米国のイノベーション促進と国家安全保障強化のための大統領令を発表
- 2026-06-22 トランプ大統領が、国家の機密データ、重要インフラ、デジタル経済に対する暗号保護を強化するための措置を指示した大統領令も発表
- 2026-06-24 本記事が発表
- 2026-06-25 国務省がパックスシリカサミットを開催
- 2026-06-26 国務省がパックスシリカサミットを開催
- 2026-12-19 科学技術担当大統領補佐官(APST)が国家量子戦略を更新する期限(大統領令発令から180日以内)
- 2026-09-20 人事管理局(OPM)局長が政府全体にわたるQIST人材の採用・定着戦略を策定する期限(大統領令から90日以内)
- 2026-10-20 国務長官が協力枠組みと大統領令の方針の整合性について提言する期限(大統領令から120日以内)
主な数値
| 量子コンピューティング関連企業への助成総額 | 20億1,300万ドル |
|---|---|
| サンドボックスAQへの助成額 | 5億ドル |
| 国家量子戦略更新の期限 | 180日以内 |
| QIST人材戦略策定の期限 | 90日以内 |
| 国務長官の提言期限 | 120日以内 |
この事例から確認すべきポイント
米国政府が量子情報科学技術(QIST)分野における国際的な優位性を確保し、国家安全保障と経済成長を同時に推進するための包括的な戦略を示した大統領令です。この大統領令は、研究開発、サプライチェーンの強化、人材育成、国際連携といった多角的なアプローチを指示しており、特に量子技術を悪用しようとする敵対国への危機感が背景にあります。同時に、量子コンピューティングの進展がもたらすサイバーセキュリティリスクへの対応も指示されており、技術革新に伴う新たな脅威への認識の高さが伺えます。CHIPSプラス法に基づく巨額の助成金発表と合わせ、米国がこの戦略分野に集中的な投資を行っていることが明確です。企業は、米国の政策動向を注視し、関連する研究開発やサプライチェーン戦略の見直し、国際連携の機会を積極的に探る必要があります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-24
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