「World Hydrogen Summit 2026」で水素需要創出巡り議論
この発表の要点
- EUはエネルギー安全保障の観点から水素を含む再生可能エネルギーの促進を重視している。
- EU加盟国間ではRFNBO目標の国内法化に遅れがあり、特に産業部門での目標設定やグリーン水素のコスト競争力に課題がある。
- 2030年以降の目標の不明確さが投資判断の障壁となっており、EUレベルでの政策明確化と域内生産・輸入パートナーシップの構築が求められている。
企業・自治体への影響
水素関連事業を展開する企業は、EUの政策動向、特にRFNBO目標の国内法化状況や支援策を注視し、長期的な投資判断に資する政策の明確化を求める必要がある。グリーン水素のコスト競争力向上とサプライチェーン構築が喫緊の課題となる。自治体は、地域のエネルギー政策や産業振興において、EUの先行事例や課題を参考に、水素導入の可能性を検討する際の材料とできる。
対応すべきこと
- EUの水素政策、特にRFNBO目標の国内法化状況と支援策に関する最新情報を継続的に収集する。
- 自社の事業が関連するEU加盟国における水素関連法規や補助金制度の詳細を確認する。
- 水素の生産、供給、利用に関わる部門(研究開発、製造、営業、経営企画など)へ本発表の内容を共有し、事業戦略への影響を検討する。
- グリーン水素のコスト競争力向上に向けた技術開発や、国際的なサプライチェーン構築の可能性を調査する。
対応優先度: 中 EUの水素政策動向と市場の課題に関する情報であり、中長期的な事業戦略に影響を与える可能性があるため。
対象部門: 経営者 広報 経理 法務
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(JETRO) |
|---|---|
| 業界 | エネルギー |
| 発表日 | 2026-06-18 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月18日
世界最大級の水素関連展示会「WORLD HYDROGEN SUMMIT&EXHIBITION 2026」が5月19~21日、オランダ・ロッテルダムで開催された(2026年6月4日記事参照)。エネルギー安全保障の観点から注目が高まる水素を巡って、政府および産業界の間で水素市場の課題である需要創出などの議論が行われた。
基調講演で欧州委員会エネルギー総局の上級顧問は冒頭、中東情勢の影響によりEUの化石燃料輸入コストは約250億ユーロ以上増加しており(2026年4月17日記事参照)、この追加額はEUがこれまで水素分野に投じてきた公的資金総額を上回ると強調した。化石燃料依存が続く限り同様のリスクがあるとし、エネルギー安全保障の観点から、水素を含めた再生可能エネルギー(再エネ)の促進策を紹介。一例として、水素プラットフォーム(注1)の第1ラウンドでは、265件の供給案件に対し、10加盟国から45件のオフテイク案件が登録され、供給案件の87%が少なくとも1件、半数が3件以上の関心表明を受けたことが紹介された。
再エネ指令改正法(2023年9月20日記事参照)に基づく水素政策の実装に向けたセッションでは、ブルームバークNEFの水素アナリストが、国内法化期限から1年が経過した現在も、RFNBO(注2)目標を輸送部門および/または産業部門において国内法化した加盟国は13にとどまると指摘した(注3)。輸送部門ではEU目標を上回る国もあるが、多くの加盟国で産業部門の目標が設定されていない現状を紹介した。オランダ経済・気候政策省の気候・エネルギー総局長は、産業部門における最終消費者への義務付けの難しさに加え、グリーン水素のコスト競争力不足や価格転嫁の困難さを指摘した。さらに、2030年以降の目標が不明確な中で、加盟国ごとに制度設計が分かれることは、単一市場の障壁となり得るとして、EUレベルでの明確化を求めた。ドイツ連邦経済・エネルギー省の水素・ガスインフラ局副局長は、企業は2030年までの目標では投資判断を行えないことから、輸送部門について2040年までのRFNBO目標を設定し、当初の8%から10%へ引き上げた上で法制化した経緯を説明。産業部門に関しては、「EU目標は極めて達成が難しいという現実を認識する必要がある」とし、補助金や値差支援などの支援策を通じ対応していく考えを示した。ブルームバークNEFは、2040年に年間約340万トンのグリーン水素需要が創出されると見込む一方、これを国内供給で賄えるのはポルトガルとデンマークに限られると指摘。このため、域内生産・需要拡大の支援策と輸入先とのパートナーシップの構築が必要とした。
(注1)域内市場で水素需給の透明性を向上させ、供給事業者とオフテイカー(引き取り手)のマッチングを支援する仕組み。
(注2)グリーン水素を主体とする非バイオ由来の再生可能燃料。
(注3)ラトビア、スロベニア、ハンガリー、デンマーク、チェコ、スロバキア、フィンランド、リトアニア、ルーマニア、オランダ、イタリア、エストニア、ドイツ。うち産業部門も国内法化に含めたのはスロベニア、チェコ、スロバキア、リトアニア、ルーマニア、イタリアの6カ国。
(梅田健太郎、薮中愛子)
(EU、オランダ)
ビジネス短信 f04c05c4f5306926
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「World Hydrogen Summit 2026」で水素需要創出巡り議論
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出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/f04c05c4f5306926.html
時系列
- 2026-05-19 WORLD HYDROGEN SUMMIT&EXHIBITION 2026がオランダ・ロッテルダムで開催開始
- 2026-06-18 本記事が発表
主な数値
| EUの化石燃料輸入コスト増加額 | 250億ユーロ以上 |
|---|---|
| 水素プラットフォームの供給案件数 | 265件 |
| 水素プラットフォームのオフテイク案件数 | 45件 |
| 水素プラットフォームのオフテイク案件登録加盟国数 | 10カ国 |
| 水素プラットフォームで1件以上の関心表明を受けた供給案件の割合 | 87% |
| 水素プラットフォームで3件以上の関心表明を受けた供給案件の割合 | 半数割合 |
| RFNBO目標を国内法化した加盟国数 | 13カ国 |
| RFNBO目標を産業部門で国内法化した加盟国数 | 6カ国 |
| ドイツの輸送部門RFNBO目標(2040年) | 10% |
| ドイツの輸送部門RFNBO当初目標(2040年) | 8% |
| 2040年のグリーン水素需要予測 | 340万トン |
この事例から確認すべきポイント
本発表は、水素市場の発展における政策と実務の乖離を浮き彫りにしています。エネルギー安全保障の観点から水素への期待が高まる一方で、EU加盟国間でのRFNBO目標の国内法化の遅れや、特に産業部門における目標設定の困難さが課題です。グリーン水素のコスト競争力不足や価格転嫁の難しさ、そして2030年以降の目標の不明確さは、企業が長期的な投資判断を下す上での大きな障壁となっています。ドイツの事例のように、企業が投資しやすいよう2040年までの目標設定や支援策が不可欠であり、EUレベルでの政策の明確化と統一が求められます。将来的な需要予測は大きいものの、国内供給だけでは賄えないため、域内生産支援と国際的なパートナーシップ構築がビジネス戦略上重要となるでしょう。企業は、政策動向を注視し、支援制度の活用やサプライチェーン構築を検討する必要があります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-18
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