EUの産業加速法案や英国製電気自動車に対する関税に関し英国自動車業界団体が警鐘
この発表の要点
- 英国自動車業界はZEV目標達成に遅れが見られ、2027年以降の目標値と現状の販売比率に大きな乖離がある。
- EU産業加速法案と2027年1月からの英国製EVへの10%関税により、英国自動車業界はEU市場での競争力低下と約14億ポンドの関税負担増に直面する懸念がある。
- SMMTは、ZEVマンデート改革、公正な貿易確保、エネルギー・事業コスト削減を英国政府への緊急対策として提言している。
企業・自治体への影響
英国の自動車メーカー、部品サプライヤー、販売・流通業者など、自動車産業に関わる企業は、ZEV目標達成に向けた戦略の見直し、EU市場での競争力維持のための対策、および関税や高コスト環境への対応が求められる。特に、EV関連事業や国際貿易部門、経営戦略部門に直接的な影響がある。
対応すべきこと
- 英国およびEUの自動車関連政策(ZEVマンデート、IAA、原産地規則)の動向を継続的に監視し、自社事業への影響を評価する。
- 2027年1月以降の関税適用によるコスト増を織り込み、サプライチェーン、生産拠点、価格戦略の見直しを検討する。
- 高騰するエネルギーコストや人件費に対応するため、生産効率向上やコスト削減策を具体的に検討・実施する。
- 関連する業界団体(SMMTなど)の提言や政府との対話に注目し、情報収集と必要に応じた意見表明を行う。
対象部門: 経営者 広報 経理 法務 総務
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 英国自動車製造者販売者協会(SMMT) |
|---|---|
| 業界 | 自動車 |
| 発表日 | 2026-07-07 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | 英国 |
発表された内容
2026年07月07日
英国自動車製造者販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は6月30日、ロンドンで開催された「SMMT国際自動車サミット」で講演し、英国の自動車業界はコストの高騰、世界的な保護主義、投資撤退リスクを背景に緊急の対策が必要だと述べた。同日発表されたSMMTの「第2回英国自動車ビジネスリーダー・バロメーター」(調査、注)の結果に基づき、ゼロエミッション車(ZEV)の販売割合義務付け(ZEVマンデート、2025年4月15日記事参照)の改革、英国とEU間の公正な貿易の確保、エネルギーコスト・事業コストの削減という3つの課題を指摘した。
中でも「最も差し迫った懸念」はZEVマンデートであり、調査に回答した英国の自動車業界企業経営者全員が、英国は2030年のZEV目標達成に必要なペースより遅れていると回答。2027年1月以降、BEV(バッテリー式電気自動車)の乗用車販売全体に占める比率の年間目標が乗用車は38%、バンは34%に、2028年にはさらに52%と46%へと引き上げられるが、現在のBEV販売比率は、乗用車で23.9%、バンで9.5%と、需要と目標との乖離(かいり)が大きいと強調した。
また、EUが提案した産業加速法案(IAA、2026年3月13日記事参照)が実施された場合、「EU内組み立て(assembled in the EU)」として英国製品への適用除外をEU側が認めない限り、英国の自動車業界は最大の販売先である欧州市場の大部分で競争力を失いかねないと警鐘を鳴らした。さらに、EU離脱後のEU・英国間の通商・協力協定(TCA)での原産地規則の緩和措置(2023年12月22日記事参照)が終了する2027年1月以降、英国製のBEVやプラグインハイブリッド車などの約70%に対し、10%の関税が課されるという。解決策がなかった場合、推計で電気自動車(EV)業界は2027年単年で約14億ポンド(約3,010億円、1ポンド=約215円)の関税負担増に直面し、重要モデルの多くが競争力を失い、EU・英国間の同モデル貿易額の164億ポンドが危機にさらされると指摘した。また、コストの高騰については、回答者の93.5%は過去1年間で人件費が上昇した、84.8%は生産に必要な投入コストが上昇したと回答した。英国のエネルギーコストは欧州で最も高い水準にあり、英国産業競争力強化スキーム(BICS、2026年4月22日記事参照)が適用されたとしても、依然としてEU平均価格を約60%上回るとみられ、さらなるエネルギーコスト対策を求めている。
(注)2026年5月1日~6月2日に実施。英国の完成車メーカー、サプライヤー、小売り・流通などの自動車関連事業者の経営者50人が回答。回答企業の総売上高は940億ポンド、総従業員数は11万3,000人に上り、英国の自動車生産の98.4%を占める。
(森詩織)
(英国、EU)
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EUの産業加速法案や英国製電気自動車に対する関税に関し英国自動車業界団体が警鐘
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/51aabfa1e6d751be.html
時系列
- 2023-12-22 EU離脱後のEU・英国間の通商・協力協定(TCA)での原産地規則の緩和措置に関する記事参照日
- 2025-04-15 ゼロエミッション車(ZEV)の販売割合義務付け(ZEVマンデート)に関する記事参照日
- 2026-03-13 EUが提案した産業加速法案(IAA)に関する記事参照日
- 2026-04-22 英国産業競争力強化スキーム(BICS)に関する記事参照日
- 2026-05-01 SMMT「第2回英国自動車ビジネスリーダー・バロメーター」調査開始
- 2026-06-02 SMMT「第2回英国自動車ビジネスリーダー・バロメーター」調査終了
- 2026-06-30 ロンドンで開催された「SMMT国際自動車サミット」でマイク・ホーズ会長が講演し、SMMTの調査結果を発表
- 2026-07-07 本発表日
- 2027-01-01 BEV乗用車販売全体に占める比率の年間目標が乗用車38%、バン34%に引き上げられる予定。EU・英国間の通商・協力協定(TCA)での原産地規則の緩和措置が終了し、英国製BEVやプラグインハイブリッド車などの約70%に対し10%の関税が課される予定
- 2028-01-01 BEV乗用車販売全体に占める比率の年間目標が乗用車52%、バン46%に引き上げられる予定
- 2030-01-01 英国のZEV目標達成期限
主な数値
| ZEVマンデート 乗用車目標 (2027年1月以降) | 38% |
|---|---|
| ZEVマンデート バン目標 (2027年1月以降) | 34% |
| ZEVマンデート 乗用車目標 (2028年) | 52% |
| ZEVマンデート バン目標 (2028年) | 46% |
| 現在のBEV販売比率 乗用車 | 23.9% |
| 現在のBEV販売比率 バン | 9.5% |
| 関税率 (2027年1月以降) | 10% |
| 関税対象の英国製BEV・PHV割合 | 約70% |
| EV業界の関税負担増推計 (2027年単年) | 約14億ポンド |
| 危機にさらされるEU・英国間同モデル貿易額 | 164億ポンド |
| 人件費上昇回答者割合 | 93.5% |
| 生産に必要な投入コスト上昇回答者割合 | 84.8% |
| 英国エネルギーコストのEU平均比 | 約60%上回る |
| 調査回答者数 | 50人 |
| 調査回答企業の総売上高 | 940億ポンド |
| 調査回答企業の総従業員数 | 11万3,000人 |
| 調査回答企業が占める英国自動車生産割合 | 98.4% |
この事例から確認すべきポイント
英国自動車製造者販売者協会(SMMT)の発表は、英国自動車業界が直面する複合的な課題を浮き彫りにしている。ゼロエミッション車(ZEV)販売目標の達成遅延は、国内政策の現実との乖離を示唆し、今後の規制強化への対応が急務であることを示唆する。また、EUの産業加速法案や2027年1月からの関税適用は、英国の主要輸出市場であるEUにおける競争力を著しく低下させる可能性があり、サプライチェーンや生産拠点の見直しを迫る要因となる。さらに、高止まりするエネルギーコストや人件費・投入コストの上昇は、業界全体の収益性を圧迫し、投資撤退リスクを高める。これらの課題は、英国自動車業界が国際的な競争環境で生き残るための抜本的な対策と政府支援の必要性を強く訴えている。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-07
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