経済・産業トレンド

フランス、脱炭素水素の生産支援制度で初の採択案件を発表

フランス政府は、脱炭素水素生産支援制度の初回公募において、合計161.4メガワットの水電解能力を持つ3件のプロジェクトを採択したと発表しました。これは、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた国家水素戦略の中核施策であり、製造業向け脱炭素水素の生産拡大に約40億ユーロを投入する計画の一環です。採択されたプロジェクトは化学、鉄鋼、肥料分野に関連し、総額7億7,800万ユーロが最長15年間にわたり支援されます。

この発表の要点

企業・自治体への影響

本発表は、フランス国内の製造業、特に化学、鉄鋼、肥料分野の企業に対し、脱炭素化への投資インセンティブを提供します。水素関連技術や設備を提供する企業にとっては、フランス市場での新たな事業機会が生まれる可能性があります。また、エネルギー部門やサプライチェーン全体にも中長期的な影響を及ぼします。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 経理 法務 広報

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 フランス政府
業界 製造業(化学、鉄鋼、肥料)
発表日 2026-07-22
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年08月04日

フランス政府は7月22日、脱炭素水素(注)の生産支援制度について、初回公募で採択した3件のプロジェクトを発表した。合計161.4メガワット(MW)の水電解能力が支援対象となった。政府が掲げる1ギガワット(GW)の水電解設備導入目標に向けた第一歩となる。

フランスは2025年4月に改定した国家水素戦略(2025年4月28日記事参照)において、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、産業の脱炭素化と水素技術の発展を柱とする方針を再確認している。今回の支援制度はその中核施策の1つで、製造業向け脱炭素水素の生産拡大に向けて約40億ユーロを投入する。

同制度では、脱炭素水素と天然ガス由来の水素とのコスト差を最長15年間補填(ほてん)することで事業者の投資を後押しする。対象は輸送・製油部門を除く産業用途で、脱炭素水素を基盤とした新たな産業バリューチェーンの形成を促す。

初回公募では次の3件のプロジェクトを採択し、総額7億7,800万ユーロを15年間にわたり支援する。今回採択された案件は化学、鉄鋼、肥料分野に関連するものとなった。

「イドロゼール(HydroZère)」プロジェクトは、仏エネルギー大手エンジー傘下のエンジー・ソリューションズH2が南部ロゼール県で進める5MWの水電解プロジェクト。鉄鋼大手アルセロール・ミタルの製鉄所に脱炭素水素を供給し、従来の天然ガス由来水素を代替する。

「エム・ローヌ(eM-Rhône)」プロジェクトは、水素・合成燃料製造のエリス・エナジー(Elyse Energy)が南東部イゼール県で進める脱炭素メタノール製造プロジェクト。同社の水電解設備で生産した脱炭素水素と、建設資材ラファルジュ(Lafarge)のセメント工場から回収した二酸化炭素(CO2)を原料にメタノールを合成する。メタノールは化学原料に加え、船舶燃料や航空向け合成燃料の原料として利用される。設備全体の水電解能力は210MWだが、このうち化学用途向けメタノール生産に充てる61.1MW分のみが産業向け脱炭素水素生産支援制度の対象となる。

「フェルティソンム(FertHySomme)」は、肥料メーカーのフェルティハイ(FertigHy)が北部ソンム県で進める低炭素窒素肥料の製造プロジェクト。将来的に200MWの水電解能力を計画しているが、このうち95.3MW分が今回の支援制度の対象となった。電解装置で製造した脱炭素水素を原料にアンモニアを合成し、さらに硝酸アンモニウム肥料へ加工する。アンモニアは窒素肥料の基礎原料だが、通常は天然ガス由来の水素を用いて生産されるためCO2排出量が大きい。政府は同プロジェクトを、脱炭素水素由来のアンモニアから低炭素窒素肥料を生産する国内初の取り組みと位置付ける。肥料の輸入依存低減や食料・農業主権の強化につながることを期待している。

(注)フランス政府は脱炭素水素について、「低炭素電力または再生可能電力を利用し、水の電気分解によって製造できる水素」と説明している。

(山崎あき)

(フランス)

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フランス、脱炭素水素の生産支援制度で初の採択案件を発表

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/20ffdc41c7bdbfda.html

時系列

主な数値

初回公募採択プロジェクト数 3件
初回公募支援対象水電解能力合計 161.4MW
政府目標水電解設備導入 1GW
支援制度投入総額 40億ユーロ
初回公募支援総額 7.78億ユーロ
支援期間 15年間
イドロゼールプロジェクト水電解能力 5MW
エム・ローヌプロジェクト対象水電解能力 61.1MW
フェルティソンムプロジェクト対象水電解能力 95.3MW

この事例から確認すべきポイント

フランス政府による脱炭素水素生産支援制度の初回公募結果は、同国の2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた具体的な産業政策の進展を示すものです。約40億ユーロの巨額な予算と最長15年間のコスト差補填という長期的な支援は、水素関連技術への大規模な投資を促し、産業構造の変革を加速させる意図が明確です。特に、化学、鉄鋼、肥料といったCO2排出量の多い基幹産業を対象とすることで、産業全体の脱炭素化と新たなバリューチェーンの構築を目指しています。今回の採択案件は、水素製造から利用までの具体的なサプライチェーン構築を伴うものであり、今後の追加公募や他産業への波及効果が注目されます。日本企業にとっても、フランス市場における水素関連ビジネスの機会や、同様の政策動向が他国に与える影響を注視する上で重要な事例となります。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-08-04

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