経済・産業トレンド

EU政策のEPCが経済安全保障フォーラム開催、対中・対米関係とASEANを含むパートナー多角化を協議

ベルギーの欧州政策センター(EPC)が6月4〜5日にブリュッセルで開催した経済安全保障フォーラムの概要。貿易戦争や輸出規制による世界経済の危機感や、最恵国待遇原則に基づく貿易割合の縮小、対中・対米関係における強靭性強化、サプライチェーンの多角化、ASEANとの連携について議論された内容が報告されている。

この発表の要点

企業・自治体への影響

グローバルに事業を展開する製造業や商社などの経営企画・調達・法務部門に対し、米中関係や対EU貿易における地政学リスク、およびサプライチェーン見直しの必要性に関する影響を及ぼします。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 総務 法務 広報 経理

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 日本貿易振興機構(ジェトロ) / 欧州政策センター(EPC)
業界 国際経済・シンクタンク
発表日 2026-06-18
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年06月18日

添付資料(321 KB)

EU政策を専門とするベルギーのシンクタンク、欧州政策センター(EPC)は6月4~5日、ブリュッセルで経済安全保障フォーラムを開催した。冒頭、貿易戦争や輸出規制、サプライチェーンの混乱により世界経済システムは危機的状況に直面している中、2025年の貿易において約70%は最恵国待遇の原則に基づいて行われている点を紹介。例年の同80%からは縮小したものの、世界経済システムは維持されているとした。経済安全保障の強化は、経済の分断を加速させ得る中、EUの対中・対米関係やエネルギー、デジタル・イノベーション分野などにおいて、いかに強靭(きょうじん)性を高めつつ、パートナーの多角化を進めていくかが主な論点として議論された。

対米関係については、オランダ半導体製造装置大手ASMLの地政学・対外政策担当責任者セバスチャン・レイン氏は、米国との相互依存関係は産業の実態に根差した「現実であり、かつ望ましい関係」で不可分のものと強調した。この上で、相互依存を「武器化」することの危険性についても指摘した。例えばASMLの場合、EUV(極端紫外線)装置などの最先端技術の中国向け販売は認められておらず、その趣旨は理解しているものの、こうした措置は結果として中国国内における自律的な技術開発を加速させるなど、意図せざる帰結を招き得る点にも言及した。このため、欧州が常に技術面で先行し続け、中国との技術格差を維持できるかが重要な課題になるとの認識を示した。また、経済安全保障においてはエネルギーだけでなく、エネルギー効率を高めるイノベーションも等しく重要であると指摘した。

ルールに基づく貿易体制の将来について問われたサトビンダー・シンASEAN事務局次長は、ASEANの経済成長はWTOルールに基づく貿易体制の下で実現してきたと強調。同時に域内貿易は20%と、EUに比べ低い水準にある点を紹介した。EUは自らの強みであるイノベーションや品質を生かし、アジアや世界との連携を一層強めることで、中小企業を含めた成長機会を拡大できる可能性があると指摘する一方、こうした機会を十分に活用できていない点に懸念を示した。ASEAN側としては、EUとの連携強化に向けた準備が整っているとの認識を示した。

欧州委のマレシュ・シェフチョビチ委員(通商・経済安全保障、EU機構関係・透明性担当)は、「経済安全保障は共通の責務であり、最前線に立つ産業界を支援しなければならない。同時に企業側も、迅速かつ戦略的にサプライチェーンを多角化し、強靭性を高めるためのコストをビジネスモデルに組み込むことが重要」と述べた。また、5月29日のオリエンテーション・ディベートでは、対中関係における共通の認識として、現在EUが1日当たり約10億ユーロの対中貿易赤字(添付資料図参照)を拡大させている状況は持続不可能であり、是正に向けた議論が不可欠であるとの認識を示した。

(薮中愛子)

(EU、米国、中国、ASEAN)

ビジネス短信 d2d10c45951058ee

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EU政策のEPCが経済安全保障フォーラム開催、対中・対米関係とASEANを含むパートナー多角化を協議

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/d2d10c45951058ee.html

時系列

主な数値

最恵国待遇の原則に基づく貿易の割合(2025年) 約70%
例年の最恵国待遇の原則に基づく貿易の割合 約80%
ASEANの域内貿易水準 20%
EUの対中貿易赤字(1日当たり) 約10億ユーロ

この事例から確認すべきポイント

本発表は、欧州政策センター(EPC)が開催した経済安全保障フォーラムにおける主要な議論や、欧州委員会の公式見解をまとめたものです。世界的な貿易戦争や輸出規制が進む中、サプライチェーンの多角化や対中・対米関係の再構築が喫緊の課題として浮き彫りになっています。特に半導体や先端技術の輸出規制が中国国内の自律的な技術開発を加速させる「意図せざる帰結」や、日々の巨額な対中貿易赤字に対する持続可能性の懸念は、グローバルに展開する製造業やハイテク産業、サプライチェーンに関与する日本企業にとっても、地政学リスクや中長期的な事業戦略を考える上で重要となる示唆を含んでいます。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-06-18

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