EU、中国製タイヤにAD関税措置を発動、タイヤ業界は域内生産の強化を提言
この発表の要点
- EUは中国製乗用車・小型トラック用タイヤに対し、2026年7月8日から5年間、4.3~45.3%のAD関税措置を発動した。
- この措置は、中国製タイヤの輸出量増加と低価格によるEU域内産業への実質的な損害認定に基づく。
- 欧州タイヤ製造協会は、域内生産の強化と低炭素・高性能タイヤへの需要喚起を目的とした提言を発表している。
企業・自治体への影響
タイヤ製造業、自動車製造業、および関連部品サプライヤーは、中国からのタイヤ調達コスト増加やサプライチェーンの見直しを迫られる可能性があります。EU域内での生産強化や域内産タイヤへの需要喚起が進むことで、域内企業の競争環境やビジネス戦略に影響を及ぼします。
対応すべきこと
- 自社がEU向けに輸出またはEU域内で事業展開している場合、対象となる中国製タイヤの調達状況を確認する。
- AD関税によるコスト増加やサプライチェーンへの影響を評価し、調達戦略や生産拠点の見直しを検討する。
- 欧州の産業加速法案(IAA)や関連する域内生産強化策の動向を注視し、ビジネス機会やリスクを把握する。
- 関連する業界団体や専門家と連携し、最新の規制情報や市場動向を継続的に収集する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:期限あり
基本データ
| 企業・団体 | 欧州委員会 |
|---|---|
| 業界 | タイヤ製造業 |
| 発表日 | 2026-07-09 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月16日
欧州委員会は7月9日、中国製の乗用車および小型トラック用のタイヤに対するアンチダンピング(AD)関税措置の発動を発表した(プレスリリース)。7月7日付のEU官報に掲載された実施規則が翌8日に発効したことを受け、対象製品には2031年7月8日までの5年間、4.3~45.3%のAD税が課される。
実施規則によると、欧州委は2025年5月、業界団体の申し立てに基づき調査を開始した。調査の結果、中国製タイヤのEU向け輸出量は2021~2024年の間、62%増加し、市場シェアは18%から28%に拡大したことが判明した。一方、輸入価格の上昇率は12%にとどまり、他の輸出国の平均(26%)やEU製品(15%)を下回った。欧州委は、中国製タイヤの輸入価格がEU域内の平均製造価格を下回ったことで価格抑制圧力が生じ、域内生産者は製造コスト上昇分を価格転嫁できず、生産量・販売数ともに減少し、実質的な損害を被ったと認定した。
高まる中国依存、IAAによる域内製品への需要喚起を訴える
欧州委は3月に産業加速法案(IAA、2026年3月13日記事参照)を発表し、エネルギー集約型産業の基盤強化策や域内産車の優遇策(2026年7月8日付地域・分析レポート参照)などを示した。同法案の影響評価では、自動車部品の中でも特にタイヤの中国依存が高まっていると指摘した。またEU域内の生産コストは輸入品を上回るペースで上昇しており、競争力が低下したとしている。
欧州タイヤ製造協会(タイヤ・ヨーロッパ)は7月1日に発表したIAAに関する提言書で、タイヤ製造が戦略的エネルギー集約型産業として位置付けられたことを歓迎し、低炭素・高性能タイヤの域内生産の強化に向け提言をした。主な提言は次のとおり。
公共調達・公的支援の要件に関し、新車装着用タイヤに域内原産要件を導入するとともに、交換用タイヤも低炭素・域内産製品の対象に追加し、域内産タイヤへの需要を喚起する。
「域内産」と同等に認定する国は、EUと自由貿易協定(FTA)などを締結、かつWTOの政府調達協定または同等の枠組みに参加していることを要件とする。
産業界との協議を踏まえ、タイヤのエネルギー効率や環境性能を乗用車および小型商用車(バン)の公共調達・公的支援の要件に反映するなど、道路輸送の脱炭素化への貢献を評価する仕組みを導入する。
産業製造加速地域に関し、新規案件に加え既存施設での投資案件も含め、許認可を迅速化する。また、EUレベルでの監査・調整体制を整備する。
(滝澤祥子)
(EU、中国)
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EU、中国製タイヤにAD関税措置を発動、タイヤ業界は域内生産の強化を提言
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/534a0365b95fd6d6.html
時系列
- 2025-05 欧州委員会が業界団体の申し立てに基づき調査を開始。
- 2026-07-01 欧州タイヤ製造協会が産業加速法案(IAA)に関する提言書を発表。
- 2026-07-07 EU官報に中国製タイヤに対するアンチダンピング(AD)関税措置の実施規則が掲載。
- 2026-07-08 実施規則が発効し、対象製品へのAD税課税が開始。
- 2026-07-09 欧州委員会が中国製タイヤに対するAD関税措置の発動を発表。
- 2031-07-08 AD税の課税期間が終了。
主な数値
| AD税率 | 4.3~45.3% |
|---|---|
| AD税課税期間 | 5年間 |
| 中国製タイヤのEU向け輸出量増加率(2021~2024年) | 62% |
| 中国製タイヤの市場シェア拡大(2021~2024年) | 18%から28% |
| 輸入価格の上昇率(中国製) | 12% |
| 輸入価格の上昇率(他の輸出国の平均) | 26% |
| 輸入価格の上昇率(EU製品) | 15% |
この事例から確認すべきポイント
欧州委員会による中国製タイヤへのアンチダンピング関税措置の発動は、EU域内産業の保護を目的とした貿易政策の一環であり、国際的な貿易摩擦の激化を示す事例です。この措置は、中国からの輸入に依存するEU域内の自動車産業やタイヤ流通業者に対し、調達コストの増加やサプライチェーンの見直しを促す可能性があります。また、欧州タイヤ製造協会が産業加速法案(IAA)と連携し、域内生産の強化や低炭素・高性能タイヤへの需要喚起を提言していることから、EUは単なる輸入規制に留まらず、域内産業の競争力強化と脱炭素化を一体的に推進する姿勢が伺えます。企業は、今後の貿易政策の動向を注視し、サプライチェーンの多様化や域内生産への投資、環境性能の高い製品開発など、中長期的な事業戦略の見直しが求められるでしょう。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-16
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