経済・産業トレンド

中国とドイツの自動車産業団体、自動車産業データプラットフォームの連携へ向けた協力を推進

中国自動車工業協会(CAAM)は、ドイツ自動車工業会(VDA)と協力し、自動車産業における「信頼できるデータ空間」の連携に関する調印式典を実施しました。CAAM傘下の衆鏈数智とドイツのCatena-X、Cofinity-Xが、エコシステム構築と技術連携で協力します。この連携は、2027年2月から導入されるEUのバッテリー規則「バッテリーパスポート」への対応を最初の目標とし、中国のデータ域外移転規制を満たしつつ、サプライチェーンのトレーサビリティーやCO2排出データ提出要求に対応するための技術適合と検証を進めることを目的としています。

この発表の要点

企業・自治体への影響

自動車産業に関わる企業、特にサプライチェーンに属する企業は、EUのバッテリー規則や中国のデータ規制への対応が求められます。データ管理部門、法務部門、サプライチェーン管理部門は、国際的なデータ連携の動向を注視し、自社のデータ共有体制やトレーサビリティー確保の準備を進める必要があります。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 法務 情シス 広報 経理

対応期限:施行日まで

基本データ

企業・団体 中国自動車工業協会(CAAM)
業界 自動車産業
発表日 2026-08-07
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年08月07日

中国の自動車業界団体である中国自動車工業協会(CAAM)は7月21~23日、上海市嘉定区で第16回中国自動車フォーラムを開催した。同フォーラム期間中の7月22日、中国と欧州の自動車産業における「信頼できるデータ空間(中国語で『可信数据空間』)」(注1)の協力に関する調印式典が行われた。

協力内容は、中国と欧州の自動車産業における「信頼できるデータ空間」のエコシステムに関する協力と、相互連携に関する技術協力の2点からなる。エコシステムに関する協力については、CAAM傘下の企業である衆鏈数智(上海)智能科技(注2、以下衆鏈)と「カテナ-X(Catena-X)」(注3)の代表者が署名を行い、CAAMの副会長およびドイツ自動車工業会(VDA)中国拠点の首席代表兼総経理などが立ち会った。CAAMはエコシステムに関する協力について、CAAM、VDAおよびCatena-Xが産業連携、国際協力、標準体系の構築などにおいて持つ知見と、衆鏈が中国自動車産業向け「信頼できるデータ空間」の構築・運営および自動車データエコシステムの構築で有する能力を活用し、中国と欧州のデータ協力メカニズムを発展させるとした。衆鏈が公開している情報によると、スマートコネクテッドNEVの「信頼できるデータ空間」(データ基盤)は完成車、サプライチェーン、充電・電池交換などのデータを統一的に接続、流通させるプラットフォーム。NEV向けの保険付保、スマート運転の保障、動力電池の残価評価などのサービスに活用されている。

相互連携に関する技術協力については、衆鏈のCEO(最高経営責任者)とCofinity-X(注4)のCEOが署名した。CAAMは相互連携に関する技術協力について、衆鏈が中国自動車産業向け「信頼できるデータ空間」の現地化対応や活用シーン運営で持つ実績と、Catena-XやCofinity-Xのグローバルな運営サービス経験を生かし、中国と欧州の技術適合や検証における協力を推進し、中国と欧州の自動車産業の「信頼できるデータ空間」の効率的な連携に向けた基礎を固めるとしている。

CAAMは、今回の調印により、中国と欧州の自動車産業における「信頼できるデータ空間」の協力は、戦略的連携からガバナンス体制、標準体系、デジタルインフラ、活用シーンなどの面で深化し、エコシステムの共同構築、技術の相互連携、実装という新たなステージに入ると評価した。

データ空間の連携でEUのバッテリー規則に対応
Catena-Xの発表によると、今回の協力ではまず、2027年2月から導入されるEUのバッテリー規則の「バッテリーパスポート」(注5)に関連し、サプライチェーンのトレーサビリティーや二酸化炭素(CO2)排出データ提出の要求について、中国のデータ域外移転規制(注6)を満たしつつ対応するための技術適合と検証を進める。その後、自動車産業サプライチェーンに係る他の規制におけるデータ要求にも対応していくとしている。

(注1)「信頼できるデータ空間」とは、共通の規則に基づいて複数の主体を連結し、データ資源の共有と共同利用を実現するデータの流通利用基盤を指す。ジェトロ調査レポート「中国のビッグデータ利活用に関する動向(2026年3月)(1.3MB)」P13~14も参照。
(注2)衆鏈数智(上海)智能科技は2020年4月に設立され、CAAMをはじめ、上海蔚来汽車(NIO)、ボッシュ中国などから出資を受けている。同社はCAAMが立ち上げた、スマートコネクテッド新エネルギー車(NEV)の信頼できるデータ空間の構築と運営を担当している。
(注3)ドイツの自動車産業において、サプライチェーンの企業間でデータを交換・共有するためのプロジェクト(2021年5月11日記事参照)。
(注4)Cofinity-Xは2023年1月にBMW、BASF、フォルクスワーゲン(VW)、メルセデス・ベンツ、ZF、シーメンス、SAPなどのドイツ企業によって設立された合弁企業で、Catena-Xの運用と導入の促進を目的とし、アプリケーション用のオープンマーケットプレイスの運営、参加者間の効率的かつ安全なデータ交換を可能にする製品とサービスの提供を行っている。
(注5)EUでは2023年8月、バッテリー製品の原材料調達から設計・生産プロセス、再利用、リサイクルに至るライフサイクル全体を規定するバッテリー規則が施行され、EVバッテリーなどは2027年2月18日から、電子上の記録「バッテリーパスポート」を介し、ラベル表示情報に加え、原材料構成、カーボンフットプリントなどに関する情報へのアクセスを確保することが義務化される(2023年8月21日記事参照)。
(注6)中国のデータ域外移転に関する規制については、ジェトロ「中国の経済安全保障に関する制度情報(2026年4月)(1.5MB)」参照。

(小宮昇平)

(中国、ドイツ、欧州)

ビジネス短信 372a73d916be8ced

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/372a73d916be8ced.html

時系列

この事例から確認すべきポイント

本発表は、自動車産業における国際的なデータ連携の重要性を示しており、特にEUのバッテリー規則「バッテリーパスポート」への対応が喫緊の課題であることが浮き彫りになっています。中国のデータ域外移転規制との両立を図りながら、技術適合と検証を進める点は、国際的なデータガバナンスの複雑さを反映しています。データ空間の相互運用性は、サプライチェーン全体の透明性向上と効率化に寄与し、将来的な自動車産業のデジタル化を加速させる基盤となるでしょう。企業は、国際的なデータ規制動向、特にEUの環境規制や中国のデータ主権に関する規制を常に把握し、自社のサプライチェーンにおけるデータ管理体制を強化する必要があります。このような国際協力の枠組みは、新たなビジネス機会や標準化の動きを生み出す可能性も考慮すべきです。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-08-07

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