第110回社会保障審議会年金数理部会 議事録
この発表の要点
- 令和6年度の公的年金財政は、運用損益を除くと単年度で0.1兆円のマイナスだが、運用益2.0兆円により積立金は306.0兆円に増加した。
- 被保険者数は将来見通しを上回る一方、合計特殊出生率は低下傾向が続き、実質賃金上昇率は見通しを下回るなど、財政にプラス・マイナス両面の影響がある。
- 短期的な動向にとらわれず、人口要素・経済要素の長期的な動向を注視し、年金財政への影響を継続的に評価する必要がある。
企業・自治体への影響
この発表は、企業の社会保険料負担や将来の労働力人口に影響を与える公的年金制度の財政状況に関するものであり、特に経理部門や人事部門、経営層にとって重要である。出生率の低下や実質賃金の動向は、企業の採用戦略や賃金政策、福利厚生制度の設計にも間接的に影響を及ぼす可能性がある。
対応すべきこと
- 公的年金制度の財政状況に関する最新情報を継続的に確認する。
- 自社の社会保険料負担への影響について経理部門と情報共有を行う。
- 将来の労働力人口や社会保障制度の動向が、人事戦略や福利厚生制度に与える影響を検討する。
対象部門: 経営者 人事 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 厚生労働省 |
|---|---|
| 発表日 | 2026-06-16 |
| 分類 | 行政処分・コンプライアンス |
発表された内容
2026年6月16日 第110回社会保障審議会年金数理部会 議事録
2026年6月16日 第110回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局総務課首席年金数理官室
日時
令和8年6月16日 13時30分~15時30分
場所
全国都市会館 第1会議室
出席者
委員
寺井部会長
猪熊委員
小野委員
日下部委員
駒村委員
佐藤委員
庄子委員
松本委員
議題
(1)公的年金財政状況報告-令和6年度-について
(2)その他
議事
○楠田首席年金数理官 では、全員おそろいになりましたので、ただいまより第110回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1として「公的年金財政状況報告-令和6(2024)年度-(案)」。こちらは資料1-1から1-5の分冊に分かれております。資料2として「『老齢基礎年金の併給状況』の公表について」でございます。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、嵩委員から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
なお、猪熊委員、庄子委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。庄子委員は遅れて御参加との連絡をいただいております。
それでは、以降の進行については寺井部会長にお願いいたします。
○寺井部会長 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
本日は、「令和6年度公的年金財政状況報告」について審議を行いたいと思います。
カメラの方がいらっしゃれば、ここで退室をお願いいたします。
令和6年度の報告書の作成に当たっては、委員の皆様に御協力いただき、あらかじめ作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いただきました。
それでは、事務局から本年度の報告案について、説明をお願いいたします。
○楠田首席年金数理官 委員の皆様には作業班で報告書案の作成に御尽力いただき、ありがとうございました。作成いただいた令和6年度の公的年金財政状況報告の案について、事務局より御説明させていただきます。
報告書の案は資料1-1から1-5まで5つに分かれておりますが、本日は資料1-1にありますポイントと概要を中心にここは御説明し、追加で概要に取り上げられていない事項を御紹介させていただきたいと思います。
それでは、資料1-1を御覧ください。最初に表紙、次に委員名簿がございます。その後に、ページ番号で3ページから5ページになりますが、これらは令和6年度の公的年金財政状況報告のポイントとなっています。こちらのポイントは、年金数理部会としてこの報告で最もお伝えしたいことをまとめたものになります。
中身に入りますと、まず3ページの上の枠囲みの中にありますとおり、「公的年金財政状況報告」は、年金数理部会が、公的年金の毎年度の財政状況について、各制度・各実施機関からの報告に基づいて、専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果を取りまとめたものです。この報告では実績の動向を明らかにし、また、財政検証との比較や財政状況の評価といったことを行っていますほか、共済組合等も含めた厚生年金全体での財政状況を取りまとめています。
お伝えすべきポイントは2つあり、1つ目は公的年金の収支状況についてです。3ページの下の図表、令和6年度の単年度収支状況を見ていただきたいと思います。こちらは年金数理部会が公的年金の財政状況を制度横断的に比較・分析しているものとなります。表側に収支項目が並んでいますが、ここでは賦課方式を基本とする財政運営が行われていることを踏まえ、財政収支状況について、運用損益分を除いた単年度収支残と運用損益に分けて分析をしています。また、表頭には厚生年金計、国民年金勘定、基礎年金勘定、公的年金制度全体とありますが、一番左の厚生年金計は、共済組合等を含めた厚生年金全体の数値になっています。この厚生年金計については、平成27年10月に被用者年金が一元化されていますが、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合等を実施機関として活用することとなっている関係で、厚生年金の財政は、厚生年金勘定と厚生年金の実施機関たる共済組合等の厚生年金保険経理に分かれて管理されておりまして、厚生年金拠出金、厚生年金交付金をやり取りすることで財政的に一元化されています。
決算についてもおのおのに分かれて実施されていますが、ここでは報告いただいた資料を基に、厚生年金勘定と国共済、地共済、私学共済の厚生年金保険経理を合わせた厚生年金全体の財政収支状況を取りまとめています。その際、単純に各実施機関の決算の数値を合計するわけではなく、厚生年金全体としての財政収支状況を捉えるために、例えば厚生年金拠出金、厚生年金交付金といった厚生年金の実施機関の間でのやり取りについては、収入・支出の両面から取り除いて整理をしています。
また、この厚生年金計と隣の国民年金勘定、基礎年金勘定を合わせたものが一番右の欄の公的年金制度全体の財政収支状況になります。ここでも公的年金制度内のやり取り、図表中で言えば、マル1の基礎年金交付金、マル2の基礎年金拠出金になりますが、こちらは収入・支出に同じ額が計上されて相殺されることになるので、こうした公的年金の制度内でのやり取りは、収入・支出の両面から除いています。このように、厚生年金全体や公的年金制度全体について財政収支状況を明らかにすることもこの年金数理部会の大きな役割の1つであると考えています。
さて、令和6年度の公的年金制度全体の単年度収支状況について見ていきますと、図表の一番右の欄になりますが、収入面では保険料収入が43.1兆円、国庫・公経済負担が12.1兆円となっており、運用損益分を除いた単年度の収支総額は55.7兆円となっています。
一方、支出面を見ますと、大宗を占める給付費は55.3兆円で、支出総額は55.8兆円となっています。この結果、運用損益分を除いた単年度収支残は0.1兆円のマイナスでした。また、運用損益は、時価ベースで2.0兆円のプラスとなっています。これらの結果、公的年金制度全体の時価ベースの年度末積立金は、前年度末に比べて2.0兆円の増加で、306.0兆円となりました。
続きまして、4ページを御覧ください。こちらはポイントの2つ目ということで、公的年金の財政状況の評価です。ここが今回の財政状況報告における最も重要な結論となっています。この報告では、令和6年度までの実績と令和6年財政検証の前提や将来見通しを比較して分析を行っていますが、公的年金の財政状況の評価に当たっては、そういった比較だけではなく、長期的な財政の均衡の観点から評価をしています。評価については水色の枠囲みの中に記載しています。おのおののバックデータについては、後ほど概要の御説明の中で触れさせていただきますので、ここでは評価の結果を述べさせていただきたいと思います。
枠囲みの中、1つ目の丸にありますように、令和6年度は令和6年財政検証における将来見通しと比較する初年度となっています。その下は令和6年度の実績について確認したことを挙げています。まず、マル1ですが、国民年金第1号被保険者数、厚生年金被保険者数共に実績が将来見通しを上回っています。これは、外国人入国超過数が令和6年度財政検証の前提となった国立社会保障・人口問題研究所による令和5年将来推計人口、以降は単に「令和5年推計」と呼ばせていただきますが、これにおけるいずれの仮定値も上回っていることが影響していると考えられます。また、65歳の平均余命は、令和5年推計における死亡高位の仮定値と同水準となっており、これらは公的年金財政にプラスの効果となります。
次に、マル2ですが、合計特殊出生率は平成28年より低下傾向が続いており、令和6年の実績は令和5年推計における出生低位の仮定値とおおむね同水準となっています。また、対物価上昇率で見た実質賃金上昇率は、令和6年財政検証におけるいずれのケースの前提も下回っており、これらは公的年金財政にマイナスの効果となります。
また、マル3にある積立金については、令和5年度末の実績が将来見通しを上回っていたこともあり、令和6年度末においても実績が将来見通しを上回りました。なお、令和5年度末の実績が将来見通しを上回った部分のほとんどは、将来見通しの積立金に平滑化したものが使われていることによるものです。
5ページに参りまして、マル4ですが、令和6年度は、マクロ経済スライドによる給付水準調整が行われた一方で、賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金の伸びはマイナスとなったことから、前年の令和5年度とは異なり、既裁定年金の伸びを賃金の伸びより抑制する効果は発動されませんでした。
2つ目の丸にありますように、このように確認した将来見通しからの乖離が、一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなります。特に、令和6年の合計特殊出生率は令和5年より低下し、令和5年推計における出生低位の仮定値とおおむね同水準となっておりますが、このような傾向が今後も続くようであれば、将来の年金制度の運営は大きな影響を受けることになります。とはいえ、年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであると
出典: 厚生労働省
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74739.html
時系列
- 2015-10-01 被用者年金が一元化される。
- 2016-01-01 合計特殊出生率が低下傾向を開始する。
- 2024-03-31 令和5年度末の公的年金制度全体の時価ベース積立金が将来見通しを上回る実績となる。
- 2024-04-01 令和6年度の公的年金財政状況報告の対象期間が開始される。
- 2026-06-16 第110回社会保障審議会年金数理部会が開催され、「公的年金財政状況報告-令和6年度-(案)」が審議される。
主な数値
| 会議回数 | 110回 |
|---|---|
| 令和6年度公的年金制度全体の運用損益除いた単年度収支残 | -0.1兆円 |
| 令和6年度公的年金制度全体の運用損益 | 2.0兆円 |
| 令和6年度末公的年金制度全体の時価ベース積立金 | 306.0兆円 |
| 令和6年度末公的年金制度全体の時価ベース積立金増加額 | 2.0兆円 |
| 令和6年度公的年金制度全体の保険料収入 | 43.1兆円 |
| 令和6年度公的年金制度全体の国庫・公経済負担 | 12.1兆円 |
| 令和6年度公的年金制度全体の運用損益除いた単年度収支総額 | 55.7兆円 |
| 令和6年度公的年金制度全体の給付費 | 55.3兆円 |
| 令和6年度公的年金制度全体の支出総額 | 55.8兆円 |
この事例から確認すべきポイント
本議事録は、日本の公的年金制度の財政状況に関する継続的な監視と評価の重要性を示している。「公的年金財政状況報告-令和6年度-」は、実績と2024年財政検証の将来見通しを比較し、短期的な動向だけでなく長期的な視点での評価を促す。令和6年度の財政は、運用益により積立金が増加したものの、出生率の低下や実質賃金の伸び悩みといった構造的な課題が指摘されており、これらが中長期的に続けば年金財政に大きな影響を与える可能性がある。企業にとっては、社会保険料負担や将来の労働力人口、消費動向に直結する情報であり、これらの動向を把握し、人事戦略や福利厚生制度、経営計画に反映させるための基礎情報として活用することが求められる。特に、人口動態の変化は企業の持続可能性にも影響を及ぼすため、継続的な情報収集と分析が不可欠である。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-21
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