米USTRの対ブラジル25%の301条関税措置に、政府・産業界が懸念表明
この発表の要点
- 米国USTRがブラジル原産特定品目に対し25%の追加関税措置を7月22日から適用開始した。
- ブラジル政府および産業界は、この措置に対し強く懸念を表明し、対抗措置やWTO提訴を検討している。
- ブラジル政府は直ちの報復措置は避け、除外品目の拡大と交渉再開を優先する方針を示している。
企業・自治体への影響
国際貿易に携わる企業、特にブラジルとの取引がある製造業(履物、機械・設備など)やデジタルサービス関連企業は、関税コストの増加、サプライチェーンの混乱、輸出入量の減少といった直接的な影響を受ける可能性がある。関連部門としては、経理、法務、貿易実務、経営企画、広報などが影響を評価し、対応を検討する必要がある。
対応すべきこと
- 公式出典(USTR、ブラジル政府、JETRO等)で、自社の取り扱い製品が追加関税の対象品目に該当するか確認する。
- ブラジルとの貿易取引がある場合、関税コストの増加やサプライチェーンへの影響を評価し、事業計画への影響を検討する。
- 関係部門(経理、法務、経営企画など)へ本件を共有し、今後の動向を注視する体制を構築する。
- 国際貿易政策の変更リスクを考慮したサプライチェーンの多様化や事業継続計画(BCP)の策定・見直しを検討する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:適用開始済み
基本データ
| 企業・団体 | JETRO |
|---|---|
| 業界 | 製造業、デジタルサービス |
| 発表日 | 2026-07-23 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月23日
ブラジル連邦政府および産業界団体は、米国通商代表部(USTR)が7月15日に発表した、1974年通商法301条に基づきブラジル原産の特定品目に対して、22日午前0時1分以降の通関から、25%の追加関税を課す措置(2026年7月21日記事参照)について、相次いで懸念を表明した。
大統領府は7月16日付のプレスリリースで、デジタル貿易や電子決済サービス分野における米国企業への制限、違法伐採対策の不十分さなどを問題視したUSTRの主張を退けた。また、米国は過去15年間のブラジルとの財・サービス貿易で4,245億ドルの黒字を計上していると指摘し、米国側の主張には根拠がないと反発した。あわせて、ブラジルの「経済相互主義法」(注)に基づく対抗措置の手続きを直ちに開始するとともに、WTOの紛争解決制度でも本件を取り上げるとした。ただ、現地紙「グローボ」(7月20日付)によると、連邦政府は同法に基づく措置を直ちには発動せず、除外品目の拡大と交渉再開を優先する方針だ。
全国工業連盟(CNI)は7月16日付のウェブサイトで、米国の貿易政策の影響により、2026年上半期には全国27州のうち20州で対米輸出が前年同期比で減少し、対米輸出総額も同13%(約26億ドル)減少したと指摘した。その上で、今回の措置により状況がさらに悪化するとの見方を示した。サンパウロ州工業連盟(FIESP)も同日付のウェブサイトで同様の懸念を表明した。一方で、ブラジル政府の対米外交の運営にも一因があるとの見解も示した。
ブラジル履物産業協会(Abicalçados)は7月16日付のウェブサイトで、今回の措置はブラジルの輸出業者だけでなく、米国の輸入業者や小売業者、消費者にも不利益をもたらすと指摘した。また、2026年の履物輸出見通しについて、従来の前年比3.6%減から同7.1%減へ下方修正した。さらに、同協会は現地紙「フォーリャ」(7月16日付)に対し、輸出不振が雇用削減につながる可能性があるとの懸念を示した。
ブラジル機械工業会(ABIMAQ)は、米国が同業界にとって最大の輸出市場であり、両国の機械・設備産業は機械、部品、中間財などを通じて相互補完関係にあると指摘した。また、グループ企業間取引も多いことから、追加関税はコスト上昇や競争力低下、投資抑制を招くだけでなく、両国のサプライチェーン全体の効率性にも悪影響を及ぼすとの懸念を示した。
(注)連邦政府が言及した対抗措置の法的根拠は、2025年4月14日に公布された法律第15,122/2025号(通称「経済相互主義法(Lei da Reciprocidade Econômica)」)。同法は、他国による一方的な貿易制限措置がブラジルの競争力に悪影響を及ぼす場合、政府が報復関税や知的財産権保護の停止を含む比例的な対抗措置を講じることを認めるもの(2025年4月7日記事参照)。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル、米国)
ビジネス短信 59c87e6b8077afff
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米USTRの対ブラジル25%の301条関税措置に、政府・産業界が懸念表明
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/59c87e6b8077afff.html
時系列
- 2025-04-14 法律第15,122/2025号(通称「経済相互主義法」)が公布された。
- 2026-07-15 米国通商代表部(USTR)がブラジル原産の特定品目に対する25%追加関税措置を発表した。
- 2026-07-16 ブラジル大統領府がプレスリリースでUSTRの主張を退け、対抗措置とWTO提訴を示唆した。
- 2026-07-16 全国工業連盟(CNI)、サンパウロ州工業連盟(FIESP)、ブラジル履物産業協会(Abicalçados)がウェブサイトで同様の懸念を表明した。
- 2026-07-22 米国による25%追加関税措置が午前0時1分以降の通関から適用開始された。
- 2026-07-23 本記事が発表された。
主な数値
| 追加関税率 | 25% |
|---|---|
| 米国側のブラジルとの貿易黒字(過去15年間) | 4245億ドル |
| ブラジル対米輸出減少率(2026年上半期) | 13% |
| ブラジル対米輸出減少額(2026年上半期) | 26億ドル |
| 対米輸出が減少したブラジル州数(2026年上半期) | 20州 |
| ブラジル履物輸出見通し下方修正(従来) | 3.6%減 |
| ブラジル履物輸出見通し下方修正(修正後) | 7.1%減 |
この事例から確認すべきポイント
この事例は、国際貿易における一方的な関税措置が、対象国の政府、産業界、そしてサプライチェーン全体に多大な影響を及ぼす可能性を示している。ブラジル政府は、米国側の主張に根拠がないと反発し、WTO紛争解決制度への提訴や国内法に基づく対抗措置を検討するなど、多角的な対応を模索。しかし、直ちの報復措置は避け、交渉による解決を優先する姿勢は、経済的影響を最小限に抑えつつ外交的解決を図る意図がうかがえる。各産業団体は、輸出減少、雇用削減、コスト上昇、競争力低下、サプライチェーン効率性への悪影響など、具体的な懸念を表明しており、企業は国際情勢の変化が自社の事業に与える直接的な影響を常に評価する必要がある。特に、サプライチェーンが複雑に絡み合う現代において、特定の国・地域への依存度が高い企業は、貿易政策の変更リスクを考慮した事業継続計画(BCP)の策定が重要となる。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-23
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