経済・産業トレンド

第68回メルコスール首脳会合で、対日FTAの交渉開始を了承

2026年7月8日、パラグアイで開催された第68回メルコスール首脳会合において、共同市場理事会(CMC)が対日FTA(日本・メルコスール経済連携協定)交渉の開始を正式に決定し、本会合で了承されました。本協定は、農産品および非農産品の市場アクセス拡大、協力関係強化、相互投資促進、バリューチェーン統合を目指し、特に経済・食料安全保障、サプライチェーンの多角化に取り組む方針です。また、ベトナムとの特恵貿易協定(PTA)交渉開始、インドとのPTA拡大・深化も決定しました。

この発表の要点

企業・自治体への影響

日本とメルコスール間のFTA交渉開始は、日本の製造業、農業、商社、物流業など、国際貿易に携わる企業に新たな市場機会と投資促進の可能性をもたらします。特に、貿易部門や国際事業開発部門は、今後の交渉進捗を注視し、事業戦略への影響を評価する必要があります。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 広報 経理 法務

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 日本貿易振興機構(ジェトロ)
発表日 2026-07-08
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年07月08日

パラグアイの首都アスンシオン市で6月29~30日にかけて、第68回メルコスール外相会合および首脳会合が開催された。首脳会合には、2026年上半期に議長国を務めたパラグアイのサンティアゴ・ペーニャ大統領に加えて、正式加盟国のブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領、ウルグアイのヤマンドゥ・オルシ大統領、アルゼンチンパブロ・キルノ外相(代理出席)が出席した(注1)。

2026年下半期の議長国を引き継いだウルグアイのオルシ大統領は、議長国としての任期が満了する2026年末までの通商分野における優先課題として、欧州自由貿易連合(EFTA)との自由貿易協定(FTA)推進、中南米域内外諸国とのFTA交渉の推進を挙げた(注2)。また、6月24日にベネズエラ北東部および中部で発生した巨大地震(2026年7月6日記事参照)への人道支援などに向けてもメルコスールが一体となって協力していくことで一致した。メルコスールへの正式加盟に向け、国内法規を整備中であるボリビアのパス大統領は、2028年までに国内法規をメルコスールの規制や枠組みに適用することで正式に加盟国として認められることを背景に、加盟実現に向け手続きを進行中である旨を述べた。

また、メルコスールの各加盟国の外相と経済担当相が参加し、域内統合に向けた政策を決定する共同市場理事会(CMC)は、対日FTA〔日本・メルコスール経済連携協定(EPA)〕交渉の開始を正式に決定し本会合で了承された(注3)。メルコスール事務局によれば、本協定を通じて双方は「農産品および非農産品の市場アクセス拡大、協力関係の強化、相互投資の促進、両地域間のバリューチェーン統合」を目指す。特に、先行きが不透明な国際情勢のもとで双方は、「経済安全保障」「食料安全保障」「サプライチェーンの多角化」に取り組む。なお、当該CMCでは、ベトナムとの特恵貿易協定(PTA)交渉開始、インドとのPTAの拡大および深化についても決定した(注4)。対ベトナムPTAについては、年末までの間にアルゼンチンの首都ブエノスアイレス市で第1回目の交渉会合を行う。

メルコスールの対外FTA政策が進展するなか、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は本首脳会合への出席を見送った。6月29日付のアルゼンチン現地紙「インフォバエ」は、6月30日に新たにディエゴ・サンティリ氏が官房長官に就任することに伴い、「国内にとどまり、行政運営に関する課題に取り組む」ためと報じている。ただ、6月29日付のアルゼンチン現地紙「ラ・ナシオン」は、「ブラジルのルーラ大統領と顔を合わすのを避けるため」とも報じている。アルゼンチンは6月3日、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」への加入を申請している(2026年6月9日記事参照)。アルゼンチンが単独で交渉することが、加盟国全体での通商交渉実施を定めたメルコスールの決定事項に反する点がリスクとみられている。

(注1)そのほか、ボリビアのロドリゴ・パス大統領、チリのホセ・アントニオ・カスト大統領、エクアドルのダニエル・ノボア大統領らも出席した。ボリビアは2024年7月、議会で加盟議定書を批准した。現在は、2028年までに国内法規をメルコスールの規制・枠組み(主に関税制度)に適用させるべく準備中。
(注2)EFTAの加盟国は、リヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェー、スイスの4カ国。メルコスールは2025年9月、EFTAとのFTAに署名した。
(注3)ブラジル政府は7月2日、日本・メルコスールEPAに関するパブリックコメントの募集を開始した(2026年7月7日記事参照)。なお、メルコスール側の呼称では、EPAではなくFTAとしている。
(注4)メルコスールとインドの間では2009年にPTAが発効している。ただ、協定の自由化率は高くなく、インド側で450品目、メルコスール側で452品目の関税が10~100%の範囲内で引き下げられているのみ。ブラジルのルーラ大統領は、同協定の自由化対象品目を拡大し、インドとの貿易拡大を目指す意向を示している。詳細は、2026年4月20日付地域・分析レポート参照。

(辻本希世)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、日本、ベトナム、インド)

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第68回メルコスール首脳会合で、対日FTAの交渉開始を了承

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/c6d42e23e98cef2d.html

時系列

主な数値

メルコスール・インドPTAにおけるインド側関税引き下げ品目数 450品目
メルコスール・インドPTAにおけるメルコスール側関税引き下げ品目数 452品目
メルコスール・インドPTAにおける関税引き下げ率 10~100%

この事例から確認すべきポイント

本発表は、日本とメルコスール間の経済関係強化に向けた重要な一歩を示しており、農産品および非農産品双方の市場アクセス拡大に繋がる可能性があります。特に「経済安全保障」「食料安全保障」「サプライチェーンの多角化」への言及は、現在の国際情勢における貿易協定の戦略的意義を強調しています。日本の企業にとっては、メルコスール諸国への新たな市場参入や投資機会が生まれる可能性があり、今後の交渉の進展を注視する必要があります。メルコスールがベトナムやインドとの貿易協定も同時に推進していることは、同地域の貿易パートナー多様化への積極的な姿勢を示しており、日本企業はこれらの動向も踏まえた上で、中長期的な事業戦略を検討することが求められます。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-07-08

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