米テキサス州知事、害虫NWS発生で災害宣言を発令
この発表の要点
- テキサス州知事が新世界ラセンウジバエ(NWS)の発生を受け災害宣言を発令し、政府機関の資源再分配や規定停止を可能にした。
- NWSは畜産業に甚大な被害をもたらす可能性があり、過去の被害額や今回の試算被害額は巨額に上り、既に国際的なサプライチェーンに影響が出ている。
- テキサス州政府は住民への注意喚起、米国農務省は不妊ラセンウジバエ生産施設の建設、テキサス州動物衛生委員会は制限区域指定など、拡大阻止に向けた多角的な対策を講じている。
企業・自治体への影響
本件は、テキサス州および米国全体の畜産業界に直接的な経済的影響を与えます。家畜の生産者、食肉加工業者、飼料供給業者など、畜産関連のサプライチェーン全体に混乱が生じる可能性があります。また、カナダによる家畜輸入停止措置のように、国際的な貿易関係や物流にも影響が及び、関連する輸出入業者や物流企業は対応を迫られます。
対応すべきこと
- テキサス州および米国と畜産物や関連資材の取引がある企業は、サプライチェーンへの影響を評価し、代替調達や物流ルートの確保を検討する。
- 国際的な貿易規制(輸入停止措置など)の動向を注視し、自社の事業に与える影響を把握する。
- 関係部門(調達、生産、法務、広報など)へ本件を共有し、潜在的なリスクと対応策について協議する。
- テキサス州政府や米国農務省(USDA)など、公式出典から最新情報を継続的に収集し、事業継続計画(BCP)に反映させる。
対応優先度: 中 害虫発生による広範な経済的損失が試算され、国際的なサプライチェーンに影響が出ているため、関連企業は動向を注視し対策を検討する必要がある。
対象部門: 経営者 広報 法務 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | テキサス州政府 |
|---|---|
| 業界 | 農業・畜産 |
| 発表日 | 2026-06-15 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | テキサス州 |
発表された内容
2026年06月15日
米国テキサス州のグレッグ・アボット州知事(共和党)は6月5日、新世界ラセンウジバエ(New World Screwworm、以下NWS)の州内での発生を受けて災害宣言を発令した。州知事は同宣言に基づき、政府機関の資源を災害対策業務に再分配、あるいは業務遂行を妨げるような規定を停止することができる。
主に中南米・カリブ地域に生息するNWSは、「肉食バエ」とも呼ばれ、メスのハエが傷口や粘膜に卵を産み付け、孵化(ふか)した幼虫が生きた動物の体内に侵入・寄生して臓器などを食い荒らすため、畜産業に深刻な打撃を与える可能性がある。1976年にNWSがテキサス州でまん延した際、家畜の死亡による生産量の減少や追加的な検査費用など、当時の家畜生産者が被った損失額は年間1億3,210万ドル、州経済全体では2億8,300万~3億7,500万ドルと試算されていた。以降、米国政府は各種対策を通じて約50年にわたりNWSの再発を抑えてきた。
非営利団体のシンクタンク・テキサス政策リサーチ(Texas Policy Research)が、1976年にNWSがまん延した際の被害額に基づき、今回のNWSのまん延がもたらす被害額を試算したところ、テキサス州内だけで約20億ドルの損失が発生し、かつNWSが州外に広がれば損害はさらに大きくなると結論付けている。カナダ食品検査庁は6月5日、テキサス州からの家畜の輸入を一時的に停止する措置を発表するなど、既にサプライチェーンに影響が出ている。
災害宣言の発令以降、テキサス州政府はNWSの拡大の阻止に積極的に動いている。アボット氏は災害宣言の発令同日に開かれた記者会見において、「屋外のペット、特に傷口が露出している、または未治療のペットを注意深く監視してほしい」と住民に呼びかけた。
また、米国農務省(USDA)はNWSの被害拡大対策として、放射線で不妊化させたオスのラセンウジバエを大量に放つため、7億5,000万ドルをかけて不妊ラセンウジバエの生産施設の建設に着手した(注)。なお、この投資によりテキサス州南部エディンバーグで建設が進められている不妊ラセンウジバエの生産工場について、アボット氏は完成予定の2027年11月を前倒しすべく、テキサス州予算を追加投入する意向を示した(AP通信6月5日付)。
さらに、テキサス州動物衛生委員会(TAHC)は、最初に幼虫が発見されたザバラ郡をはじめ、ラサール郡、ウェブ郡、ギレスピー郡、カー郡、キンブル郡を制限区域に指定、制限区域外に生きた動物を持ち出すことを禁止するなどの対策を取っている。
(注)NWSのメスは生涯に1度しか交尾しないという独自の生態的特性を利用し、「蛹(さなぎ)」の段階で放射線照射により不妊化させたオスを大量放飼することで、不妊オスと交尾したメスが産んだ卵は孵化しないため、個体群密度を段階的に低下させる仕組み。
(早坂直樹)
(米国)
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米テキサス州知事、害虫NWS発生で災害宣言を発令
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出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/bfbdaf6a193aeac5.html
時系列
- 1976-XX-XX NWSがテキサス州でまん延
- 2026-06-05 テキサス州知事がNWS発生を受けて災害宣言を発令
- 2026-06-05 カナダ食品検査庁がテキサス州からの家畜の輸入を一時的に停止する措置を発表
- 2027-11-XX 不妊ラセンウジバエ生産工場の完成予定
主な数値
| 1976年NWSまん延時の家畜生産者の損失額 | 132100000ドル |
|---|---|
| 1976年NWSまん延時の州経済全体の損失額 | 283000000ドル |
| 今回のNWSまん延によるテキサス州内の試算損失額 | 2000000000ドル |
| 不妊ラセンウジバエ生産施設の建設費用 | 750000000ドル |
| 制限区域に指定された郡の数 | 6郡 |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、特定の害虫発生が地域経済に甚大な影響を及ぼし、行政が迅速な対応を迫られる危機管理の典型を示しています。テキサス州知事による災害宣言は、政府機関の資源再分配や規定停止を可能にし、緊急事態への対応力を高めるものです。過去の被害額や今回の試算被害額が巨額であることから、畜産業界への影響は計り知れず、カナダによる輸入停止措置はサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしています。米国農務省による大規模な生産施設建設や、テキサス州動物衛生委員会による制限区域指定といった具体的な対策は、科学的根拠に基づいた長期的な解決策と、短期的な封じ込め策の両面からアプローチしていることを示唆します。企業は、自社の事業が特定の地域や産業に依存している場合、このような自然災害や疫病発生のリスクを常に評価し、サプライチェーンの多角化や代替調達先の確保など、事業継続計画(BCP)を策定・見直す必要性を再認識すべきです。また、行政の発表や国際的な貿易規制の動向を迅速に把握し、適切な情報公開と関係者への説明責任を果たす広報体制の重要性も浮き彫りになります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-14
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