中国司法部、EUの京東に対するFSR調査を不当域外管轄措置に認定、同調査実施への協力を禁止
この発表の要点
- 中国司法部が公告第8号を発出し、EUのFSRによる京東調査を不当域外管轄措置と認定した。
- いかなる組織・個人に対しても、同調査の執行または執行への協力が禁止された(即日施行)。
- 中国の「反外国不当域外管轄条例」に基づく措置は2件目となる。
企業・自治体への影響
中国とEU双方で事業を展開する企業や、越境M&A・外国補助金規制の対象となる企業において、一方の法的要請に応じることが他方の国内法に抵触するリスクが高まる。法務、経営、総務部門における規制動向の注視と対応方針の検討が必要となる。
対応すべきこと
- 公式出典や最新の法規制情報を確認し、自社への影響範囲を把握する。
- 法務・コンプライアンス部門等へ関係情報を共有する。
- EUのFSR調査や中国の反外国不当域外管轄条例に関する対応方針を管理する。
対象部門: 経営者 総務 法務 経理
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 中国司法部 |
|---|---|
| 業界 | IT・ソフトウェア / 小売 / 製造 |
| 発表日 | 2026-08-21 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年08月21日
中国司法部は8月19日、公告第8号において、「反外国不当域外管轄条例」の規定に基づき、商務部など関連部門との調査によって、EUの「外国補助金規則(FSR)」によるEC大手京東へのEUの調査における中国の企業・団体への越境調査が不当な域外管轄措置であると認定した(注)。その上で、いかなる組織・個人も同措置の執行あるいは執行への協力を行ってはならないとした。本公告は即日施行された。
司法部は同日発表した報道官談話において、EUが京東に対する調査において、中国の企業・団体に対して広範かつ不必要な中国国内の情報を不当に要求したことは国際法治を深刻に損なうものと指摘した。また、EUに対して、「外国補助金」を調査ツールとして乱用することをやめ、EUへの投資や事業展開を行う企業に対する公平・公正・予見可能な市場環境の構築を求めた。EU側が対処しない場合にはさらなる対抗措置の実施も示唆した。
欧州委員会は5月28日、京東によるドイツ小売企業セコノミー (Ceconomy)買収について、FSRに基づく調査開始を公表していた。調査理由としては、京東が融資や税の優遇および中国政府に属する可能性がある企業・団体から提供された補助などを含む「外国補助金」を得ている可能性があり、EU域内市場における公平な競争に影響を与える可能性があると指摘していた。EUの調査結果および本取引に対する最終的な決定は10月2日までに公表するとされていた(「財新」8月20日)。
「反外国不当域外管轄条例」は2026年4月7日に施行されたもので、外国が国際法や国際関係の基本原則に違反し、不当な域外管轄措置(注)を講じ、中国の国家主権、安全、利益を損なった場合、中国政府は相応の措置を取ると定めている(2026年4月15日記事参照)。司法部は2026年5月にもEUのFSRに基づくセキュリティー機器製造の同方威視への調査を不当な域外管轄措置と認定しており、同条例に基づく措置は今回が2件目となる(2026年5月19日記事参照)。
なお、王文涛商務部長は欧州訪問中の6月29日、欧州委員会のマロシュ・シェフチェビッチ貿易・経済安全保障担当委員と共同で中国EU貿易投資協議メカニズムの初会合を主宰し、「貿易・投資の均衡」「輸出管理」「知的財産権」「WTO改革」の作業部会の設置や共同モニタリング・メカニズムの設置で合意した。王部長はその際、EUの経済・貿易政策手段や対中制限措置は、中国EU間の正常な経済・貿易協力および世界のサプライチェーンの安定に深刻な影響を与えていると指摘し、EU側に中国とEUの経済関係全体の観点から中国側の重大な懸念を重視し、経済貿易摩擦の激化を回避するよう求めていた(2026年7月6日記事参照)。
(注)域外管轄は、自国の裁判権の及ばない地域にいる個人や企業などに対し、自国の法律を適用して司法管轄権を行使することを指す。
(小宮昇平)
(中国、EU)
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中国司法部、EUの京東に対するFSR調査を不当域外管轄措置に認定、同調査実施への協力を禁止
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/c0a33fa23489264a.html
時系列
- 2026-04-07 「反外国不当域外管轄条例」が施行された。
- 2026-05-28 欧州委員会が京東によるセコノミー買収についてFSRに基づく調査開始を公表した。
- 2026-08-19 中国司法部が公告第8号を発出し、EUのFSR調査を不当域外管轄措置と認定し、即日施行された。
主な数値
| 公告番号 | 第8号 |
|---|---|
| 欧州委員会によるFSR調査開始公表日 | 2026-05-28日 |
| EU調査結果および最終決定の公表予定日 | 2026-10-02日 |
| 反外国不当域外管轄条例施行日 | 2026-04-07日 |
| 同条例に基づく措置の認定件数 | 2件 |
この事例から確認すべきポイント
中国政府が「反外国不当域外管轄条例」を根拠にEUのFSR調査を不当と認定し、協力禁止を命じた事案です。欧州の補助金規制と中国の国内法制の対立が深まっており、中国市場とEU市場の両方で事業を展開する企業や、越境M&A・調査対応を行う企業にとって、両陣営からの法的義務の衝突リスク(コンディショニング・リスク)が現実化しています。実務上は、情報提供要請への対応やサプライチェーンへの影響、法規制の抵触リスクについて法務・経営部門での厳格なモニタリングと対応方針の策定が不可欠となります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-08-21
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