経済・産業トレンド

エジプトが小麦輸入世界首位維持と予測、2035年までのFAO農業見通し

OECDとFAOの報告書(2026~2035年)によると、エジプトは2035年まで小麦輸入の世界首位を維持すると予測されています。世界の小麦輸出量は2035年までに2億3,500万トンに増加し、ロシアが最大の輸出国となる見込みです。ウクライナ紛争による穀物輸出能力の低下や海上運賃の上昇が国際価格に影響を与える可能性が指摘されており、2024年にはエジプトの小麦輸入額41億1,000万ドルの約80%をロシアとウクライナに依存していました。

この発表の要点

企業・自治体への影響

食品製造業、商社、物流業、および小麦を主要な輸入資源とする国の政府・自治体は、国際的な小麦価格の変動リスクとサプライチェーンの脆弱性増大に注意が必要です。特に、輸入依存度の高い企業や国は、調達戦略の見直しやリスクヘッジ策の検討が求められます。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 総務 経理

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 ジェトロ
業界 農業・食品
発表日 2026-07-28
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年07月28日

OECDは6月29日、国連食糧農業機関(FAO)農業見通し報告書(2026~2035年)(OECD‑FAO Agricultural Outlook 2026‑2035)を発表した。同報告書は、世界の小麦輸出量は2023-2025年の水準から約3,100万トン増加し、2035年までに2億3,500万トンに達すると予測した。ロシアの輸出が6,000万トンに迫り世界全体の輸出量の26%を占め世界最大の小麦輸出国としての地位を維持する一方、世界最大の輸入国はエジプトで世界全体の輸入額の7%を占めるという。北アフリカの人口増加と小麦増産余力の伸び悩みにより、国際市場における需要は引き続き大きいとした。

ロシアのウクライナ侵攻が輸入価格に影響
7月15日付ロイター通信は、ロシアによるウクライナに向けたミサイル・ドローン攻撃の激化によって、ウクライナの黒海港湾を通じた穀物輸出能力が約3分の1失われたとするウクライナ農業団体(UAC)などのコメントを報道した。ロシアはウクライナの港湾施設を弾道ミサイルで度々攻撃しており、港湾は完全に停止してはいないものの、7月2~8日には穀物輸送用貨車のオデーサ向け輸送量が前週比11%減少、穀物輸出量が前週比17%減少しているという。また、港湾地域の穀物保管能力が約3分の1減少しており、船主がウクライナの港への寄港を避ける傾向が強まり、海上運賃が上昇していると報じられた。

IMFによると小麦の国際価格は、2020年は1トン当たり200ドル前後だったが、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後の2022年3月から5月にかけて約450ドルまで急騰、2023年に約250~350ドル、直近では2026年6月に約200ドルと2020年の水準に落ち着いていた。足元の価格は落ち着いているものの、ウクライナの輸出能力低下が長期化した場合には価格上昇要因となる可能性がある。

2024年、全世界の小麦輸入額合計500億ドルのうちエジプトが首位で41億1,000万ドル、全体の8.3%を占めた。同年のエジプトの輸入総額1,130億ドルの3.6%に当たる。エジプトの小麦輸入額41億1,000万ドルのうちロシアからの輸入が24億9,000万ドル(60.1%)、ウクライナからの輸入が7億8,200万ドル(19.1%)を占めた。(ハーバード大学データベース「ハーバード・グロース・ラブ」)。小麦の輸入のほぼ80%をロシアとウクライナに頼っているエジプトにとって小麦価格上昇は外貨準備高減少の要因になる(2023年8月16日記事参照)。

(西澤成世)

(エジプト、ウクライナ、ロシア)

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エジプトが小麦輸入世界首位維持と予測、2035年までのFAO農業見通し

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/fc2089a8b409db7e.html

時系列

主な数値

世界の小麦輸出量増加予測(2023-2025年水準から) 3,100万トン
世界の小麦輸出量予測(2035年まで) 2億3,500万トン
ロシアの小麦輸出量予測 6,000万トン
ロシアの小麦輸出が世界全体に占める割合予測 26%
エジプトの小麦輸入が世界全体に占める割合予測 7%
ウクライナの黒海港湾を通じた穀物輸出能力の損失 約3分の1割合
穀物輸送用貨車のオデーサ向け輸送量減少(7月2~8日) 11%
穀物輸出量減少(7月2~8日) 17%
港湾地域の穀物保管能力減少 約3分の1割合
小麦の国際価格(2020年) 200ドル/トン
小麦の国際価格(2022年3月~5月) 450ドル/トン
小麦の国際価格(2023年) 250~350ドル/トン
小麦の国際価格(2026年6月) 200ドル/トン
2024年全世界の小麦輸入額合計 500億ドル
2024年エジプトの小麦輸入額 41億1,000万ドル
2024年エジプトの小麦輸入額が全世界に占める割合 8.3%
2024年エジプトの輸入総額 1,130億ドル
2024年エジプトの小麦輸入額が輸入総額に占める割合 3.6%
2024年エジプトのロシアからの小麦輸入額 24億9,000万ドル
2024年エジプトのロシアからの小麦輸入割合 60.1%
2024年エジプトのウクライナからの小麦輸入額 7億8,200万ドル
2024年エジプトのウクライナからの小麦輸入割合 19.1%
エジプトのロシアとウクライナへの小麦輸入依存度 ほぼ80%

この事例から確認すべきポイント

この発表は、OECD-FAOの農業見通しに基づき、2035年までの世界の小麦市場の長期的な動向と、ウクライナ紛争がもたらす短期的な影響を詳細に示しています。ロシアが最大の輸出国、エジプトが最大の輸入国としての地位を維持する予測は、国際的な食料安全保障における両国の重要性を示唆します。同時に、ウクライナの穀物輸出能力の低下や海上運賃の上昇が国際価格に与える潜在的な影響は、地政学的リスクがサプライチェーンに与える脆弱性を浮き彫りにしています。特に、エジプトのように特定の国に輸入を大きく依存する国にとっては、価格変動が外貨準備高に与える影響は無視できません。企業は、国際的な穀物価格の変動要因、特に地政学的なリスクを常に監視し、サプライチェーンの多様化やリスクヘッジ戦略の検討が重要となります。長期的な市場予測と短期的な地政学リスクの両方を踏まえた事業計画の策定が求められます。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-07-28

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