エジプトが小麦輸入世界首位維持と予測、2035年までのFAO農業見通し
この発表の要点
- OECD-FAO報告書は、2035年までエジプトが小麦輸入の世界首位を維持し、ロシアが最大の輸出国となると予測している。
- ウクライナ紛争による穀物輸出能力の低下や海上運賃の上昇が、国際的な小麦価格に影響を与える可能性がある。
- エジプトは小麦輸入の約80%をロシアとウクライナに依存しており、価格上昇は外貨準備高減少の要因となる。
企業・自治体への影響
食品製造業、商社、物流業、および小麦を主要な輸入資源とする国の政府・自治体は、国際的な小麦価格の変動リスクとサプライチェーンの脆弱性増大に注意が必要です。特に、輸入依存度の高い企業や国は、調達戦略の見直しやリスクヘッジ策の検討が求められます。
対応すべきこと
- 国際的な小麦市場の動向、特に地政学的リスクによる供給変動や価格上昇要因を継続的に監視する。
- 自社のサプライチェーンにおける小麦の調達先や輸入依存度を確認し、リスク分散の可能性を検討する。
- 関連部門(調達、経営企画、財務など)と連携し、価格変動リスクに対するヘッジ戦略や代替調達先の確保について協議する。
- 公式出典であるOECD-FAO報告書や関連ニュースを定期的に確認し、最新情報を把握する。
対象部門: 経営者 総務 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | ジェトロ |
|---|---|
| 業界 | 農業・食品 |
| 発表日 | 2026-07-28 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月28日
OECDは6月29日、国連食糧農業機関(FAO)農業見通し報告書(2026~2035年)(OECD‑FAO Agricultural Outlook 2026‑2035)を発表した。同報告書は、世界の小麦輸出量は2023-2025年の水準から約3,100万トン増加し、2035年までに2億3,500万トンに達すると予測した。ロシアの輸出が6,000万トンに迫り世界全体の輸出量の26%を占め世界最大の小麦輸出国としての地位を維持する一方、世界最大の輸入国はエジプトで世界全体の輸入額の7%を占めるという。北アフリカの人口増加と小麦増産余力の伸び悩みにより、国際市場における需要は引き続き大きいとした。
ロシアのウクライナ侵攻が輸入価格に影響
7月15日付ロイター通信は、ロシアによるウクライナに向けたミサイル・ドローン攻撃の激化によって、ウクライナの黒海港湾を通じた穀物輸出能力が約3分の1失われたとするウクライナ農業団体(UAC)などのコメントを報道した。ロシアはウクライナの港湾施設を弾道ミサイルで度々攻撃しており、港湾は完全に停止してはいないものの、7月2~8日には穀物輸送用貨車のオデーサ向け輸送量が前週比11%減少、穀物輸出量が前週比17%減少しているという。また、港湾地域の穀物保管能力が約3分の1減少しており、船主がウクライナの港への寄港を避ける傾向が強まり、海上運賃が上昇していると報じられた。
IMFによると小麦の国際価格は、2020年は1トン当たり200ドル前後だったが、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後の2022年3月から5月にかけて約450ドルまで急騰、2023年に約250~350ドル、直近では2026年6月に約200ドルと2020年の水準に落ち着いていた。足元の価格は落ち着いているものの、ウクライナの輸出能力低下が長期化した場合には価格上昇要因となる可能性がある。
2024年、全世界の小麦輸入額合計500億ドルのうちエジプトが首位で41億1,000万ドル、全体の8.3%を占めた。同年のエジプトの輸入総額1,130億ドルの3.6%に当たる。エジプトの小麦輸入額41億1,000万ドルのうちロシアからの輸入が24億9,000万ドル(60.1%)、ウクライナからの輸入が7億8,200万ドル(19.1%)を占めた。(ハーバード大学データベース「ハーバード・グロース・ラブ」)。小麦の輸入のほぼ80%をロシアとウクライナに頼っているエジプトにとって小麦価格上昇は外貨準備高減少の要因になる(2023年8月16日記事参照)。
(西澤成世)
(エジプト、ウクライナ、ロシア)
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エジプトが小麦輸入世界首位維持と予測、2035年までのFAO農業見通し
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/fc2089a8b409db7e.html
時系列
- 2026-06-29 OECDが国連食糧農業機関(FAO)農業見通し報告書(2026~2035年)を発表。
- 2026-07-02 ウクライナの黒海港湾における穀物輸送用貨車のオデーサ向け輸送量および穀物輸出量が前週比で減少した期間の開始日。
- 2026-07-15 ロイター通信が、ロシアによるウクライナへのミサイル・ドローン攻撃激化によるウクライナの穀物輸出能力低下を報道。
- 2024 全世界の小麦輸入額合計500億ドルのうちエジプトが首位で41億1,000万ドルを占めた年。
主な数値
| 世界の小麦輸出量増加予測(2023-2025年水準から) | 3,100万トン |
|---|---|
| 世界の小麦輸出量予測(2035年まで) | 2億3,500万トン |
| ロシアの小麦輸出量予測 | 6,000万トン |
| ロシアの小麦輸出が世界全体に占める割合予測 | 26% |
| エジプトの小麦輸入が世界全体に占める割合予測 | 7% |
| ウクライナの黒海港湾を通じた穀物輸出能力の損失 | 約3分の1割合 |
| 穀物輸送用貨車のオデーサ向け輸送量減少(7月2~8日) | 11% |
| 穀物輸出量減少(7月2~8日) | 17% |
| 港湾地域の穀物保管能力減少 | 約3分の1割合 |
| 小麦の国際価格(2020年) | 200ドル/トン |
| 小麦の国際価格(2022年3月~5月) | 450ドル/トン |
| 小麦の国際価格(2023年) | 250~350ドル/トン |
| 小麦の国際価格(2026年6月) | 200ドル/トン |
| 2024年全世界の小麦輸入額合計 | 500億ドル |
| 2024年エジプトの小麦輸入額 | 41億1,000万ドル |
| 2024年エジプトの小麦輸入額が全世界に占める割合 | 8.3% |
| 2024年エジプトの輸入総額 | 1,130億ドル |
| 2024年エジプトの小麦輸入額が輸入総額に占める割合 | 3.6% |
| 2024年エジプトのロシアからの小麦輸入額 | 24億9,000万ドル |
| 2024年エジプトのロシアからの小麦輸入割合 | 60.1% |
| 2024年エジプトのウクライナからの小麦輸入額 | 7億8,200万ドル |
| 2024年エジプトのウクライナからの小麦輸入割合 | 19.1% |
| エジプトのロシアとウクライナへの小麦輸入依存度 | ほぼ80% |
この事例から確認すべきポイント
この発表は、OECD-FAOの農業見通しに基づき、2035年までの世界の小麦市場の長期的な動向と、ウクライナ紛争がもたらす短期的な影響を詳細に示しています。ロシアが最大の輸出国、エジプトが最大の輸入国としての地位を維持する予測は、国際的な食料安全保障における両国の重要性を示唆します。同時に、ウクライナの穀物輸出能力の低下や海上運賃の上昇が国際価格に与える潜在的な影響は、地政学的リスクがサプライチェーンに与える脆弱性を浮き彫りにしています。特に、エジプトのように特定の国に輸入を大きく依存する国にとっては、価格変動が外貨準備高に与える影響は無視できません。企業は、国際的な穀物価格の変動要因、特に地政学的なリスクを常に監視し、サプライチェーンの多様化やリスクヘッジ戦略の検討が重要となります。長期的な市場予測と短期的な地政学リスクの両方を踏まえた事業計画の策定が求められます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-28
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