処方箋薬ユーザーフィー法改正を議論、創薬・バイオ分野の国際展示会「BIO 2026」
この発表の要点
- 米国処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)の第8次改正が議論されており、2028年から2032年までの期間を対象とする。
- 交渉では規制の透明性・予見可能性向上、FDAと申請企業のコミュニケーション強化が焦点となっている。
- FDAは米国での臨床試験促進のため、申請料割引や中小企業向け免除、希少疾病用医薬品へのインセンティブなどを提案している。
企業・自治体への影響
米国で医薬品開発を行うバイオ医薬品企業は、PDUFA改正による審査プロセス、手数料、および臨床試験実施環境の変化に直接的な影響を受けます。特に、規制の予見性向上やコミュニケーション機会の増加は、研究開発部門や法務部門にとって、新薬開発戦略の立案やコンプライアンス体制の強化に影響を与えます。「米国第一」の提案は、米国市場への参入を検討する企業にとって、新たな機会や優遇措置を検討するきっかけとなる可能性があります。
対応すべきこと
- PDUFA第8次改正に関するFDAと議会の交渉状況および最終的な法案内容を継続的に監視する。
- 自社の研究開発部門、法務部門、事業開発部門と連携し、改正内容が新薬開発計画や米国市場戦略に与える影響を評価する。
- 米国での臨床試験実施を検討している場合、「トライアル・ブレイザー」パイロットプログラムや申請料割引などの優遇措置の適用可能性を調査する。
- CMCプロセスにおける問題解決のため、FDAとの審査前・審査中の意見交換機会の活用を検討し、申請却下リスクの低減を図る。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
|---|---|
| 業界 | 医薬品・バイオテクノロジー |
| 発表日 | 2026-07-09 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月09日
世界最大級の創薬・バイオ分野の国際展示会「BIO 2026」が6月22~25日に、米国カリフォルニア州サンディゴで開催された(2026年7月9日記事参照)。会期中の6月24日には「処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)」改正(第8次処方箋薬ユーザーフィー法)に何が期待できるか」と題するパネルセッションが開催され、展示会主催者のバイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)のPDUFA交渉担当者らが登壇し、バイオ医薬品開発企業にとっての留意点などを議論した。
PDUFAは、1992年に成立した法律で、米国食品医薬品局(FDA)が医薬品審査の申請者から手数料を徴収することを認めるもの。この法律によりFDAの財源は拡大し、2025年には本手数料が同局予算の約50%を占めている(注1)。PDUFAは5年ごとに再承認が必要で、現行の第7次PDUFAは2027年9月まで、第8次PDUFAは2028~2032年までと定められている。
企業が医薬品審査の迅速化のためにFDAに手数料を支払っていることから、産業界はPDUFAの更新にあたって、規制の予見可能性の向上や各種政策に関する取り組みについてFDAと協議できる。FDAとの協議は通常、業界団体大手のBIOと米国研究製薬工業協会(PhRMA)が行う。その後、FDAが書簡を連邦議会へ提出する。今回の書簡提出期限は2027年1月15日までとなっており、議会は現行制度が失効する2027年9月までに法案を可決する必要がある。現状、予備的な交渉は2026年5月15日に終了したが、提出前の内部修正や議会向け文言の起草が残っている。
パネルセッションの様子(ジェトロ撮影)
パネルセッションでは、第8次PDUFAに盛り込まれる内容について議論した。BIOのバイスプレジデントのスティーブ・バーマン氏は、BIOがFDAとの交渉に際し、規制の透明性、予見可能性、およびFDAと申請企業のコミュニケーションという枠組みに焦点を置いていると指摘した。一方で、PDUFA交渉においてBIOを代表したアネッタ・ボーレガード氏は、FDAは交渉において、米国で第I相臨床試験を開始する場合の申請料の50%の割引、米国の中小企業向け免除措置、希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ、注2)の申請に対するインセンティブなど、「米国第一に基づく提案が示された」と述べた。
パネルではまた、「トライアル・ブレイザー(Trial Blazer、注3)」パイロットプログラムについても議論した。登壇者らは、これらがPDUFAに盛り込まれる可能性が高いとみており、実現した場合、米国での臨床試験実施の魅力が高まると指摘した。
バーマン氏はまた、新薬を研究段階から患者に届けられる量産段階へと橋渡しする「化学・製造・品質管理」(CMC、注4)のプロセス上の問題により、初回審査で申請が却下される事例を特に注目すべき問題として挙げた。その上で、審査前および審査中に意見交換の機会を増やすことで、申請者が却下される前に問題を解決できるようになると述べた。
産業界とFDAの交渉を経て書簡が議会に提出された後、議会は第8次PDUFAの内容を最終決定する。議会が内容を追加することも可能だ。登壇者らは、初期段階の臨床開発に関する中国との競争力(2026年3月26日記事参照)、医薬品価格(2026年4月28日記事参照)、希少疾患分野などに関する政策課題を、議会が法案に追加する可能性があると指摘した。
(注1)FDAの予算概要については、2026年4月17日記事参照。
(注2)希少疾患を治療するための医薬品。商業的な採算が取りにくいことが多いため、開発を促進するための各種インセンティブや法制度が整備されている。
(注3)米国保健福祉省が6月22日に発表した。第I相臨床試験の迅速化と、米国内での臨床試験実施の促進を目的としている。
(注4)CMCの不備は、医薬品申請が却下される主な理由。一般的な却下理由としては、施設検査に関する問題、製品中の不純物、および安定性データが挙げられる。
(大垣ジャスミン)
(米国)
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処方箋薬ユーザーフィー法改正を議論、創薬・バイオ分野の国際展示会「BIO 2026」
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/b9faa60a38a9ec49.html
時系列
- 1992 処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)が成立
- 2025 PDUFA手数料がFDA予算の約50%を占める
- 2026-05-15 第8次PDUFAに関する予備的な交渉が終了
- 2026-06-22 米国保健福祉省が「トライアル・ブレイザー」パイロットプログラムを発表
- 2026-06-22 世界最大級の創薬・バイオ分野の国際展示会「BIO 2026」が開催開始
- 2026-06-24 BIO 2026会期中に「処方箋薬ユーザーフィー法改正に何が期待できるか」と題するパネルセッションが開催
- 2026-06-25 国際展示会「BIO 2026」が終了
- 2027-01-15 FDAが連邦議会へ書簡を提出する期限
- 2027-09 現行の第7次PDUFAの失効期限、議会が法案を可決する必要がある期限
- 2028 第8次PDUFAの対象期間が開始
- 2032 第8次PDUFAの対象期間が終了
主な数値
| PDUFA成立年 | 1992年 |
|---|---|
| FDA予算に占めるPDUFA手数料の割合 | 50% |
| PDUFA再承認周期 | 5年 |
| 第7次PDUFA有効期限 | 2027年9月まで |
| 第8次PDUFA対象期間 | 2028~2032年まで |
| FDA書簡提出期限 | 2027年1月15日まで |
この事例から確認すべきポイント
この発表は、米国における医薬品開発・承認プロセスに大きな影響を与えるPDUFAの改正動向を示しています。FDAの財源の約半分を占める手数料制度の変更は、バイオ医薬品開発企業にとって事業計画や研究開発戦略に直結する重要な要素です。規制の透明性、予見可能性の向上、FDAとのコミュニケーション強化は、企業が新薬開発を効率的に進める上で極めて重要であり、今回の議論の焦点となっています。「米国第一に基づく提案」や「トライアル・ブレイザー」のようなパイロットプログラムは、米国での臨床試験実施を促進し、国際的な医薬品開発競争における米国の優位性確保を目指す動きと解釈できます。また、「化学・製造・品質管理」(CMC)プロセス上の問題による申請却下事例への対応強化は、開発企業が初期段階から品質管理を徹底し、FDAとの早期対話を通じて問題を解決することの重要性を示唆しています。議会が医薬品価格や希少疾患分野などの政策課題を追加する可能性も指摘されており、最終的な法案の内容は、単なる手数料制度の変更に留まらない広範な影響を持つ可能性があります。企業は、今後の交渉プロセスと議会での議論の進捗を注視し、自社の研究開発戦略や米国市場への参入戦略に与える影響を評価する必要があります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-09
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