経済・産業トレンド 補助金相殺関税の一時停止

トランプ米大統領、モロッコ産リン酸肥料への補助金相殺関税を一時停止、最長8カ月間

米国は、食料安全保障とサプライチェーンの混乱を理由に緊急事態を宣言し、モロッコ産リン酸肥料への補助金相殺関税(CVD)を最長8カ月間一時停止する大統領布告を発表した。この措置は、農業生産と国民の食料供給に不可欠な肥料の安定供給を確保することを目的としている。一時停止は2026年6月29日から開始され、ロシア産リン酸肥料は対象外。

この発表の要点

企業・自治体への影響

米国の農業関連企業、特にリン酸肥料を輸入・使用する農家や肥料供給業者は、一時的なコスト削減と供給安定化の恩恵を受ける可能性がある。国際的な肥料市場や貿易動向に影響を与え、関連する化学品製造業や物流業にも間接的な影響が及ぶ。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 経理 法務 広報

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 ジェトロ
業界 農業・貿易
発表日 2026-07-02
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年07月02日

米国のドナルド・トランプ大統領は6月29日、モロッコ産のリン酸肥料の輸入に課されている補助金相殺関税(CVD)を最長8カ月、一時停止するよう指示する大統領布告を発表した。同日、ファクトシートも発表した。

1930年関税法第318条(a)項は、大統領に対し、戦争状態にある場合などに緊急事態を宣言し、その間、緊急救援活動に使用される食料、衣類、医療・外科用などを無関税で輸入できる権限を財務長官へ付与することを認めている。トランプ氏は今回、リン酸肥料が農業生産や国民の食料供給、米国の食料安全保障に不可欠だとした上で、生産地域での紛争などによりサプライチェーンが混乱状態にあり、米国の農業需要を満たすのに十分な肥料の供給が脅かされているとして緊急事態を宣言した。国連食糧農業機関(FAO)によると、全世界の肥料の20~30%がホルムズ海峡を通過しているが、米国・イスラエルとイランの軍事衝突により、同海峡の航行は制限されている。

モロッコ産のリン酸肥料に対するCVDは、商務省が2021年2月に賦課を決定し、直近では16.81%が課されていた(注)。CVDの一時停止は、布告発表と同日の2026年6月29日から開始し、期間は8カ月間、あるいは緊急事態が終結するまでのいずれか早い時期までとなっている。なお、モロッコ産と同時期にCVDが課されたロシア産リン酸肥料については、今回の一時停止の対象外だ。

ホルムズ海峡が封鎖されたことを受け、米農場局連盟(AFB)は3月、輸入肥料製品に対するCVDの一時停止を求める書簡をトランプ氏に送っていた(米通商専門誌「インサイドUSトレード」6月30日)。布告の発表を受け、AFBは声明を発表し、農家が支援を必要としている時期に決定された今回の措置を「常識的」と評価しつつ、トランプ氏の対応を歓迎した。また、米大豆協会(ASA)のスコット・メッツガー会長は、肥料を「大豆農家が毎年直面する最も大きなコストの1つ」とした上で、モロッコ産輸入品に対するCVDの停止はその供給状況を改善し、「農家が2027年の作付け計画を立て始め、ますます難しくなる資金繰りの判断に直面しているこの時期に、生産コストの削減に寄与する」と述べた。

(注)モロッコ国営リン鉱石公社(OCP)の生産するリン酸肥料に対するCVD税率。2021年2月の導入当初は、19.97%。

(滝本慎一郎)

(米国、モロッコ)

ビジネス短信 1e352e8d4137087b

関連情報

dummy

もっと見る

ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

トランプ米大統領、モロッコ産リン酸肥料への補助金相殺関税を一時停止、最長8カ月間

ジェトロ公式SNSアカウント

出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/1e352e8d4137087b.html

時系列

主な数値

直近のモロッコ産リン酸肥料CVD税率 16.81%
導入当初のモロッコ産リン酸肥料CVD税率 19.97%
CVD一時停止期間 8カ月
全世界の肥料のうちホルムズ海峡を通過する割合 20~30%

この事例から確認すべきポイント

本事例は、国際情勢の緊迫化がサプライチェーンに与える影響と、それに対する政府の緊急対応を示すものである。米国政府は、リン酸肥料を農業生産と食料安全保障に不可欠と位置づけ、生産地域の紛争による供給不安に対し、関税の一時停止という形で介入した。これは、特定の輸入品に対する関税措置が、国内産業保護だけでなく、国家安全保障や国民生活の安定という観点からも柔軟に運用されうることを示唆する。また、モロッコ産のみを対象とし、ロシア産を除外した点は、外交関係や供給源の多様性、あるいは特定の地政学的リスクへの対応を考慮した選択である可能性が考えられる。企業は、国際的な貿易政策が突発的に変更されるリスクを認識し、サプライチェーンの脆弱性評価と代替調達先の検討を継続的に行う必要がある。特に、重要物資とされる品目については、政府の介入可能性を考慮したリスクシナリオを策定することが求められる。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-07-02

関連事例

自社のプレスリリースをPRazeに掲載しませんか?

無料でプレスリリースを掲載する