EU首脳、中国を念頭に調達先の多角化措置の策定を欧州委に指示
この発表の要点
- EU首脳は欧州委員会に対し、重要物資の調達先多角化を企業に義務付ける法案の策定を指示した。
- この法案は、特定の国を対象としないとしつつも、中国からの輸入増加とEU域内製造業の競争力侵食への懸念が背景にある。
- 次期中期予算計画(MFF)については制度改革で合意したものの、予算額の交渉は難航しており、年内の政治合意を目指している。
企業・自治体への影響
EU域内で事業を展開する企業やEUと取引のある企業、特に製造業やサプライチェーンに関わる企業は、将来的に重要物資の調達先多角化を義務付けられる可能性があり、サプライチェーン戦略の見直しが求められる。また、次期MFFの予算交渉の行方は、EUの経済政策や投資戦略に影響を与えるため、関連する業界や部門は動向を注視する必要がある。
対応すべきこと
- EUの調達多角化措置に関する法案の動向を継続的に監視する。
- 自社のサプライチェーンにおける重要物資の調達先を再評価し、多角化の可能性を検討する。
- 欧州委員会からの公式発表や詳細な法案内容が公開され次第、内容を確認し、自社への影響を分析する。
- 関係部門(経営者、法務、経理、広報など)と情報を共有し、対応方針を協議する。
対象部門: 経営者 法務 広報 経理
対応期限:策定中
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
|---|---|
| 業界 | 製造業 |
| 発表日 | 2026-06-25 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月25日
欧州理事会(EU首脳会議)は6月18~19日、ブリュッセルで公式会合を開催した(プレスリリース)。議題は、ウクライナ支援、中東情勢、競争力強化など多岐にわたったが、中心となったのは中国政策と2028年からの次期中期予算計画(MFF)だ。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は会合後の記者会見で、中国との建設的対話を続ける一方で、多角化措置に関する法案を提案する方針を明らかにした。法案は、欧州理事会の要請を受けたものであり、総括には盛り込まれなかったものの、重要物資について複数の調達先の確保を企業に義務付ける内容になるとみられる。
フォン・デア・ライエン委員長は、法案は特定の域外国を対象にしたものではないとしつつ、中国からの輸入は過去5年で45%増加し、2025年には貿易赤字が3,600億ユーロに達し、過去最大に次ぐ高水準となったと指摘。問題は単に安価な中国製品が流入しているということではなく、過剰生産によりEU域内の製造業の競争力が侵食されている点にあるとの認識を示した。さらに、デカップリングではなくデリスキング(リスク軽減)に取り組むとの対中政策が2023年に採択されたにも関わらず(2023年7月4日記事参照)、企業のデリスキング対策の進捗が十分でないとして、法案の必要性を強調した。
政治専門紙ポリティコは、加盟国間で通商防衛策の強化に向けた新たな措置が必要だとの認識が広がっていると報じている。これまで中国による対抗措置を懸念し強硬策に消極的だったドイツも規制強化支持の方向に傾いているとされる。
次期MFF、制度改革で合意も予算額の交渉は道半ば
フォン・デア・ライエン委員長は、欧州競争力基金や国家・地域パートナーシップ計画といった次期MFFの制度改革(2025年7月22日記事参照)に関し合意に達したと強調した。ただし、肝心の予算額については、合意から程遠いのが現状だ。
議長国を務めるキプロスは、現行MFFから大幅増となる欧州委案を踏まえつつ、これから2%減額した予算案を交渉用のたたき台として提示した。ポリティコによると、EUからの補助金が供出額を上回る南欧・東欧の純受益国は、共通農業政策(CAP)や結束政策の予算維持を評価し支持する一方、西欧・北欧の純拠出国は、予算規模が依然として大きすぎる上に戦略分野への投資予算が削減されているとして反発している。
2027年4月のフランス大統領選の結果次第では合意形成が一層困難になる可能性があることから、欧州理事会は年内の政治合意を目指している。
(吉沼啓介)
(EU、中国)
ビジネス短信 6465b560984f04b2
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EU首脳、中国を念頭に調達先の多角化措置の策定を欧州委に指示
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/6465b560984f04b2.html
時系列
- 2023 デカップリングではなくデリスキング(リスク軽減)に取り組むとの対中政策が採択
- 2026-06-18 欧州理事会(EU首脳会議)がブリュッセルで公式会合を開催
- 2026-06-19 欧州理事会(EU首脳会議)がブリュッセルで公式会合を開催
- 2026 欧州理事会が次期MFFの年内政治合意を目指す
- 2027-04 フランス大統領選が予定されており、MFF合意形成に影響を与える可能性
主な数値
| 中国からの輸入増加率 | 45% |
|---|---|
| 2025年貿易赤字予測 | 3600億ユーロ |
この事例から確認すべきポイント
本発表は、EUが中国への経済的依存度を低減し、サプライチェーンのレジリエンス強化を図る「デリスキング」政策を具体化する動きを示しています。特に、重要物資の調達先多角化を企業に義務付ける法案が提案される可能性は、EU域内で事業を展開する企業やEUと取引のある企業にとって、サプライチェーン戦略の見直しを迫る重要な転換点となるでしょう。特定の国を対象としないとしながらも、中国との貿易不均衡が背景にあることは明らかであり、企業は地政学的リスクを考慮した調達戦略の策定が急務となります。また、次期MFFの予算交渉の行方も、EUの経済政策や投資戦略に影響を与えるため、継続的な注視が必要です。企業は、今後の法案の詳細やMFFの合意内容を注視し、自社の事業への影響を早期に評価し、対応策を検討することが求められます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-25
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