第209回労働政策審議会労働条件分科会 議事録(2026年5月13日)
この発表の要点
- 賃金のデジタル払い制度について、施行後2年を経て評価と見直しが議論された。
- 資金移動業者の破綻時における資産保全要件の緩和や、指定代替口座の要件見直しが検討されている。
- 資金決済法改正により、保証機関等による利用者への直接返還が可能となる見込みであり、これと連携した制度改正が焦点。
企業・自治体への影響
賃金のデジタル払い制度の変更は、資金移動業者、企業の人事・経理部門、および従業員の賃金受取方法に影響を与える可能性があります。特に資金移動業者にとっては、資産保全に関するコスト負担の軽減が期待される一方、労働者保護の観点からの議論が継続されるため、今後の動向を注視する必要があります。
対応すべきこと
- 厚生労働省および金融庁の今後の発表を継続的に確認する。
- 賃金デジタル払いを導入済みの企業は、制度変更の動向を注視し、社内規定やシステムへの影響を評価する。
- 資金移動業者は、資産保全要件の緩和や指定代替口座に関する規制緩和の具体的な内容を確認し、事業計画に反映させる。
- 人事・経理部門は、従業員への賃金支払い方法の選択肢拡大や、関連する社内手続きの変更に備える。
対象部門: 経営者 総務 法務 経理 広報
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 厚生労働省 |
|---|---|
| 業界 | 金融 |
| 発表日 | 2026-05-13 |
| 分類 | 制度・法令改正 |
| 地域 | 東京都 |
発表された内容
2026年5月13日 第209回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
2026年5月13日 第209回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和8年5月13日(水) 10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第22~24会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
出席者
公益代表委員
安藤委員、川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
労働者代表委員
亀田委員、櫻田委員、佐藤(好)委員、椎木委員、菅村委員、春川委員、古川委員
使用者代表委員
加藤委員、鈴木委員、田中委員、田上委員、鳥澤委員、福本委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、松本審議官(労災、賃金担当)、松下総務課長、川口労働条件政策課長、田邉労働条件確保改善対策室長、大野賃金課賃金支払制度業務室長、中島労働条件政策課長補佐、来嶋労働条件政策課長補佐
オブザーバー
小澤金融庁企画市場局デジタル・分散型金融企画室長
議題
(1)資金移動業者の口座への賃金支払制度について
(2)労働市場改革分科会等について(報告事項)
議事
○山川分科会長 おはようございます。
では、定刻になりましたので、ただいまから第209回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催とさせていただいております。
議事に入ります前に、本分科会委員の交代につきまして、事務局から御紹介をお願いします。
○事務局 本分科会委員の交代につきまして、御報告いたします。
お手元の参考資料No.1として「労働条件分科会 委員名簿」を配付しております。
労働者代表の冨髙裕子委員が御退任され、日本労働組合総連合会総合政策推進局長の菅村裕子委員に御就任いただいております。
事務局からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の松田惣佑委員、使用者代表の佐藤晴子委員、兵藤美希子委員が御欠席と承っております。
では、カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
○山川分科会長 では、本日の議題に入ります。
議題(1)は「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」です。
本議題は、金融庁の所管する事項に関係しておりますので、労働政策審議会運営規程第4条に基づきまして、金融庁の御担当の方にオブザーバーとして御出席いただいております。
では、事務局から説明をお願いします。
○大野賃金課賃金支払制度業務室長 賃金課でございます。
それでは、私から資料No.1の「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」御説明させていただきます。
1枚ページをおめくりいただきまして、資料右下の1ページ目を御覧いただければと思います。昨年、資金移動業者の口座への賃金支払制度、いわゆる賃金のデジタル払いが施行後2年を経過いたしまして、労働条件分科会において、制度の評価や見直しについて御意見をいただきました。
「制度の評価」につきましては、賃金の受け取り方法の選択肢を広げたことは評価という御意見、一方で、賃金のデジタル払いのニーズ調査によれば、労使双方のニーズはあまりないという印象といった御意見がありました。
「制度の見直し」については、資金保全要件、指定代替口座の必置要件は、労働者の生活の糧である賃金が安全かつ確実に支払われるために必要不可欠ということを踏まえた規制であること。労働者保護の観点から設けられたそういった中核的な要件について、今後の検討では、そのことを十分に踏まえた議論が必要であること。賃金のデジタル払いが実質的に開始されてから時間が経過していない中で、指定要件の見直しを議論するのは時期尚早であること。当面は施行状況を把握しつつ、金融リテラシーを高めていく教育への対応が重要であることといった御指摘をいただいたところです。
2枚目をおめくりいただければと思います。資金移動業者の口座への賃金支払制度の指定の状況や制度利用状況をまとめたものでございます。
まず、上の段の「指定の状況」ですが、制度施行以降、本日時点で4社が指定されております。口座の受入上限額や保証機関は、それぞれの資金移動業者ごとに設定しているところでございます。このほか、現在、指定申請を検討している複数の資金移動業者に対する事前相談に対応しているところでございます。
資料の下段「制度利用状況」につきましては、四半期ごとに資金移動業者からの報告を求めておりまして、その結果をまとめたものになっております。一番左側、労働者の口座件数ですが、直近、令和8年3月時点で約5万件となっておりまして、真ん中の表、1か月間で決済・送金等に利用された取扱金額については2.9億円となっております。いずれも最初の指定以降、上昇傾向にあるところです。右側の表は、労働者1口座当たりの残高の平均、こちらは、あるスポットで口座残高を見たものですが、直近では約2,300円程度となっております。
3ページ目をおめくりいただければと思います。昨年6月に閣議決定されました規制改革実施計画の関係事項を抜粋したものになります。a、bについては、厚労省において措置済みの事項でありますが、cについて、厚労省は金融庁と連携して、労働者の賃金の安全性・確実性を担保しつつ、賃金のデジタル払いの社会実装を実効的に促進する観点から、以下の各事項の見直しの要否を含め検討し、結論次第、速やかに必要な措置を行うとされておりまして、①~③の3つの事項が記載されてございます。
①が「資金移動業者の破綻時の資産保全要件」ということで、資金決済に関する法律の見直しによりまして、保証会社等による労働者に対する直接返還が可能となったことを踏まえて、資産保全要件の廃止または大幅な緩和を行うこと。その際、破綻時に6営業日以内に労働者に弁済するとの要件についても、併せて見直しを行うこと。
②が「指定代替口座の必置要件」でして、賃金デジタル払いの口座上限を超えた場合の送金先とか、資金移動業者の破綻時などに労働者に資産を返還する際に、口座として労働者があらかじめ指定代替口座を登録することになっておりますが、これについて、預貯金口座等以外の手法を認めるということ。
③が「その他の要件」として2点ありまして、1点目が、指定に当たって要件としている個人情報の取扱いに係る第三者機関による認証を求めないということ。2点目として、口座から現金での払出し方法において、1円単位での払出し要件を廃止して、例えば紙幣単位での払出しを認めること。これらにつきまして、見直しの要否を含め、検討することとされているところでございます。
このうち、①については、金融庁の資金決済法の見直し内容とも様々関連してくる論点でございますが、本日は、まず「①資金移動業者の破綻時の資産保全要件」の論点について、次ページ目以降の資料で御説明さしあげて、御議論いただきたいと考えております。
4ページをおめくりいただければと思います。資金移動業者の資産保全要件について、資金決済法に基づき、資金移動業者全体に係る規制と、労働基準法令に基づき、賃金デジタル払いを行う資金移動業者に係る規制の現状をまとめたものとなります。
まず、現行の資金決済法においては、利用者から受け入れた資金を保全することとなっておりますが、資金移動業者の破綻時には、保全された資金は供託手続を通じて国が還付手続を実施することとしておりまして、利用者への資金の還付には最低170日以上という期間を要する制度となっております。また、資金決済法に基づく資産保全は、基準期間ごとに必要となる保全額を算出し、各基準期間の末日から3営業日以内に資産保全を行う仕組みとなっているところでございます。
一方、賃金のデジタル払いにおいては、十分な額が早期に労働者に支払われるようにするという観点から、資金決済法に基づく供託等の手続に加えまして、万が一、破綻した場合は、弁済の請求後6営業日以内に労働者に対して負担する債務の全額を弁済する仕組みを講じることとされております。この要件につきましては、労働者保護の観点から、銀行と同程度の資金保全の仕組みとすることが必要との御意見を踏まえるとともに、資金移動業者の対応の実現可能性も勘案しつつ、制度設計がなされたものでございますが、資金移動業者からは、資金決済法と賃金デジタル払いで保証が重複して、負担が重い。それから、賃金デジタル払いでは、実際の口座残高にかかわらず、常に口座の上限額を負担しなければならず、コスト負担が重い、6営業日以内に労働者に弁済しなければならない体制の構築は負担が重いといった御意見があるところです。
こうした中、昨年6月に資金決済に関する法律の一部改正法が成立いたしまして、資金移動業者が破綻した場合の利用者への返還方法について、新たに銀行等の保証機関や信託会社等による直接返還が可能となりました。本法律は、本日時点ではまだ施行されておりませんが、改正法では、法律の公布から1年以内の施行とされているところです。
また、政令・府令など、下位法令の改正についても同様に、現時点では公布・施行されておりませんが、改正案のパブリックコメントは実施済みでありまして、現在、公布に向けた準備が進められているところと承知しております。
以降は、その内容に沿って御説明させていただきます。
5ページ目をおめくりください。資金決済に関する法律の一部改正
出典: 厚生労働省
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73976.html
時系列
- 2025-06-XX 規制改革実施計画が閣議決定
- 2025-06-XX 資金決済に関する法律の一部改正法が成立
- 2026-03-XX 賃金デジタル払いにおける労働者の口座件数が約5万件に達する
- 2026-05-13 第209回労働政策審議会労働条件分科会が開催され、資金移動業者の口座への賃金支払制度について議論
主な数値
| 指定された資金移動業者数 | 4社 |
|---|---|
| 労働者の口座件数(令和8年3月時点) | 50000件 |
| 1か月間の取扱金額(令和8年3月時点) | 2.9億円 |
| 労働者1口座当たりの残高平均(直近) | 2300円 |
| 現行資金決済法における資金還付にかかる最低期間 | 170日以上 |
| 賃金デジタル払いにおける破綻時の弁済期間 | 6営業日以内 |
この事例から確認すべきポイント
今回の労働政策審議会労働条件分科会では、賃金のデジタル払い制度の評価と見直しが主要な議題となりました。制度施行後2年が経過し、利用状況は上昇傾向にあるものの、労使双方のニーズは限定的との意見も示されています。規制改革実施計画に基づき、資金保全要件や指定代替口座の必置要件、個人情報認証、1円単位払出し要件などの見直しが検討されており、特に資金決済法改正による資金移動業者の破綻時の利用者への直接返還が可能となる見込みが、賃金デジタル払いにおける資産保全要件の緩和に大きく影響すると考えられます。労働者保護と資金移動業者の負担軽減のバランスをいかに取るかが今後の議論の焦点であり、金融庁との連携による下位法令の改正動向が注目されます。企業は、今後の制度変更が賃金支払い実務に与える影響を注視する必要があります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-23
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