経済・産業トレンド

米国とメキシコ、USMCA見直しで2回目の協議、分野横断で議論進展

米国通商代表部(USTR)は、メキシコとの間で米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しに向けた2回目の公式協議を6月15~17日に実施しました。両国は工業製品の原産地規則、経済安全保障、農業、労働、環境、規制の整合性など多岐にわたる分野で議論を進め、規制整合性委員会の設置で合意しました。7月1日には3カ国による共同見直し会合が予定されており、USMCAの延長合意の可否が焦点となります。原産地規則の厳格化が指摘されており、北米に進出する日系企業のサプライチェーンや特恵関税の利用に影響を及ぼす可能性があります。

この発表の要点

企業・自治体への影響

北米にサプライチェーンを持つ製造業(特に自動車、鉄鋼、アルミニウム、化学品、化粧品、ICT、医療機器・医薬品関連)は、USMCAの原産地規則変更により特恵関税の適用条件が変わる可能性があります。これにより、関税コストの増加やサプライチェーンの見直しが必要となるリスクがあります。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 法務 経理 広報 総務

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 ジェトロ
発表日 2026-06-22
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年06月22日

米国通商代表部(USTR)は6月18日、ジェミソン・グリア代表とメキシコのマルセロ・エブラル経済相の共同声明を発表した。両国は6月15~17日にかけて、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しに向けた2回目の公式協議を実施していた。また6月18日には両氏が会談し、USMCA見直しのほか2国間の貿易関係について協議した。

共同声明によれば、両国はUSMCA見直しに向け、特定の工業製品の原産地規則および経済安全保障に関する議論を進めるとともに、農業、労働、環境に関する議論を開始した。また、鉄鋼、アルミニウム、自動車の貿易についても協議した。さらに、両国での規制の整合性を高めるため、USMCA第12章の履行状況を検証する委員会の設置を進めることで合意した。USMCA第12章では、化学品や化粧品、情報通信技術(ICT)、医療機器・医薬品などの分野において、3カ国間の貿易円滑化のための共通ルールや規制の調整を規定している。

5月に実施された1回目の協議では、自動車の原産地規則、鉄鋼・アルミニウム、経済安全保障について議論したほか、医療機器、医薬品、化粧品分野における規制の整合性の向上に向けた協力を推進することで一致していた(2026年6月1日記事参照)。

USMCA見直しに向けた協議は7月以降も続く見通し
エブラル経済相は会談後、メキシコ、カナダ、米国の3カ国が、7月1日にオンラインで会合を開き、共同見直しを正式に開始する予定だと明らかにした(米通商専門誌「インサイドUSトレード」6月18日)。2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められているが、発効6年後に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、その時点からさらに16年間延長される(注1)。

一方、米国とメキシコの3回目の2国間協議は7月20日の週に予定されている。米国とカナダは非公式協議にとどまり、正式な2国間交渉はまだ開始されていない。このため、7月1日のUSMCA見直し会合で3カ国が延長に合意する可能性は低いとみられている(注2)。エブラル経済相も、7月中に結論が出る可能性は低いとの見通しを示している(2026年6月16日記事参照)。

北米に進出している多くの日系企業のサプライチェーンは、USMCAの特恵関税(無税)の利活用や米国の低い関税率を前提に構築されている。今回の見直しを通じてUSTRは、域内原産割合(RVC)の引き上げや中国製部品の利用制限など、原産地規則を厳格化する方針だと指摘されている(注3)。仮に厳格化された原産地規則を満たせず無税適用が受けられなくなれば、在北米日系企業のビジネスに影響する。米国による追加関税が常態化する中、その影響は一層大きくなり得る(注4)。USMCAの行方は引き続き注目する必要がある(注5)。

(注1)延長に合意できなかった場合、その後も毎年見直しが継続され、合意に至った時点から16年間延長される。最終的に合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
(注2)メキシコ経済省の元通商担当次官であるフアン・カルロス・ベイカー氏は、2026年中に結論が出ることはないとの見通しを示している(2026年6月11日記事参照)。
(注3)1回目の米国とメキシコの協議では、USTRが完成車のRVCを75%から82%へ引き上げ、そのうち米国原産割合を50%とするよう提案したと報じられている(「ロイター」5月29日)。なお、この米国原産割合の引き上げは、労働付加価値割合(LVC)の引き上げを意味するとの指摘もある。現在のUSMCAの原産地規則の詳細については、2019年5月8日付地域・分析レポート参照。
(注4)USMCAの原産地規則を満たす品目については、追加関税の対象外となる、または関税率が緩和される場合がある。
(注5)USMCA見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。

(赤平大寿)

(米国、メキシコ、カナダ)

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/e37e70a087fb9bdd.html

時系列

主な数値

USMCA発効日 2020-07-01日付
USMCAの条文上の失効規定 16年
USMCA見直し会合の実施時期 6年
USMCA延長合意時の期間 16年間
完成車の域内原産割合(RVC)引き上げ提案 82パーセント
完成車の米国原産割合提案 50パーセント

この事例から確認すべきポイント

今回の発表は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しが本格化している状況を示しています。2020年7月1日の発効から6年が経過し、条文上の見直し会合の時期を迎えているため、今後の協議の行方は北米地域で事業を展開する企業にとって極めて重要です。特に、工業製品の原産地規則の厳格化が指摘されており、完成車の域内原産割合(RVC)や米国原産割合の引き上げ提案が報じられています。これにより、北米に進出している日系企業のサプライチェーンは、特恵関税(無税)の適用条件を満たせなくなるリスクに直面する可能性があります。規制の整合性向上に向けた委員会の設置合意は前向きな動きですが、7月1日の3カ国会合での延長合意は現時点では不透明とされており、協議は長期化する見通しです。企業は、今後の交渉の進捗を継続的に監視し、自社のサプライチェーンや貿易実務への影響を評価し、必要に応じて対応策を検討する準備を進める必要があります。現時点で取得できた本文からは、詳細な交渉内容や具体的な厳格化の範囲を確認できませんでした。詳細は公式出典をご確認ください。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-06-22

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