中国上海汽車集団、スペインでMG車生産へ、相殺関税や「域内産」要件対応も視野
この発表の要点
- 中国上海汽車集団傘下のMGがスペインに欧州大陸初の製造拠点を設置する計画を発表し、2028年の稼働を目指す。
- この投資は、EUの対中BEV相殺関税や「域内産」要件といった欧州の産業政策への対応を視野に入れている。
- スペイン・ガリシア州政府は本件を戦略的産業プロジェクトに指定し、許認可の迅速化を図るが、中央政府の対内直接投資認可が必要となる。
企業・自治体への影響
自動車メーカー、特にEV関連企業は、EUの貿易政策や「域内産」要件を考慮したサプライチェーン戦略の見直しが求められます。部品メーカーや物流企業は、欧州域内での新たな生産拠点設立に伴うビジネス機会を検討する必要があり、投資誘致を検討する自治体は、既存産業基盤の活用や許認可迅速化の重要性を再認識するでしょう。
対応すべきこと
- EUの対中BEV相殺関税や「域内産」要件など、欧州の産業政策動向を継続的に監視する。
- 自社の欧州事業展開において、サプライチェーン全体での「域内価値創出」の可能性と要件を評価する。
- 欧州での新規投資や拠点展開を検討する際は、スペインのような既存産業基盤と政府の誘致姿勢を持つ地域のインセンティブや許認可プロセスを調査する。
- 非EU企業として欧州への大規模投資を計画する場合、中央政府の対内直接投資認可要件を事前に確認し、対応を準備する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報 総務
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 中国上海汽車集団(SAIC) |
|---|---|
| 業界 | 自動車製造 |
| 発表日 | 2026-06-02 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月22日
中国上海汽車集団(SAIC)傘下のMGは6月2日、欧州大陸初(注)となる製造拠点をスペイン北西部ガリシア州に設置する計画を発表した。初期投資額は約2億ユーロ。2027年着工、2028年稼働を予定し、年産能力は最大12万台を見込む。同拠点を研究開発、先進製造、主要部品供給、スマート物流を統合する産業エコシステムと位置付ける。
ガリシア州政府によると、フェロル外港に製造拠点を建設、近郊アス・ポンテスの産業・物流拠点を整備し、雇用は直接・間接で2,300人規模を見込む。選定の背景には、ステランティスのビゴ工場を中心とする自動車産業基盤、部品供給網、生産・物流人材、港湾インフラがある。スペイン市場においてMGの存在感は高い。2026年1~5月の乗用車販売シェアは3.9%で、ブランド別で上位10位だ。
州政府は本件を戦略的産業プロジェクトに指定し、許認可を迅速化する。ただし、投資確定には非EU企業として中央政府の対内直接投資認可が必要となる。
スペイン既存産業基盤を取り込む中国メーカー
EUの対中バッテリー式電気自動車(BEV)相殺関税や欧州内価値創出を重視する産業政策を背景に、中国系自動車・電池メーカーは欧州域内生産への移行を急ぐ。スペインでは、中国ブランドの現地生産化や、充実した自動車産業基盤や港湾インフラ、比較的低い生産コスト、政府の積極的な誘致姿勢から、関連投資が相次ぐ。EV製造の零跑汽車(リープモーター)はステランティスとの合弁を通じ、サラゴサとマドリードに持つ既存工場の活用を検討する。寧徳時代新能源科技(CATL)はステランティスとサラゴサで最大41億ユーロを投じるリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池工場を建設し、2026年末の生産開始を目指す。奇瑞汽車(チェリー)も現地系EVモーターズ傘下のエブロとの提携により、旧日産バルセロナ工場で2026年秋に試験生産を予定する。
ただし、欧州内で最終組み立てを行うだけで、EUやスペインの支援制度上、直ちに「欧州製」として優遇されるわけではない。EUでは産業加速法案(IAA)や「域内産(Made in EU)」要件の明確化(2026年3月13日記事参照)を通じ、電池、主要部品、研究開発、サプライチェーンを含む域内価値創出が問われ始めている。スペインも2026年の新たな電動車購入支援「Auto+」で「電動・低価格・欧州製」を加算要件に掲げ、この流れを先取りする動きを見せている。
(注)MGは英国発祥のブランドで、SAICによる買収後も英国で車両組み立てが行われていたが、2016年に終了。現在の欧州市場向け供給は中国生産に依存している。
(伊藤裕規子)
(スペイン、中国)
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中国上海汽車集団、スペインでMG車生産へ、相殺関税や「域内産」要件対応も視野
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/54d4ac65ee8a5e13.html
時系列
- 2016-XX-XX MGの英国での車両組み立てが終了
- 2026-06-02 中国上海汽車集団傘下のMGがスペインでの製造拠点設置計画を発表
- 2026-XX-XX 奇瑞汽車が旧日産バルセロナ工場で試験生産を予定
- 2026-XX-XX 寧徳時代新能源科技(CATL)のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池工場が生産開始を目指す
- 2027-XX-XX MGのスペイン製造拠点が着工予定
- 2028-XX-XX MGのスペイン製造拠点が稼働予定
主な数値
| 初期投資額 | 2億ユーロ |
|---|---|
| 年産能力 | 12万台 |
| 雇用規模 | 2300人 |
| スペイン市場乗用車販売シェア(2026年1-5月) | 3.9% |
| CATLの投資額 | 41億ユーロ |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、EUの対中バッテリー式電気自動車(BEV)相殺関税や「域内産」要件といった産業政策が、中国系自動車・電池メーカーの欧州域内生産への移行を加速させている現状を示しています。企業は、国際的な貿易政策や地域ごとの産業振興策、特に現地生産やサプライチェーンにおける「域内価値創出」の要件を継続的に監視し、事業戦略に組み込む必要性が高まっています。スペインのように既存の自動車産業基盤や港湾インフラが充実し、政府が積極的な誘致姿勢を示す地域は、非EU企業にとって戦略的な投資先となり得ます。しかし、単なる最終組み立てだけでなく、電池や主要部品、研究開発を含むサプライチェーン全体での域内価値創出が求められるため、投資計画の策定においては、これらの詳細な要件を深く理解し、対応することが不可欠です。また、非EU企業による大規模投資には、中央政府の認可プロセスが伴う点も考慮すべきです。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-22
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