2025年のEU鉄鋼市場、需要回復も生産は減少、対米輸出も急減
この発表の要点
- 2025年のEU鉄鋼需要は回復したが、粗鋼生産量は減少した。
- 米国の追加関税によりEUの対米輸出が急減し、EUは対抗措置を整備している。
- EUは7月1日から新たな貿易措置を導入予定で、実施規則のパブリックコンサルテーションを実施中である。
企業・自治体への影響
EU域内外の鉄鋼関連企業(製造、商社、物流など)は、需要変動、生産調整、貿易政策の変更に直接影響を受けます。特に米国市場へのアクセスは関税措置により厳しく、輸出戦略の見直しが求められます。EUの新たな貿易措置は、輸入事業者に対し、関税割当量や原産地証明の義務化により、サプライチェーン管理やコンプライアンス体制に影響を与えます。
対応すべきこと
- EUの新たな貿易措置(7月1日導入予定)の詳細と、実施規則のパブリックコンサルテーションの結果を注視する。
- 自社の製品がEUの新たな貿易措置の対象となるか、また米国への輸出に影響があるかを確認する。
- 輸入事業者は、鉄の溶解・鋳造国の証明義務化に対応できるよう、サプライヤーとの連携体制を構築する。
- 関係部門(貿易、生産、法務、経理など)へ本発表内容を共有し、今後の事業戦略への影響を検討する。
対応優先度: 中 EU鉄鋼市場の動向、貿易政策の変更、新たな貿易措置の導入が企業活動に中長期的な影響を与えるため、継続的な情報収集と対応準備が求められる。
対象部門: 経営者 総務 法務 広報 経理
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | 欧州鉄鋼連盟(EUROFER) |
|---|---|
| 業界 | 鉄鋼 |
| 発表日 | 2026-06-17 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月17日
添付資料(183 KB)
欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は6月3日、2026年版統計報告書を発表した(プレスリリース)。EUの2025年の鉄鋼需要は約1億3,440万トンと、4年ぶりに上向いた(前年比4.4%増)。一方、粗鋼生産量は同2.9%減の約1億2,580万トンにとどまり、施設稼働率は64.8%だった(添付資料図、表1参照)。
貿易面では輸出入ともに大きな変化がみられた。2025年の完成品の輸出量は、前年比10.9%減の約1,484万トンだった(添付資料表2参照)。特に、第2位の輸出先である米国向けは同24.8%減と急減した。米国は2025年6月に鉄鋼輸入に対する追加関税率を50%に引き上げた(2025年6月4日記事参照)。これによりEUの対米輸出は第2~4四半期(4~12月)に前年同期比34%減となり、甚大な影響を受けた(6月4日付プレスリリース)。 EUROFERは米国に対し、2025年8月にEUと合意した関税割当枠(クオータ)の設定や過剰生産問題(2025年8月22日記事参照)に、EUと連携するよう要請した。EU側は2026年5月20日に同合意に係る法案の政治合意に達し、2026年末までに米国がEU産の鉄鋼などに対する関税を15%以下に引き下げない場合には、対米関税の優遇措置を停止できる仕組みを整備した(2026年5月27日記事参照)。しかし、EUROFERは、クオータ設定など合意内容の履行こそが、EU鉄鋼業界の米国市場へのアクセス回復に不可欠であると強調した。
一方、2025年の完成品の輸入量は同8.8%増の約2,973万トンだった(添付資料表3参照)。半製品も含めた輸入量は前年から14%増加し、EUの鉄鋼消費量の約3割を占めた。EUROFERはEUに対し、域内生産強化にはエネルギー価格の引き下げや投資活性化に向けた条件整備、そして効果的な貿易措置が必要と訴え、EUが7月1日から導入予定の新たな貿易措置(2026年4月17日記事参照)は「重要な一歩」と期待を示した。
同措置は、関税割当量を現行セーフガード措置の約半分となる年間約1,830万トンまで削減し、超過分への関税率を50%に引き上げる。また、迂回輸出対策として、輸入事業者に鉄の溶解・鋳造国の証明を義務付ける。欧州委は証明手続きに必要な書類に係る実施規則の策定に向け、6月4日から7月2日までパブリックコンサルテーション(公開諮問)を実施している(プレスリリース)。この結果も踏まえ、同実施規則を8月末までに採択、10月1日に施行する予定だ。
(滝澤祥子)
(EU、米国)
ビジネス短信 2643a9a84079af46
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2025年のEU鉄鋼市場、需要回復も生産は減少、対米輸出も急減
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出典: JETRO ビジネス短信
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/2643a9a84079af46.html
時系列
- 2025-06 米国が鉄鋼輸入に対する追加関税率を50%に引き上げ
- 2025-08 EUROFERが米国に対し、EUと合意した関税割当枠の設定や過剰生産問題に連携するよう要請
- 2026-05-20 EU側が対米関税優遇措置停止に関する法案の政治合意に達する
- 2026-06-03 欧州鉄鋼連盟(EUROFER)が2026年版統計報告書を発表
- 2026-06-04 欧州委が新たな貿易措置の実施規則策定に向けたパブリックコンサルテーションを開始
- 2026-07-01 EUが新たな貿易措置を導入予定
- 2026-07-02 新たな貿易措置の実施規則策定に向けたパブリックコンサルテーションが終了予定
- 2026-08-31 新たな貿易措置の実施規則を採択予定
- 2026-10-01 新たな貿易措置の実施規則を施行予定
- 2026-12-31 米国がEU産鉄鋼などに対する関税を15%以下に引き下げない場合、EUが対米関税優遇措置を停止できる仕組みが整備される期限
主な数値
| EUの2025年鉄鋼需要 | 134400000トン |
|---|---|
| EUの2025年粗鋼生産量 | 125800000トン |
| 施設稼働率 | 64.8% |
| 2025年完成品輸出量 | 14840000トン |
| 2025年対米輸出減少率 | 24.8% |
| 対米輸出(2025年第2~4四半期)減少率 | 34% |
| 2025年完成品輸入量 | 29730000トン |
| 半製品も含めた輸入量増加率 | 14% |
| EU鉄鋼消費量に占める輸入の割合 | 3割 |
| 新たな貿易措置における関税割当量 | 18300000トン |
| 新たな貿易措置における超過分への関税率 | 50% |
| 米国による鉄鋼輸入追加関税率(2025年6月) | 50% |
この事例から確認すべきポイント
欧州鉄鋼連盟(EUROFER)の報告書は、EU鉄鋼市場が需要回復と生産減少という複雑な状況に直面していることを示しています。特に、米国による追加関税がEUの対米輸出に甚大な影響を与え、EU側も対抗措置を講じるなど、国際貿易摩擦が顕在化しています。EUは域内生産強化のため、エネルギー価格引き下げや投資活性化に加え、新たな貿易措置を導入し、輸入事業者には関税割当量削減や原産地証明の義務化を課す方針です。これらの措置はEU域内外の鉄鋼関連企業にとって、サプライチェーンの見直しやコンプライアンス体制の強化を迫るものであり、今後の実施規則の策定プロセスと国際的な反応が市場に与える影響を注視する必要があります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-17
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