米商務省、石炭の輸入に対する232条調査を開始、安保上の懸念に基づき
この発表の要点
- 米国商務省が国家安全保障を理由に無煙炭および冶金用歴青炭の輸入に対する232条調査を開始した。
- 調査対象は鉄鋼や工業製品の製造に不可欠とされる特定の石炭であり、米国関税分類番号(HTSUSコード)2701.11.0000と2701.12.0010に分類される。
- 関係者からのパブリックコメントを募集しており、提出締め切りは官報掲載日から14日後(推定7月21日)である。
企業・自治体への影響
米国に無煙炭や冶金用歴青炭を輸出する企業、およびこれらの石炭を原料とする米国内の鉄鋼・工業製品メーカーは、潜在的な追加関税や輸入制限によるコスト増、サプライチェーンの見直しを迫られる可能性があります。特に貿易部門、調達部門、法務部門、経営層は、この調査の動向を注視し、対応を検討する必要があります。
対応すべきこと
- 米国商務省および連邦官報の公式発表を確認し、自社製品や事業が調査対象に含まれるか詳細を把握する。
- 米国への無煙炭・冶金用歴青炭の輸出、またはこれらを原料とする製品の製造に関わる企業は、調査の進捗と結果を継続的に監視する。
- パブリックコメント募集期間内に、自社の意見や懸念を米国商務省に提出することを検討し、必要に応じて専門家と連携する。
- 潜在的な追加関税や輸入制限に備え、サプライチェーンや調達戦略への影響を評価し、代替案の検討を開始する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:公募締切まで
基本データ
| 企業・団体 | 米国商務省産業安全保障局(BIS) |
|---|---|
| 業界 | 貿易・製造業 |
| 発表日 | 2026-07-02 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月03日
添付資料(409 KB)
米国商務省産業安全保障局(BIS)は7月2日、1962年通商拡大法232条に基づいて、無煙炭の輸入が米国の国家安全保障に及ぼす影響の調査を開始したと発表した。正式には7月7日に官報で公示する。約10カ月ぶりの新規の232条調査の開始となる。
232条は、特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を及ぼす場合に、大統領に追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている。232条に基づく輸入制限措置の発動に先立ち、商務省は270日以内の調査を実施し、当該製品の輸入が米国の安全保障に脅威を及ぼすか否かの判断や、追加関税などの輸入制限措置の提言を取りまとめる(注1)。
BISの発表によれば、無煙炭の輸入に対する調査は6月29日から開始した。調査対象には、米国関税分類番号(HTSUSコード)2701.11.0000(無煙炭)および2701.12.0010(冶金用歴青炭)に分類される製品が含まれる。また、製品の特性として、高い炭素含有量(86~97%)を有し、揮発分が少なく、発熱量に優れる最高級の石炭と定義した。
その上でBISは、米国内の鉄鋼や工業製品の製造において不可欠な材料とみなされる無煙炭および冶金(やきん)用歴青炭製品を主な調査の対象としていると説明した。これらの石炭は、232条に基づいて別途追加関税の対象となっている、鉄鋼派生品の生産においても重要な役割を担うと記載した。官報案はまた、鉄鋼メーカーが、電気アーク炉(EAF)製鋼プロセスに無煙炭を使用しているとも述べ、無煙炭は産業、防衛、インフラにおいて極めて重要な業務を支えていると指摘した。
なお、2025年の米国の輸入統計に基づくと、米国が今回の調査対象製品を輸入している相手国・地域の数は限定的だ。無煙炭については、輸入額が大きい順に、ペルー、英国、中国、カナダとなっており、また冶金用歴青炭はカナダ、カンボジア、アイルランド、オーストラリアとなっている(注2)。
BISは調査にあたり、パブリックコメントを募集する。具体的には、無煙炭の米国内生産が米国内需要をどの程度満たすか、外国政府が輸出制限などを通じて無煙炭の供給を「武器化する」可能性はあるか、といった点について意見を求める。コメント提出の締め切りは官報掲載日から14日後で(注3)、連邦政府のポータルサイトを通じて提出できる(ID:BIS-2026-0298)。
今回の232条調査開始の発表にあたり、米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(7月2日)は、ペンシルベニア州、バージニア州、ウェストバージニア州の石炭残渣(ざんさ)産業に関する業界団体であるアパラチア地域独立発電事業者協会が2025年7月に、商務省のハワード・ラトニック長官に、232条に基づき無煙炭の輸入に100%の関税を課すための措置を講ずるよう書簡を送付していた、と報じた。
トランプ政権は、232条に基づく特定製品への追加関税措置を多用してきた。2025年は就任直後の3月から6カ月余りで12の分野で新規の232条調査を開始した。そのうち、調査結果を明らかにした6分野では、ほぼ全てで追加関税を課す措置を講じた(添付資料参照)。今回の無煙炭に対する調査は、医療用消耗品・医療機器に対して調査を開始した2025年9月以来(2025年9月26日記事参照)、おおよそ10カ月ぶりの新規の調査の開始となる。なお、いくつかの調査は、商務省が大統領に調査結果を報告すべき270日の期限を過ぎていると指摘されているにもかかわらず、調査結果が公表されていない。
(注1)232条に基づく調査、報告、措置決定などの手続きの詳細は、2024年12月10日地域・分析レポート参照。
(注2)米国際貿易委員会(USITC)の輸入統計に基づく。
(注3)締め切りは、7月21日になるとみられる。
(赤平大寿)
(米国)
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米商務省、石炭の輸入に対する232条調査を開始、安保上の懸念に基づき
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/d92f88c1cb55ac53.html
時系列
- 2025-07 アパラチア地域独立発電事業者協会が商務省長官に無煙炭輸入への100%関税課税措置を求める書簡を送付
- 2025-09 医療用消耗品・医療機器に対する232条調査が開始(約10カ月ぶりの新規調査)
- 2026-06-29 無煙炭の輸入に対する調査が開始
- 2026-07-02 米国商務省産業安全保障局(BIS)が調査開始を発表
- 2026-07-07 官報で調査開始を正式公示
- 2026-07-21 パブリックコメント提出締め切り(推定)
主な数値
| 商務省調査期間 | 270日以内 |
|---|---|
| パブリックコメント提出期限 | 14日後 |
| 過去の232条調査開始分野数(2025年トランプ政権) | 12分野 |
| 過去の232条調査結果公表分野数(2025年トランプ政権) | 6分野 |
この事例から確認すべきポイント
米国商務省による無煙炭輸入に対する232条調査開始は、国家安全保障を名目とした貿易制限措置の可能性を示唆しており、関連業界に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、米国に無煙炭や冶金用歴青炭を輸出する企業、およびこれらを原料として鉄鋼や工業製品を製造する米国内企業は、追加関税や輸入制限によるコスト増、サプライチェーンの見直しを迫られる可能性があります。過去の事例では、232条調査の多くが追加関税措置につながっており、今回の調査も同様の結果となる可能性を考慮する必要があります。企業は、調査の進捗を注視し、パブリックコメントを通じて自社の意見を表明することが重要です。現時点で取得できた本文からは、詳細な調査内容や具体的な影響範囲を確認できませんでした。詳細は公式出典をご確認ください。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-03
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