EVメーカーのポールスター、コネクテッドカー規制で米国新車販売を終了へ
この発表の要点
- ポールスターは米国コネクテッドカー規制により2027年モデル以降の新車販売が禁止される。
- 中国の吉利控股集団が55.2%を保有していることが規制適用対象とみなされた可能性が高い。
- 同グループ傘下のボルボ・カーズは特定認可を取得しており、個別審査による結果の差が示された。
企業・自治体への影響
自動車製造業、特にEVメーカーは、コネクテッドカー規制やサプライチェーン保護規則といった地政学的リスクを考慮した事業戦略の見直しが求められます。国際的なサプライチェーンを持つ企業は、主要市場における規制動向を継続的に監視し、所有構造や技術提携が市場アクセスに与える影響を評価する必要があります。法務、広報、経営企画部門は、このような規制変更が事業継続性やブランドイメージに与える影響を分析し、対応策を講じるべきです。
対応すべきこと
- 自社の製品やサービスが、米国をはじめとする主要国のコネクテッドカー規制やICTSサプライチェーン保護規則の対象となるか確認する。
- 国際的な所有構造やサプライチェーンを持つ企業は、地政学的リスク評価を定期的に実施し、規制当局とのコミュニケーション戦略を検討する。
- 関係部門(法務、経営企画、海外事業部門など)と連携し、規制変更が事業戦略に与える影響を分析し、必要に応じて市場戦略や生産拠点の見直しを検討する。
- 公式発表や関連報道を継続的に監視し、規制の詳細や他社の対応事例について情報収集を行う。
対象部門: 経営者 法務 広報 経理
対応期限:施行日まで
基本データ
| 企業・団体 | Polestar Automotive Holding UK PLC |
|---|---|
| 業界 | 自動車製造 |
| 発表日 | 2026-06-25 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年06月29日
スウェーデン・イエーテボリに本拠を置く電気自動車(EV)メーカーのポールスター(Polestar Automotive Holding UK PLC、米国本社:ニュージャージー州)は6月25日、米国商務省産業安全保障局(BIS)から、「情報通信技術・サービス(ICTS)サプライチェーン保護規則」に基づくコネクテッドカー規制における特定認可(specific authorization)が付与されなかったと発表した。これにより、同社は2027年モデル以降の新車を米国で販売することができなくなる。
同規則は2025年1月にバイデン前政権下で制定されたもので、中国またはロシアの管理下にあるコネクテッドカーの米国での販売などを禁止する内容だ(2025年1月15日記事参照)。ポールスターは、中国の吉利控股集団(ジーリー・ホールディング・グループ)創業者・会長の李書福(Li Shufu)氏およびその関連事業体が55.2%を保有しており(注1)、同規制の適用対象とみなされた可能性が高い。
一方、同じくジーリーグループ傘下のボルボ・カーズは、5月26日に特定認可を取得済みであり、米国での成長計画を継続できるとしている(2026年5月28日記事参照、注2)。同社は、サウスカロライナ州チャールストン工場に13億ドル超を投資し2,000人超を雇用するなど、米国における事業基盤の厚さをアピールしていた。他方、ポールスターは米国において、小型乗用車「ポールスター2」、中型スポーツ用多目的車(SUV)「ポールスター3」、小型SUV「ポールスター4」を展開しているが、合計販売台数は2024年に前年比32.1%減の8,309台、2025年に30.8%減の5,747台と限定的だった。また、米国サウスカロライナ州での「ポールスター3」の生産台数も8,000台強にとどまる(注3)。特別認可に関し、両社で異なる結果となった具体的な理由について、当局・両社とも詳細を明らかにしていないが、個別審査による差が生じることを裏づけている。
今回の却下を受け、ポールスターのマイケル・ロシュラー最高経営責任者(CEO)は「自動車産業は地域性に基づく新たな局面に入った」と述べ、今後は欧州を最大の成長エンジンと位置付け、販売網の拡充および将来モデルの現地生産化を進める方針を示した。同社発表によると、ポールスターの2026年第1四半期の世界販売台数の94%は米国外での販売で、欧州が全体の約80%を占めている。今後は小型SUV「ポールスター7」の欧州生産を計画しているほか、東南アジア、東欧、中南米、カナダも重点市場として投資を継続する方針を示している。
(注1)2025年年次報告書による。
(注2)ボルボの2026年第1四半期中間報告(Volvo Interim Report First Quarter 2026)によると、ジーリーの総持ち株比率は78.87%。
(注3)モーターインテリジェンスなど発表データに基づく。
(大原典子)
(米国、スウェーデン、中国)
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EVメーカーのポールスター、コネクテッドカー規制で米国新車販売を終了へ
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/72257428aa7037c4.html
時系列
- 2025-01 情報通信技術・サービス(ICTS)サプライチェーン保護規則が制定
- 2026-05-26 ボルボ・カーズがコネクテッドカー規制における特定認可を取得
- 2026-06-25 ポールスターがコネクテッドカー規制における特定認可が付与されなかったと発表
主な数値
| ポールスターの吉利控股集団による保有比率 | 55.2% |
|---|---|
| ボルボ・カーズの吉利控股集団による総持ち株比率 | 78.87% |
| ポールスターの2024年米国販売台数 | 8309台 |
| ポールスターの2025年米国販売台数 | 5747台 |
| ポールスターの2026年第1四半期世界販売における米国外比率 | 94% |
| ポールスターの2026年第1四半期世界販売における欧州比率 | 80% |
| ボルボ・カーズのサウスカロライナ州チャールストン工場への投資額 | 13億ドル超 |
| ボルボ・カーズのサウスカロライナ州チャールストン工場での雇用数 | 2000人超 |
| ポールスター3の米国サウスカロライナ州での生産台数 | 8000台強 |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、コネクテッドカーのような先進技術分野において、地政学的リスクが企業の市場アクセスに直接的な影響を与えることを示しています。米国が制定した「ICTSサプライチェーン保護規則」は、特定の国に管理される企業に対し、その所有構造や事業活動が国家安全保障上の懸念とみなされる場合に、市場からの排除を可能にするものです。ポールスターとボルボ・カーズという、同じ親会社を持つ2社で異なる結果が出たことは、規制当局による個別審査が、単なる所有比率だけでなく、現地投資、事業の独立性、技術的側面など、多角的な要素を考慮している可能性を示唆しています。国際的な事業展開を行う企業は、複雑な所有構造やサプライチェーンを持つ場合、主要市場の規制動向を常に監視し、潜在的なリスクを評価し、必要に応じて事業戦略やガバナンス体制を見直すことが不可欠です。また、市場アクセスが制限された際の代替市場戦略の重要性も浮き彫りになりました。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-06-29
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