経済・産業トレンド

中東情勢悪化が水素関連製品供給に影響、アフリカでの水素生産の将来に可能性、IEA報告

国際エネルギー機関(IEA)の報告書「Global Hydrogen Review」によると、中東での軍事衝突が水素の国際的な生産と貿易に混乱をもたらし、肥料や化学製品のサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしました。2025年には世界の水素需要が1億トンを超え、グリーン水素生産も増加しましたが、コスト上昇やインフラ不足が開発の障壁となり、2030年の生産目標達成は困難と見込まれています。アフリカはグリーン水素生産の潜在力を秘めるものの、開発は初期段階にあります。

この発表の要点

企業・自治体への影響

エネルギー関連企業、化学製品メーカー、肥料メーカー、およびこれら製品を輸入・利用する農業関連企業は、サプライチェーンの混乱による原材料価格の変動や供給不足のリスクに直面する可能性があります。また、グリーン水素開発に投資を検討している企業や、脱炭素目標を掲げる企業は、目標達成に向けた戦略の見直しやリスク評価が求められます。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 広報 経理 法務

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 ジェトロ
業界 エネルギー, 化学, 農業
発表日 2026-06-24
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年06月24日

国際エネルギー機関(IEA)は6月23日、水素に関する報告書「Global Hydrogen Review」を発表した。同報告によると、中東での軍事衝突(「イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報​」参照)は、水素の国際的な生産と貿易に混乱をもたらしたほか、肥料生産、石油精製、化学製品製造を支えるサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしたという。

中東地域は世界の水素生産量の約6分の1を占め、肥料などに用いられるアンモニア、尿素のほか、メタノールや関連製品の主要な輸出国だ。これらの製品の生産や輸送ルートの混乱が世界市場での供給不足や価格の変動を招く可能性があるという。なお、尿素価格は、2026年1月から5月にかけて約2倍に上昇した。肥料価格上昇は、食糧供給にもリスクを与える可能性がある。

世界の水素需要は2025年に1億トンを超え、再エネなどにより生産されるグリーン水素の生産は前年比20%増の約100万トンに達した。グリーン水素の生産は世界の水素生産の1%を上回る見通しだという。

一方、同報告によると、コスト上昇、需要の不確実性、複雑な規制、インフラ不足などが、グリーン水素開発の障壁となり、世界各国の2030年の生産目標達成は困難との見込みだ。2030年までにグリーン水素を生産すると発表されたプロジェクトは、遅延や中止により、約4分の1縮小し、2,700万トンとなった。

アフリカでの水素利用は世界の3%
同報告では、アフリカでの2024年の水素利用は310万トンで、世界の約3%を占めたとした。水素利用はアフリカでは6カ国に集中しており、エジプトがほぼ半分を占め、アルジェリアが20%、ナイジェリアが17%、南アフリカ共和国が5%、リビアが5%、赤道ギニアが3%で続いた。水素需要の4分の3近くはアンモニアによるものだ。

一方、アフリカでのグリーン水素生産は6,000トンに過ぎない。アフリカは豊富な再エネ資源を有し、将来、長期的にはグリーン水素生産の可能性を秘めている。しかし、2030年までの稼働を目指すグリーン水素事業31件のうち、最終投資決定に至ったのは1件のみだという。

アフリカでの肥料使用量は世界平均の約6分の1で、食糧の貿易赤字も抱える。このような中、アンモニア生産が増加すれば、窒素肥料調達が改善し、食糧生産向上につながる。ただ、アンモニア生産計画の8割以上は輸出向けだという。

また、報告では、アフリカでの製鉄における水素活用や再エネ由来のメタノール生産拡大の可能性もあるとした。

アフリカ水素開発については、2025年10月27日付地域・分析レポート「アフリカのグリーン水素開発(1)主要3カ国の取り組みと課題」、2025年10月28日付地域・分析レポート「アフリカのグリーン水素開発(2)産業化への課題と支援策」も参照。

(井澤壌士)

(中東、アフリカ、世界)

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/06/f4b53afb110c904f.html

時系列

主な数値

中東地域の世界の水素生産量に占める割合 約6分の1割合
尿素価格の上昇率(2026年1月-5月) 約2倍倍
2025年の世界の水素需要 1億トン
2025年のグリーン水素生産量 約100万トン
世界の水素生産に占めるグリーン水素の割合(見通し) 1%以上
2030年までのグリーン水素プロジェクト縮小率 約4分の1割合
2030年までのグリーン水素プロジェクト生産量 2,700万トン
2024年のアフリカでの水素利用量 310万トン
アフリカでの水素利用の世界に占める割合 約3%割合
アフリカで水素利用が集中する国数 6カ国
アフリカの水素利用に占めるエジプトの割合 ほぼ半分割合
アフリカの水素利用に占めるアルジェリアの割合 20%割合
アフリカの水素利用に占めるナイジェリアの割合 17%割合
アフリカの水素利用に占める南アフリカ共和国の割合 5%割合
アフリカの水素利用に占めるリビアの割合 5%割合
アフリカの水素利用に占める赤道ギニアの割合 3%割合
アフリカの水素需要に占めるアンモニアの割合 4分の3近く割合
アフリカでのグリーン水素生産量 6,000トン
2030年までのアフリカのグリーン水素事業計画数 31件
アフリカのグリーン水素事業の最終投資決定件数 1件
アフリカでの肥料使用量の世界平均に対する割合 約6分の1割合
アフリカのアンモニア生産計画に占める輸出向けの割合 8割以上割合

この事例から確認すべきポイント

このIEA報告は、エネルギー転換の鍵となる水素、特にグリーン水素の現状と課題を浮き彫りにしています。中東情勢のような地政学リスクが、エネルギーサプライチェーンに直接的な影響を与え、肥料価格の高騰を通じて食料安全保障にも波及する可能性を示唆しています。企業は、水素関連製品のサプライチェーンにおけるリスク評価を強化し、代替供給源の確保や地政学リスクを考慮した事業継続計画を策定する必要があります。また、グリーン水素開発の遅延は、脱炭素目標達成に向けた企業の戦略見直しを促すでしょう。アフリカ市場の潜在力と、その開発における資金調達やインフラ整備の課題は、国際的な協力と投資の重要性を示しています。特に、肥料生産における水素活用は、食料供給安定化に貢献する可能性があり、関連企業は長期的な視点で動向を注視すべきです。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-06-24

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