カナダ、アルバータ州と太平洋沿岸を結ぶ原油パイプラインの新設を発表
この発表の要点
- カナダ政府はアルバータ州と太平洋沿岸を結ぶ日量100万バレル規模の新たな原油パイプライン計画を発表した。
- この計画は、連邦政府とアルバータ州政府間の覚書・実施協定に基づき、主要プロジェクト局(MPO)の承認を経て2027年9月までに建設着手を目指す。
- 厳格な環境審査と先住民の権利尊重を維持しつつ、許認可手続きの簡素化・迅速化を図り、アジアを含むエネルギー輸出先の多角化と気候変動対策の両立を目指す。
企業・自治体への影響
本計画は、エネルギー関連企業、特に原油の生産・輸送・輸出に関わる企業に直接的な影響を与えます。カナダからのエネルギー供給の安定化と輸出先の多角化は、国際的なエネルギー市場の動向に影響を及ぼす可能性があります。また、大規模インフラプロジェクトの推進における環境規制、先住民族の権利、および政府の許認可プロセスの動向は、建設業や関連サプライチェーン企業にとっても重要な情報です。
対応すべきこと
- カナダのエネルギー政策および大規模インフラプロジェクトの動向を継続的に監視する。
- 自社の事業がカナダからの原油供給や輸出先の多角化に影響を受けるか評価する。
- 大規模プロジェクトにおける環境・社会・ガバナンス(ESG)要素、特に先住民族の権利尊重に関する国際的なベストプラクティスを確認する。
- カナダ建設法や主要プロジェクト局(MPO)による許認可プロセスの詳細を公式出典で確認する。
対象部門: 経営者 広報 法務
対応期限:公募締切まで
基本データ
| 企業・団体 | カナダ政府 |
|---|---|
| 業界 | エネルギー |
| 発表日 | 2026-07-02 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | カナダ |
発表された内容
2026年07月06日
カナダのマーク・カーニー首相は7月2日、アルバータ州と太平洋沿岸を結ぶ新たな原油パイプラインを敷設する計画を発表した。新設するパイプラインは日量100万バレルの原油を輸送できる見込みで、カーニー政権が掲げる「エネルギー超大国」の実現に向けて、カナダの原油輸出拡大に貢献する。
カーニー氏は同日、アルバータ州カルガリーを訪問し、ダニエル・スミス州首相と会談した。今回の計画は、2025年11月に連邦政府とアルバータ州政府の間で締結された覚書と、2026年5月に締結された実施協定に基づくものだ。
カナダエネルギー規制庁(CER)によれば、州境や国境を越えて接続される原油パイプライン15本のうち、アルバータ州と太平洋沿岸を結ぶものは、1953年に操業を開始した「トランス・マウンテン・パイプライン」がある。今回発表された新設するパイプラインは、同パイプラインのルートに沿って敷設され、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州南部沿岸に接続される予定だ。当初はBC州北部沿岸への接続も検討されていたが、複数の先住民族による反対や環境保護上の観点(注1)から取りやめた。
建設費用は現時点で公表されていないが、民間企業のペンビナ・パイプラインが一部を出資し、残りを連邦政府と州政府から出資するほか、政府系企業のトランス・マウンテンが設計・建設を主導する。同計画は主要プロジェクト局(MPO、注2)に付託され、カナダ建設法(2025年7月7日記事参照)の適用に向けた手続きが進められる。同法の適用により、厳格な環境審査の基準を維持しつつ、先住民の権利を十分に尊重しながら、連邦政府による簡素化・迅速化された許認可手続きを利用できる。
スミス氏はメディアへの出演で、同計画について10月1日までにMPOによる承認を受け、2027年9月までに最終的な許認可を取得して建設に着手する見通しを示した。また、日本を含む関心を示しているアジアの国・地域との協議を進めていく考えも明らかにした(「CBCニュース」7月3日)。
カナダ政府は、太平洋沿岸へ接続する新たな原油パイプラインを通じて、「安定的で信頼できるエネルギー供給源」としての位置付けを確立し、アジアを含むエネルギー輸出先の多角化を進める方針を示している。また同発表では、アルバータ州北部において、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の「パスウェイズ・プロジェクト」を推進することで合意された。カナダを「エネルギー超大国」とする連邦政府の目標の実現に加え、気候変動対策との両立を図る取り組みとなる。
(注1)BC州北部沿岸には、1万2,500トン以上の原油や重油を積んだタンカーの航行・寄港を、環境保護の観点から禁止する「石油タンカー航行禁止法(Oil Tanker Moratorium Act)」が適用されている。なお、2024年に完了したトランス・マウンテン・パイプラインの拡張計画においても、環境への影響が懸念され、連邦政府が同計画を買収した上で環境調査などを実施し、最終的に計画が承認された経緯がある(2018年6月1日記事、2019年6月19日記事参照)。
(注2)MPOは、重要インフラや資源開発などの主要プロジェクトについて、関係機関との調整や規制手続きの効率化を通じて迅速な推進を図る連邦政府の専門機関。主要プロジェクトの審査を2年以内に完了できるよう、規制プロセスの改革を進めている。
(木村勇翔)
(カナダ、日本)
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カナダ、アルバータ州と太平洋沿岸を結ぶ原油パイプラインの新設を発表
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/f8e5a066c9514e9c.html
時系列
- 1953-XX-XX トランス・マウンテン・パイプラインの操業開始
- 2024-XX-XX トランス・マウンテン・パイプラインの拡張計画完了
- 2025-11-XX 連邦政府とアルバータ州政府の間で覚書締結
- 2026-05-XX 連邦政府とアルバータ州政府の間で実施協定締結
- 2026-07-02 マーク・カーニー首相が新原油パイプライン敷設計画を発表
- 2026-10-01 主要プロジェクト局(MPO)による承認の見通し
- 2027-09-XX 最終的な許認可取得と建設着手の見通し
主な数値
| 新設パイプラインの輸送能力 | 100万バレル/日 |
|---|---|
| 既存パイプラインの操業開始年 | 1953年 |
| 主要プロジェクト局(MPO)の審査完了目標期間 | 2年以内 |
この事例から確認すべきポイント
本発表は、カナダ政府がエネルギー政策において、輸出拡大と気候変動対策の両立を目指す姿勢を明確にした事例です。特に、主要プロジェクト局(MPO)を通じた許認可手続きの簡素化・迅速化を図りつつ、厳格な環境審査基準と先住民の権利尊重を維持する方針は、大規模インフラプロジェクトにおけるステークホルダー調整の重要性を示唆しています。また、BC州北部沿岸への接続を断念した経緯は、環境保護団体や先住民族コミュニティとの対話がプロジェクトの成否に大きく影響することを浮き彫りにします。日本を含むアジア諸国との協議を進める方針は、エネルギー供給源の多角化を模索する各国にとって、カナダが新たな選択肢となり得る可能性を示しています。企業は、国際的な大規模プロジェクトにおける環境・社会・ガバナンス(ESG)要素の考慮、特に先住民族の権利や地域社会との共存が、事業推進の鍵となることを再認識すべきです。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-06
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