経済・産業トレンド

政府系投資会社テマセク、投資ポートフォリオ価値が10年で約2倍に

シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスは、2026年3月期の年次報告書で純ポートフォリオ価値(NPV)が5,180億シンガポール・ドル(約64兆7,500億円)となり過去最高を更新したと発表しました。過去10年間で資産規模は約2倍に拡大し、過去1年間の運用利回りは10.5%を達成。同社は2031年3月末までにAI、コアプラス・インフラ、プライベートクレジットの3分野への投資比率を拡大する計画です。

この発表の要点

企業・自治体への影響

投資会社や金融機関は、テマセクのような政府系ファンドの投資戦略、特にAIやインフラ、プライベートクレジットといった成長分野への配分動向を注視し、自社のポートフォリオ戦略や新規事業開発の参考にすることができます。また、資産評価方法の変更は、透明性向上への意識が高まっていることを示唆しており、関連企業は自社の情報開示方針を見直すきっかけとなり得ます。

対応すべきこと

対象部門: 経営者 経理 広報

対応期限:要確認

基本データ

企業・団体 テマセク・ホールディングス
業界 金融・投資
発表日 2026-07-14
分類 経済・産業トレンド

発表された内容

2026年07月14日

シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスは7月8日、2026年3月期の年次報告書を発表し、同社の資産投資ポートフォリオの純ポートフォリオ価値(NPV、注1)が5,180億シンガポール・ドル(約64兆7,500億円、Sドル、1Sドル=約125円)となり、過去最高を更新したと発表した。資産規模は過去10年間で約2倍に拡大した。

過去1年間の運用利回りは10.5%となり、テマセクが出資するシンガポール上場企業の株価上昇などを背景に2桁のリターンを達成した。一方、中東情勢の悪化を受け、3月だけでNPVは2%減少した。過去10年および20年の年率利回りは、それぞれ7.1%、6.8%だった。

2026年3月期の投資額は510億Sドル、売却額は310億Sドルだった。新規投資先には、米国の人工知能(AI)スタートアップであるアンソロピックやオープンAI、中国最大のコーヒーチェーンであるラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)などが含まれる。また、再生可能エネルギー、電動化、脱炭素化などの環境関連分野に50億Sドルを投資した。

国外投資ポートフォリオに占める上場資産の割合は約3分の2を占め、残りを未上場資産が占める。同社は上場資産の比率を高めている理由について、「不透明な事業環境の中で、資産の再配分や投資を柔軟に実施できるよう、流動性の高い資産への配分を拡大している」と説明した。

AI投資、2031年までに投資ポートフォリオの最大15%へ拡大
テマセクは2031年3月末までに、資産投資ポートフォリオの25%を、(1)AI、(2)送配電網やデータセンターなどの「コアプラス・インフラ」、(3)プライベートクレジット(注2)の3つの有望重点分野に配分する計画を示した。

AI投資には、エネルギーインフラ、半導体チップ、クラウドサービス事業者、AIアプリケーションなどが含まれる。AI関連投資の資産投資ポートフォリオに占める割合は現在の6%から、2031年3月末までに10~15%へ拡大する。また、コアプラス・インフラは1%から5%へ、プライベートクレジットは2%から5%へ、それぞれ引き上げる計画としている。

(注1)テマセクは2026年3月期から、資産の報告方法を簿価ベースから時価評価(Mark-to-Market:MTM)へ変更した。資産の種類や保有形態にかかわらず、ポートフォリオ全体の価値とリスクをより適切に把握することを目的としている。
(注2)銀行を介さず、非公開企業などに直接融資を行うファンドや機関投資家。

(本田智津絵)

(シンガポール)

ビジネス短信 a1dfc0b0907667da

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政府系投資会社テマセク、投資ポートフォリオ価値が10年で約2倍に

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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/a1dfc0b0907667da.html

時系列

主な数値

純ポートフォリオ価値(NPV) 5180億シンガポール・ドル
純ポートフォリオ価値(NPV) 64兆7,500億円
過去10年間での資産規模拡大率 約2倍
過去1年間の運用利回り 10.5%
3月だけのNPV減少率 2%
過去10年の年率利回り 7.1%
過去20年の年率利回り 6.8%
2026年3月期の投資額 510億Sドル
2026年3月期の売却額 310億Sドル
環境関連分野への投資額 50億Sドル
AI関連投資の現在の割合 6%
AI関連投資の2031年3月末までの目標割合(最小) 10%
AI関連投資の2031年3月末までの目標割合(最大) 15%
コアプラス・インフラの現在の割合 1%
コアプラス・インフラの2031年3月末までの目標割合 5%
プライベートクレジットの現在の割合 2%
プライベートクレジットの2031年3月末までの目標割合 5%

この事例から確認すべきポイント

テマセクの年次報告書は、政府系投資会社がグローバルな経済変動に対応しつつ、長期的な成長戦略をどのように構築しているかを示す好例です。特に、中東情勢の悪化による短期的なNPV減少にもかかわらず、過去10年で資産規模を約2倍に拡大した実績は、その運用手腕の堅実性を示唆しています。また、AI、コアプラス・インフラ、プライベートクレジットといった将来性のある分野への戦略的な投資配分計画は、ポートフォリオの多様化とリスク分散、そして新たな成長機会の追求を意図していると読み取れます。資産評価方法を簿価から時価評価へ変更した点も、透明性と実態把握を重視する姿勢の表れであり、投資家や市場に対する説明責任を果たす上で重要な変更と言えるでしょう。

公式出典

更新履歴

公開日: 2026-07-14

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