フランス、軍事計画法を改正、360億ユーロを追加投入
この発表の要点
- フランスは2026~2030年に国防費360億ユーロを追加投入し、2030年までにGDP比2.5%、2035年までに3.5%へ引き上げる。
- 軍の人員増強、新たな国家貢献制度の導入、ドローン・ミサイル・弾薬などの装備増強、宇宙分野の強化を図る。
- 国家の重要インフラ事業者や防衛関連企業に戦略物資の備蓄を義務付け、新たな国家安全保障警戒体制を創設する。
企業・自治体への影響
この改正法は、フランスおよび欧州の防衛・航空宇宙産業に大きな影響を与えます。防衛関連企業は、装備調達の増加やR&D機会の拡大が期待される一方で、フランス製・欧州製デジタル技術の優先や公費開発技術の輸出使用料徴収制度への対応が求められます。また、国家の重要インフラを担う事業者や防衛関連企業は、戦略物資の備蓄義務という新たな規制に対応するため、サプライチェーンや在庫管理体制の見直しが必要となります。
対応すべきこと
- フランスの防衛・航空宇宙産業に関わる企業は、新たな調達計画やR&D機会について詳細を確認する。
- 重要インフラ事業者および防衛関連企業は、戦略物資の備蓄義務に関する具体的な要件と対応期限を把握する。
- 関連する技術輸出を行う企業は、公費開発技術の使用料徴収制度について確認し、事業計画に反映させる。
- 欧州の安全保障環境の変化とフランスの防衛政策動向を継続的に監視し、自社の事業戦略への影響を評価する。
対象部門: 経営者 法務 経理 広報
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | ジェトロ |
|---|---|
| 業界 | 防衛・航空宇宙・製造 |
| 発表日 | 2026-07-14 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月14日
フランス議会は7月1日、2024~2030年軍事計画法(LPM)の改正案を最終可決した。現行のLPM(フランス語)は、2024~2030年の7年間で4,133億ユーロを国防に投入し、防衛支出をGDP比2%へ引き上げることを柱にしていた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻以降の欧州の安全保障環境の悪化に加え、2025年6月のNATO首脳会議で加盟国が防衛・安全保障関連支出を2035年までにGDP比5%へ拡大する目標を採択したことを受け、政府は追加の防衛力強化が必要と判断した。
今回の改正法では、既存計画に加えて2026~2030年に360億ユーロを追加投入し、防衛支出を2030年までにGDP比2.5%、2035年までに3.5%に引き上げる方針だ。
軍の人員も増強し、2030年までに常勤換算で27万5,000人体制を目指す。あわせて、18~25歳の志願者を対象とする新たな「国家貢献制度(service national)」を導入する。2030年までに1万人規模へ拡大する計画で、参加者は10カ月間、軍人として任務に従事する。
装備面では、ドローン、対ドローンシステム、戦術レーダー、電磁妨害能力(ジャマー)(注)などへの投資を拡大。さらに、2030年代末までの実戦配備を視野に、射程2,500キロメートル級の通常弾頭地上発射弾道ミサイルの研究開発を進める。また、弾薬備蓄の大幅な増強も打ち出しており、自爆型・遠隔操作弾薬は当初計画比5倍、空対地兵器を3.4倍とする。
宇宙分野では、軍事通信、宇宙監視、早期警戒システムを強化するほか、2030年までに地上から宇宙への妨害能力(ジャミング)の実戦配備を目指す。装備調達では、フランスおよび欧州製のデジタル技術を優先し、防衛分野における戦略的自立の確保を図る。
さらに、国家の重要インフラを担う事業者や防衛関連企業に対し、戦略物資の備蓄を義務付ける仕組みを導入するほか、公費で開発した防衛技術の輸出時に使用料を徴収する制度も創設する。
改正法には、新たな「国家安全保障警戒体制(état d’alerte de sécurité nationale)」の創設も盛り込まれた。国家機能の維持や国民保護が脅かされる事態に際して発動され、防衛関連プロジェクトにおける都市計画や環境規制などの手続きを簡素化できるようにする。政府は、高強度紛争やハイブリッド攻撃の脅威が高まる中、フランスの防衛力と国家レジリエンスの強化を図るとしている。
(注)強力な電磁波を発射して敵の通信やレーダー、GPS、ドローンの制御信号などを妨害する能力。
(山崎あき)
(フランス、ロシア、ウクライナ)
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フランス、軍事計画法を改正、360億ユーロを追加投入
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/de4655585f2591e6.html
時系列
- 2024-2030 現行の軍事計画法(LPM)の期間
- 2025-06 NATO首脳会議で加盟国が防衛・安全保障関連支出を2035年までにGDP比5%へ拡大する目標を採択
- 2026-07-01 フランス議会が2024~2030年軍事計画法(LPM)の改正案を最終可決
- 2026-2030 改正法により360億ユーロが追加投入される期間
- 2030 防衛支出をGDP比2.5%、常勤換算で27万5,000人体制、国家貢献制度を1万人規模へ拡大、地上から宇宙への妨害能力(ジャミング)の実戦配備を目指す
- 2030年代末 射程2,500キロメートル級の通常弾頭地上発射弾道ミサイルの実戦配備を視野に研究開発を進める
- 2035 防衛支出をGDP比3.5%に引き上げる方針
主な数値
| 現行LPMの国防投入額 | 4133億ユーロ |
|---|---|
| 追加投入額 | 360億ユーロ |
| 2030年までの防衛支出GDP比目標 | 2.5% |
| 2035年までの防衛支出GDP比目標 | 3.5% |
| 2030年までの軍人員目標 | 27万5,000人 |
| 2030年までの国家貢献制度参加者目標 | 1万人 |
| 国家貢献制度の任務期間 | 10カ月 |
| 自爆型・遠隔操作弾薬の増強比率 | 5倍 |
| 空対地兵器の増強比率 | 3.4倍 |
| 通常弾頭地上発射弾道ミサイルの射程 | 2500キロメートル |
この事例から確認すべきポイント
フランスの軍事計画法改正は、ロシアによるウクライナ侵攻後の欧州の安全保障環境の悪化と、NATO加盟国が採択した防衛支出拡大目標への対応として、国防力強化への強いコミットメントを示すものです。360億ユーロの追加投入、GDP比での防衛支出目標の引き上げ、人員増強、そしてドローン、ミサイル、宇宙分野といった先端技術への投資拡大は、フランスが将来の紛争形態を見据えた防衛戦略を構築していることを示唆します。特に、国家の重要インフラ事業者や防衛関連企業への戦略物資備蓄義務付け、公費開発技術の輸出時使用料徴収制度の創設は、サプライチェーンの強靭化と防衛産業における戦略的自立の確保を重視する姿勢を明確にしています。また、新たな国家安全保障警戒体制の創設は、高強度紛争やハイブリッド攻撃への対応能力を高め、国家レジリエンスを強化する狙いがあります。これらの動きは、防衛産業だけでなく、関連する技術開発企業や重要インフラを担う企業にとって、新たなビジネス機会と同時に、法規制遵守や事業戦略の見直しを迫るものとなります。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-14
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