JERA、米「ブルーポイント」事業向け燃料アンモニア輸送船の長期用船契約を締結
この発表の要点
- JERAが燃料アンモニア輸送船4隻の長期用船契約を締結し、低炭素アンモニアの安定輸送体制を構築。
- 米国「ブルーポイント」プロジェクトで生産される低炭素アンモニアを、日本の碧南火力発電所で利用し、CO2排出量95%以上削減を目指す。
- 米国と日本の政府支援制度(炭素回収クレジット、価格差支援)を活用し、次世代エネルギーとしてのアンモニア導入を推進。
企業・自治体への影響
本発表は、エネルギー企業、海運企業、重工業企業に対し、脱炭素燃料の国際サプライチェーン構築と、それに伴う新たな事業機会の創出を示唆します。特に、発電部門や物流部門においては、低炭素アンモニアの導入に向けた技術開発やインフラ整備の動向を注視する必要があります。
対応すべきこと
- 自社の脱炭素戦略におけるアンモニア燃料導入の可能性を検討する。
- 関連する国際的な政府支援制度(米国IRA、日本の水素社会推進法等)の動向を注視する。
- 低炭素燃料のサプライチェーン構築におけるパートナーシップの機会を探る。
- 大型ガス輸送船(VLGC)によるアンモニア輸送技術の進展を把握する。
対象部門: 経営者 総務 法務 広報 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | JERA |
|---|---|
| 業界 | エネルギー |
| 発表日 | 2026-06-18 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
| 地域 | 東京都 |
発表された内容
2026年07月03日
日本の国内外で燃料調達から発電・販売までを一貫して担う総合エネルギー企業のJERA(本社:東京都中央区)は6月18日、燃料アンモニア輸送船4隻の長期定期用船契約を締結したと発表した。日本郵船グループのシンガポール法人エヌワイケイ・バルクシップ・アジア〔NYK Bulkship(Asia)〕および商船三井との間で、各社2隻ずつの契約だ。3社は2022年11月、燃料アンモニア輸送に関する覚書を締結しており(2022年11月28日記事参照)、2025年12月の基本条件合意を経て、今回の正式契約に至った。
輸送対象となるアンモニアは、JERAが世界最大のアンモニアメーカーであるCFインダストリーズ(本社:米国イリノイ州ノースブルック)および三井物産と共同で開発する「ブルーポイント(Blue Point)」プロジェクトの下で生産される。同プロジェクトは、年間約140万トンの低炭素アンモニアを生産する世界最大級の工場を米ルイジアナ州アセンション郡に建設し、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)技術を活用して年間約230万トンのCO2を回収・貯留することで、製造時のCO2排出量を95%以上削減する計画だ。2025年5月に最終投資決定(FID)を行い、2029年の生産開始を予定している。
使用される船舶は積載容量約8万7,000立方メートルの大型ガス輸送船(VLGC)で、川崎重工業が建造し、2027年上半期の竣工(しゅんこう)を予定している。JERAによると、輸送コスト低減に向けた大型化の一環として、VLGCサイズの船舶がアンモニア輸送に長期従事するのは世界初となる。日本に輸送されたアンモニアは、JERAが2029年度にアンモニア混焼率20%で大規模商用運転の開始を計画している碧南火力発電所(愛知県碧南市)で利用される。
ブルーポイントは、2022年のインフレ削減法(IRA)により拡充された米国の炭素回収クレジット〔内国歳入法(IRC)45Q〕(注1)の適用対象となる見込みだ。また、JERAと三井物産は2025年12月、日本政府が初めて実施した水素社会推進法に基づく価格差支援制度(注2)の支援対象にも採択されている。これにより、米国ではCO2の回収・貯留に対する税制優遇が、日本では低炭素アンモニアと既存燃料との価格差に対する支援が得られる予定。アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない次世代エネルギーとして期待されており、発電用途に加え、船舶燃料や水素キャリア(注3)としての活用が期待されている。
(注1)地下に永久貯留されたCO2の量に応じて税額控除を付与するもので、賃金・見習い要件を満たした場合には1トン当たり最大85ドルの税額控除〔直接空気回収(DAC)技術を利用する施設は最大180ドル〕が適用される。
(注2)低炭素水素・アンモニアと既存燃料との価格差を支援する制度で、事業者に対し最大15年間、基準燃料との価格差を補填(ほてん)する。
(注3)水素を大量かつ効率的に輸送するための媒体。
(松岡彩)
(米国、日本)
ビジネス短信 46b8d3b925bc7552
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JERA、米「ブルーポイント」事業向け燃料アンモニア輸送船の長期用船契約を締結
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/46b8d3b925bc7552.html
時系列
- 2022-11 JERA、日本郵船グループのシンガポール法人エヌワイケイ・バルクシップ・アジア、商船三井が燃料アンモニア輸送に関する覚書を締結
- 2022 米国のインフレ削減法(IRA)により炭素回収クレジット(IRC 45Q)が拡充
- 2025-05 ブルーポイントプロジェクトが最終投資決定(FID)を実施
- 2025-12 JERA、日本郵船グループのシンガポール法人エヌワイケイ・バルクシップ・アジア、商船三井が燃料アンモニア輸送船の基本条件に合意
- 2025-12 JERAと三井物産が日本政府の水素社会推進法に基づく価格差支援制度の支援対象に採択
- 2026-06-18 JERAが燃料アンモニア輸送船4隻の長期定期用船契約を締結したと発表
- 2027年上半期 川崎重工業建造の大型ガス輸送船(VLGC)が竣工予定
- 2029年 ブルーポイントプロジェクトが生産開始予定
- 2029年度 JERAが碧南火力発電所でアンモニア混焼率20%での大規模商用運転開始を計画
主な数値
| 燃料アンモニア輸送船の隻数 | 4隻 |
|---|---|
| ブルーポイントプロジェクトの年間低炭素アンモニア生産量 | 140万トン |
| ブルーポイントプロジェクトの年間CO2回収・貯留量 | 230万トン |
| ブルーポイントプロジェクトの製造時CO2排出削減率 | 95%以上 |
| 碧南火力発電所のアンモニア混焼率 | 20% |
| 輸送船の積載容量 | 87000立方メートル |
| 米国の炭素回収クレジット(45Q)の税額控除額(賃金・見習い要件満たす場合) | 85ドル/トン |
| 米国の炭素回収クレジット(45Q)の税額控除額(DAC技術利用施設) | 180ドル/トン |
| 日本の価格差支援制度の支援期間 | 15年間 |
この事例から確認すべきポイント
本発表は、JERAが推進する脱炭素化戦略における具体的な進展を示すものです。米国での低炭素アンモニア生産から日本での利用に至るまで、国際的なサプライチェーン構築の動きが明確に示されています。特に、大型ガス輸送船(VLGC)をアンモニア輸送に長期従事させる世界初の試みは、輸送コスト低減と効率化に向けた技術革新の重要性を浮き彫りにします。また、米国のインフレ削減法に基づく炭素回収クレジットや、日本の水素社会推進法に基づく価格差支援制度といった、両国の政策支援を戦略的に活用している点は、大規模な脱炭素プロジェクト推進における政府支援の不可欠性を示唆します。これは、エネルギー企業が次世代燃料への転換を図る上で、技術開発だけでなく、国際的な政策動向と連携した事業戦略が重要であることを示唆する事例と言えます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-03
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