欧州8団体、CBAMの第三国で支払われた炭素価格に関する実施規則案に疑義を表明
この発表の要点
- 欧州8団体がEUのCBAM実施規則案に対し、第三国で支払われた炭素価格算定にカーボンクレジットを含めるべきではないと疑義を表明。
- カーボンクレジットの導入は、EU域内外で不公平な競争環境を生み、CBAMの目的を損なう可能性があると指摘。
- 実施規則案の採択は6月を目指しており、パブリックコンサルテーションは6月10日に終了済み。
企業・自治体への影響
EUへ対象製品を輸出する企業、特に鉄鋼、アルミニウム、セメントなどの製造業は、CBAMの最終的な実施規則が、第三国で支払われた炭素価格の算定方法にカーボンクレジットをどのように扱うかによって、輸入時のコストや競争力に直接的な影響を受ける可能性があります。関連する部門としては、経理、法務、貿易実務、経営企画などが挙げられます。
対応すべきこと
- EUのCBAMに関する最終的な実施規則の採択状況を継続的に監視する。
- 自社がEUへ輸出する製品がCBAMの対象となるか、またその炭素価格算定方法にカーボンクレジットがどのように影響するかを確認する。
- 関係部門(経理、法務、貿易実務、経営企画など)と情報共有し、潜在的な影響と対応策を検討する。
対象部門: 経営者 総務 法務 広報 経理
対応期限:要確認
基本データ
| 企業・団体 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
|---|---|
| 業界 | 製造 |
| 発表日 | 2026-07-03 |
| 分類 | 経済・産業トレンド |
発表された内容
2026年07月03日
欧州鉄鋼連盟(EUROFER)、ヨーロピアン・アルミニウム、欧州セメント協会(CEMBUREAU)、標準化のための欧州環境市民機構 (ECOS)など8団体は6月18日、欧州委員会が公表したEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)における第三国で支払われた炭素価格に関する実施規則案に対し、共同声明を発表し、疑義を表明した。第三国で支払われた炭素価格を算定する際、国内および国際カーボンクレジット(注1)を含めるべきではないとした。
欧州委は5月13日に同実施規則案を公表し、6月10日までパブリックコンサルテーション(公開諮問)を実施した。CBAMでは、EU域外の生産者が対象製品について域外で既に炭素価格を支払っている場合は、これに対応する費用を差し引き、輸入者が納付するCBAM証書数を削減できる(注2)。実施規則案は、第三国で支払われた炭素価格をCBAM証書の納付義務から削減(控除)する算定方法、支払いの証明、独立した認証者の資格と独立性を確認するための条件などを定めるもので、6月中の採択を目指している。
共同声明では、EU排出量取引制度(EU ETS)ではカーボンクレジットが認められておらず、第三国の生産者のみがクレジットによってCBAMにおける負担軽減を認められれば、EU域内と域外で不公平が生じ、CBAMの目的である公平な競争環境を損なうと指摘。国内クレジットには質的・量的な要件が設けられておらず、第三国における排出削減を促進する効果についても懸念が生じるとした。また、CBAMの対象を川下製品に拡大し迂回を防ぐ改定案(2025年12月19日記事参照)の審議において、パリ協定に基づくカーボンクレジットの取り扱いについて議論されている中、実施規則によって先んじてカーボンクレジットに関する規定を導入することは、法的・制度上の懸念があるとした。
(注1)再生可能エネルギー導入、森林管理など温室効果ガス(GHG)排出を削減・抑制するプロジェクトをクレジットとして認証し、そのクレジットを売買するもの。クレジット市場には国際機関、政府・自治体、民間事業者によるものなどがある(2021年9月15日付地域・分析レポート参照)。
(注2)詳細は、ジェトロ調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)(2024年2月)」参照。
(川嶋康子)
(EU)
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欧州8団体、CBAMの第三国で支払われた炭素価格に関する実施規則案に疑義を表明
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出典: www.jetro.go.jp
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/d3e13d7f67075b72.html
時系列
- 2026-05-13 欧州委員会がEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)における第三国で支払われた炭素価格に関する実施規則案を公表
- 2026-06-10 実施規則案に関するパブリックコンサルテーション(公開諮問)が終了
- 2026-06-18 欧州鉄鋼連盟など8団体が実施規則案に対し共同声明を発表し、疑義を表明
- 2026-07-03 日本貿易振興機構(ジェトロ)が本件に関する記事を公開
主な数値
| 疑義を表明した団体数 | 8団体 |
|---|---|
| パブリックコンサルテーション終了日 | 2026-06-10日付 |
| 実施規則案の採択目標月 | 6月 |
この事例から確認すべきポイント
本事例は、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)の具体的な運用における重要な論点、特に第三国で支払われた炭素価格の算定におけるカーボンクレジットの扱いに関する議論を浮き彫りにしています。欧州8団体が表明した疑義は、EU域内と域外の生産者間での公平な競争環境の確保というCBAMの根幹的な目的に対する懸念を示唆しています。EU排出量取引制度(EU ETS)でカーボンクレジットが認められていない現状と、第三国でのクレジット利用の可能性との間に生じる不均衡は、炭素漏洩防止というCBAMのもう一つの目的にも影響を与えかねません。また、パリ協定に基づくカーボンクレジットの広範な議論が進行中であるにもかかわらず、実施規則によって先行して規定を導入することへの法的・制度上の懸念は、国際的な気候変動政策の整合性確保の難しさを示しています。EUに製品を輸出する企業、特にCBAMの対象となる製造業者は、この実施規則案の最終的な採択内容、特にカーボンクレジットの取り扱いについて、その動向を注意深く監視し、自社のサプライチェーンやコスト構造への潜在的な影響を評価する必要があります。これにより、将来的な規制変更に迅速に対応するための準備を進めることが求められます。
公式出典
更新履歴
公開日: 2026-07-03
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